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ナショナル ジオグラフィック・スペシャル

シリーズ「21世紀の実像」

NATIONAL GEOGRAPHIC 日本語版
NATIONAL GEOGRAPHIC 日本語版

中国、変化の先に何がある?

ナショナル ジオグラフィック日本版 2008年5月号
文/ピーター・ヘスラー 写真/フリッツ・ホフマン
2008年5月22日(木)公開
地方政府の存在

 現代の中国で「工場町」が誕生する過程は、どこでも同じだ。最初に姿を現すのは、大抵が建設作業員たち。好景気に後押しされて工事は急ピッチで進められ、いくつもの工場を擁する工業地区が出現する。建設現場で働く農村出身の男たちの後を追うように、商売を始める者が現れる。こうした商売人たちは急ごしらえの屋台で肉や野菜、果物などを売り、やがて店をかまえると建設資材も扱う。

 続いて、携帯電話会社が店開きする。出稼ぎ労働者向けにプリペイド式のテレホンカードが販売される。南東部の浙江省では「ホームシック・カード」という名のカードがよく売れる。

 こうした初期の段階では、警官はほとんどいないし、役人の姿はどこを探しても見当たらない。女性を多く目にするようになるのは、工場の操業が始まってからだ。工場長は若い女性の労働者を好んで雇う。彼女たちは働き者で従順と信じられているからだ。そして、女性の登場とともに、町には衣料品店が出現する。

 工場町が生まれてほどなく、道路脇にはゴミが溜まるようになるが、地元政府がゴミ収集などの公共サービスを急いで整備することはない。公共バスが走るまでには何カ月もかかるし、マンホールのふたは盗難を恐れて最後の最後まで取り付けられないのが通例だ。

 私は2年間にわたって、浙江省へ何度も足を運び、農地だった場所に新しい町が出現するのを目の当たりにしてきた。レンタカーで新しい高速道路をひた走り、新興の町から町へと向かった。

 各地を訪ね回って半年がたった頃、運転中はまったく意識していなかった地方政府の存在に気付かされることとなった。速度違反のキップが送られてくるようになったのだ。反則金は1枚当たり20ドルで、旅行の度に3、4枚も切られていた。違反は自動監視カメラで捉えられるのだが、カメラの設置地点では、なぜか警告もなく制限速度が下げられているのだった。ブラジャー製造で知られている金華、合成皮革の産地である麗水、ボタンやファスナーで有名な橋頭など、私は浙江省各地で速度違反を繰り返していたのだ。

 反則金はレンタカー会社に支払った保証金から差し引かれる。「警察にとって大切なビジネスですからね」とレンタカー会社の社長が教えてくれた。後になってわかったことだが、警官が個人で監視カメラを購入し、違反キップを切っては金もうけすることもあるという。
 

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