【ワシントン及川正也】日本が核武装すればアジアの軍拡競争を招き、米国の核不拡散政策に打撃を与える--。米議会調査局はこのほど日本が核兵器開発を決めた場合の影響を分析した報告書をまとめ、議会に提出した。日本の核武装が「アジア軍拡」を触発するとの見方は従前からあるが、対中脅威論の高まりを受け、米国内でも「日本の核武装容認論」が浮上している現状を踏まえ、改めて検討が加えられた。
報告書は9日付。「短中期的には日本が核オプションを追求することはない」とする一方、日本が核武装する場合の背景として▽米中が冷戦時の米ソのように冷却化するか、急接近し戦略的関係や核管理で合意する▽北朝鮮が核保有したまま南北朝鮮が統一し日本を敵視する、などの安全保障環境の変化を例示。
日本が核兵器開発を決断すれば、「韓国や台湾などが核開発計画に着手し、多くの核保有国が生まれる」と指摘。その結果、核拡散防止条約(NPT)など不拡散体制は「修復不可能な打撃」を受け、日本は「核不拡散の先駆者として国際的名声」を失い、「国連安保理常任理事国入りの可能性はなくなる」と警告した。
毎日新聞 2008年5月24日 東京夕刊