食料品、日用品の値上げラッシュを受け、スーパーなど小売店の特売品が激減している。マヨネーズ、ビールなどの目玉商品のチラシへの登場回数が減り、品薄のバターの掲載はゼロになった。再値上げ商品が相次いでおり、ほとんどの品目で特売価格そのものも上昇。物価押し上げ圧力は強まるばかりだ。
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マーケティング会社「チラシレポート」(東京都中央区)が06年1月〜08年4月、全国約1万2000店を対象に、食品や生活雑貨50品目について、特売品の平均価格とチラシへの掲載回数を調べた。
マヨネーズ首位のキユーピーは昨年6月、マヨネーズ(500グラム)を約10%値上げした。特売価格は06年12月の最安値(157円)より20%超高い190円前後に上昇、掲載回数は一時、ピーク時の約7割に減った。アサヒビールのスーパードライ(6缶パック)は今年2月、1062円だった。しかし、値上げ翌月の4月、1102円をつけ、この2年余りで初めて1100円を突破。掲載回数も値上げ後は前年実績を下回っている。ティッシュペーパー首位の大王製紙の「エリエール」(180枚、5箱)は今年2月、特売価格が300円と、この2年余りの最高値をつけ、掲載回数はピーク時の3分の1に激減した。
品不足が続くバターはチラシから姿を消した。森永乳業の「北海道バター」は2月から3カ月連続で掲載なし。明治乳業の「十勝バター」も4月は掲載ゼロだった。
特売品の値下げ相当額は、シェア拡大を期待するメーカーが協賛金などの形で負担することが多い。だが、原材料高に悩まされるメーカーが、協賛金の負担に難色を示していることも特売品の激減につながっている。一連の値上げが浸透した4月前後からは、掲載回数の増えた商品もあるが、特売価格は高止まりしたまま。4月の特売価格が過去の最安値以下だった品目は、ミネラルウオーターと整髪料だけだった。
さらに、製紙大手は6月からティッシュの出荷価格を20〜30%、味の素は7月からマヨネーズを5〜14%それぞれ再値上げする。キユーピーも23日、マヨネーズを8月から2〜14%再値上げし、家庭用(500グラム)を367円から405円にすると発表。特売品は今後も減り続けそうで、チラシレポートの沢田英社長は「メーカーに余裕がなくなっている。売れ筋の安い商品で客寄せする量販店の商法は転機を迎えている」と指摘する。【後藤逸郎】
◇ネット利用で生活防衛の消費者も
特売価格の上昇とチラシ掲載回数の激減を受け、インターネットを利用した生活防衛に動く消費者も現れた。
東京都杉並区の主婦が近所のスーパーの特売品の価格を掲載しているウェブサイト「GoGo(ゴーゴー)・スーパー!」(西村祐里子主宰者、http://members3.jcom.home.ne.jp/taichi329/)の閲覧者は、値上げが相次いだ今年初めから、従来より3割増えた。
食べ盛りの息子の食費を抑えたいとの思いから、約2年前に知人とサイトの運営を始めた。現在は10店近くのスーパーの特売価格を掲載している。商品ごとの過去の底値も記録しているところが評判を呼び、閲覧者からは「他の店も載せてほしい」との要望が相次いでいる。西村さんは「ほとんどの商品で特売価格の底値が更新されなくなった。価格は同じでも減量された『実質値上げ』も多い」と、複雑な心境で分析する。
また、コンテンツ配信の「ナビット」は、有料サイト「毎日特売」の価格比較情報をヤフーや楽天、ケーブルテレビなどに提供。値上げラッシュを追い風に、アクセス数を増やしている。【後藤逸郎】
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