アナウンス室インデックス

[2006] < 2007年04月 > [2008]

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
2007年
1月 2月 3月 4月 5月 6月
7月 8月 9月 10月 11月 12月
2006年
1月 2月 3月 4月 5月 6月
7月 8月 9月 10月 11月 12月

新着日記

新着ネットラジオ

インターネットラジオ

インターネットラジオを聞くには?

iTunesダウンロード

FCT直営ウェブサイト

あなたのお店も登録しませんか「満ぷくナビ」

テレビ局の仕事をやさしく解説「ズームインFCT」

調べものなら 「ちょっと便利帳」

アナウンス室 プロフィール

おおの おさむ

大野 修

プロフィール

久しぶりに感動

トリノ五輪で荒川静香さんが金メダルを獲得してからフィギュアスケートが大ブームとなっている。長野五輪の頃から、本田武史さん(プロ)を取材してきたこともあって、フィギュアスケートには関心があったが、過熱気味の最近の「ブーム」には苦笑いしている。

詳しい方はご存知かとは思うが、トリノ五輪の前のシーズンから【採点システム】が変更になった。従来[技術点][表現点]をそれぞれ6点満点で採点していたものを、ジャンプやスピン・ステップの難度などを基礎点や加減点で評価するようになった。スピンは3回転以上しないと一種類とは見なされない、3回転のジャンプは一種類を2回以上飛んでも得点にならない、フリー演技ではコンビネーションジャンプは3回まで、などなど…細かいルールがてんこ盛りで、選手は分厚いルールブックを片手に練習をしているそうだ。

そもそもルール改正が行われた原因は、トリノ五輪の前に行われたソルトレークシティ五輪で、採点に不正が行われたことに端を発している。6点満点の印象点では採点に不正が入り込む要素があるとの意見から、一つ一つの演技が何点で、その合計が得点になる透明性の高い現行の採点システムが作り出された。言ってみれば、得点の積み上げ方式である。採点競技なだけに、当然選手は得点を取れる演技をするわけで、そこには「芸術性」や「感動」といった要素の入り込む余地が少なくなった。勝つために競技をする選手にとっては必然である。

「得点を取る演技」を作り出す専門家がいる。「振付師」と呼ばれるのがその人で、例えば先月の世界フィギュアで女子金メダルの安藤美姫選手のコーチをしていたニコライ・モロゾフ氏はその第一人者である。モロゾフ氏は男子銀メダリストの高橋大輔選手の振り付けも担当しているが、過去には本田武史さんや、アレクセイ・ヤグディンさん(トリノ五輪金メダリスト)の振り付けも担当した、いわば名人である。フィギュアの世界の主流と言ってもいいだろう。

その一方で、独自の世界観を持つ選手がいる。スイスのステファン・ランビエール選手である。昨シーズンまで世界選手権2連覇。トリノ五輪の銀メダリストでもあるランビエール選手は、世界一美しい高速スピンで有名だが、そのスピンを演技の中で最も芸術的に組み込める選手である。各選手がスピンの難度である「レベル評価」を少しでも上げようとする中にあって、異次元の世界観を持っていることが分かる。

その一つの完成形が、先月の世界フィギュア・フリーで見せた『フラメンコ』だ。フィギュアスケートで『フラメンコ』を表現するという発想もユニークだが、スペインでプロのフラメンコダンサーに振り付けを学んだというランビエール選手は、4分半の中でたしかに一つの物語を完成させていた。テレビで見ていたが、氷上の『フラメンコ』は息をするのを忘れるほど素晴らしい演技だったと思う。ショートでの出遅れが響き、総合で3位に甘んじたものの、地元の高橋大輔選手を除くと、最もスタンディング・オベーションを浴びていた。今の採点システムになってから演技が面白くなくなったという声が多く、実際そのように感じていたが、ランビエール選手の演技には久しぶりに感動!であった。

「滑る」選手はいても「演じる」選手が少なくなった昨今のフィギュアスケートの世界にあっては貴重な選手だと思う。なぜか「てんとう虫」が好きというランビエール選手。今シーズン国内で滑る機会があれば、是非見に行ってみたいと思っている。

2007.04.23 | コメント[0]トラックバック[0]