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労災:精神疾患、最多に 過労自殺も 若年層へ広がり--厚労省07年度まとめ

 仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神疾患になり07年度に労災認定を受けた人が268人(前年度比30・7%増加)と前年に続き過去最多を更新したことが厚生労働省のまとめで分かった。過労自殺(未遂を含む)も81人(前年度比22・7%増)で過去最多となり、2年間で倍増した。政府や厚労省は「ワークライフバランス」(仕事と生活の調和)の推進を呼びかける中、長時間労働などの改善が進んでいない実態が改めて浮き彫りになった。【東海林智】

 同省によると、過労によるうつ病の労災請求件数は03年度の約2倍の952人(前年度比16・2%増)に増えた。

 過労自殺と認定された81人のうち80人は男性で、年代別では40代が22人、30代が21人、50代19人、20代15人。うつ病など精神疾患全体の認定は30代100人、20代66人、40代61人、50代31人。20、30代で6割を超え若年労働者に心の病が広がる状況を示した。職種は▽専門・技術職75人▽生産工程・労務作業者60人▽事務職53人--。製造関連が前年度比で2倍近く増加し、好景気を反映し生産現場での過重労働の広がりがあるとみられる。

 脳出血や心筋梗塞(こうそく)などを発症した「脳、心疾患」の認定者392人(うち死亡142人)も前年度比約10%増え過去最多。請求件数は931人で前年度比0・7%減少した。残業時間は月100~120時間未満が91人。160時間以上も35人に上った。過労死弁護団の川人博弁護士は「数年前から過労やストレスのまん延で非常に深刻な事態に陥っているということが数字となって表れている」と話している。

 ◇「月に3日は休みたい」

 うつ病と認定される人の6割以上を20、30代が占める現実。実際の労働現場の若者たちからも悲鳴が上がる。

 「こんなになるまで働いたの?と思う若者が増えている」。関東の就労支援施設の関係者は打ち明ける。職を求めてくる若者の中には連日15時間労働だったり、休みが月に1、2回しかなかった人もいる。「1日に働くのが13時間ぐらいの所はないか」「月に3日は休みたい」。訴えは切実だ。施設関係者は「ボロボロになるまで使われうつ状態となり、働くことに怖さを感じているのでは」と話す。

 店長など管理職の肩書が付くだけで残業代が支払われない「名ばかり管理職」扱いされたとしてコンビニエンスストアを提訴した元店長の清水文美さん(28)も、長時間労働でうつ状態となり働けなくなった。残業が80時間を超える状態が5カ月間続き、休職直前の月は167時間に。不眠や倦怠(けんたい)など異変を感じていたが、仕事に追われ病院に行く余裕もなかった。ようやく病院に行くと「1カ月の休養が必要」と診断書が出た。その後、休職が認められたが「人間性を奪われたような状態だった」と振り返る。

 神奈川労災職業病センター事務局の川本浩之さんは「若年労働者の労災相談は増加している。人手不足のしわ寄せでむちゃな働かされ方をしている」と話す。【東海林智】

毎日新聞 2008年5月24日 東京朝刊

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