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進化するウィルス

「種の保存」

DNAを持つ生命体は常に種の保存を目的とした進化(変化)を続けます。ほ乳類だろうとウィルスだろうとそれは同じこと。人間にとって有害なウィルスだとしても、ウイルス本人(という言い方が正しいかどうかは別として)にとっては「そんなの関係ねぇ〜」。種の保存が第一なのです。

それはインフルエンザウィルスも同じ。今日付のFinancial Times(イギリス)に結構ビックリな記事が出ています。

「Financial Times-UK 29/01/08」

European public health specialists on Monday identified significant resistance to the drug Tamiflu, casting a shadow over the efficacy of the world’s most widely purchased influenza antiviral medicine.The European Centres for Disease Control said that while Tamiflu could still provide benefits, 13 per cent of samples of the H1N1 seasonal flu virus affecting Europe tested last November and December ? most in Norway ? contained a mutation associated with high levels of resistance.

「ヨーロッパの公衆衛生専門家は月曜日(28日)タミフルへの著しい耐性を発見。世界で最も広範に購入されている、抗インフルエンザウィルス薬タミフルの効き目に影を落とすものだ。欧州疾病管理予防センターは『タミフルはまだ役に立つだろうが、昨年11月と12月に(主にノルウェーで)検査された、ヨーロッパに影響を与えているH1N1型季節インフルエンザ・ウィルスのサンプルの13%は、高レベルの耐性に関係する変異を起こしていた』と述べた」

つまり、インフルエンザの特効薬とされてきた「タミフル」が効かない、進化した「高耐性インフルエンザウィルス」が出現した可能性があるというのです。その割合はすでに13%に達している…かなりのスピードです。

「パンデミック(爆発的流行)」

The news is a blow to Roche, the Swiss pharmaceutical group that markets Tamiflu, and has turned the drug into a blockbuster largely on the back of stockpiling by governments as they prepare for a pandemic.It also highlights the danger of pandemic planners focusing too heavily on medical preparations, and the need for other broader measures designed to identify, limit and curb the spread of infection.

「このニュースは、タミフルの製造元で、パンデミック対策を進める中で各国政府が備蓄を進めているのを背景に、この薬をブロックバスター(特効薬)としてきたスイスの製薬グループ・ロシュにとっては打撃である。また、パンデミック対策側が余りにも特定の医薬品の備蓄に集中し過ぎている危険性、そして感染の特定や制限、拡大阻止を目指す他のより広範な対策の必要性を強調している」

Separately, the European medicines agency has stressed the importance of pandemic planners stocking different antiviral drugs, balancing Tamiflu with Relenza, an alternative medicine less widely tested but which has so far not demonstrated resistance.Roche has sold 220m treatments of Tamiflu in recent years for pandemic flu stockpiles to 85 countries.

「これとは別に、ヨーロッパ医薬品庁は、パンデミック対策でタミフルと、タミフルほど広く使われてはいないが、これまでのところウィルスの抵抗性が認められていない代替薬品『リレンザ』のバランスをとり、異なる種類の抗ウィルス薬を備蓄することの重要性を強調した。85ヵ国がパンデミック対策の備蓄を続ける中、ロシュはこの数年間で2億2000万処方分のタミフルを販売した」

日本は世界一のタミフル処方国です。2001年以降日本では2450万人が処方を受けたという統計もあります。厚生労働省の指揮で各医療機関にはタミフルの備蓄が積み上がっていますが、それをあざ笑うかのようにウィルスが進化しているようです。ヨーロッパ医薬品庁はもう一つの抗インフルエンザ薬であるリレンザも備蓄するよう警告しています。

パンデミックの発生する前に、正しい情報の共有と各国の連携した対策が求められそうです。

2008.01.29 | コメント[0]トラックバック[0]

アメリカって奴ぁ

最初に言っておきますが、僕にはアメリカに友人がいますし、アメリカが嫌いではありません。また、アメリカを馬鹿にする気もありません。ただ、アメリカって奴ぁ面白い国だと思うわけなんです。国民性っていうか、考え方がジャンボリー(大雑把)な所とか。あの前向きさと能天気さにかなう国はなかなかないと思うのです。

その一番の特徴は、買い物に表れているような気がします。

「クレジットカード」

現金要らずで買い物が出来るクレジットカードの発祥はアメリカです。1950年にニューヨークで世界最初の汎用クレジットカード「Diners Club Card(ダイナース)」が産声をあげます。ただ、利用はニューヨーク周辺に限られて利用者はそれほど増えませんでした。

1958年には、全米最大の銀行であるBank of Americaがこの新しい市場に参入します。第二のクレジットカード「Bank Americard(バンクアメリカード)」はアメリカ西海岸・カリフォルニアで誕生。Bank of Americaの巨大な資金力・営業力を背景に成長を続け、1976年に「VISA」と名称を変えて現在に至ります。

一方1966年には、クレジットカード空白地帯だったアメリカ東海岸の銀行17行が全米カード・システムのインターバンク・カード協会(ICA)を設立。「VISA」が浸透していなかったアメリカ東部で会員を増やし、1979年に「Master」と名称を変えて現在に至ります。

現在、世界のクレジットカードの決済システムの9割はこの「VISA」「Master」に集約されています。このアメリカの2社がそのまま世界の2強と言うわけです。日本で発行されるクレジットカードも殆どが「VISA」か「Master」で決済するようになっていますね。

アメリカの消費者の消費意欲を図るモノサシの一つが、このクレジットカードの利用動向です。ここからも、アメリカでは買い物を現金ではなくカードでするということがいかに常識化されているかが分かりますね。現金主義の人が多い日本とは感覚が違うようです。

「アメリカ人の消費欲」

世界の一大消費地はもちろんアメリカです。車・家電・食材…アメリカ人の消費欲が世界経済の原動力といっても過言ではありません。アメリカは輸入額が輸出額を上回る貿易赤字国です。これは歴史的に西側同盟国から大量の輸入を受け入れて民需の経済成長を助ける一方で、軍需を含む防衛力を提供したり米国債を引き受けてもらうことなどで、差し引きで+(プラス)にする「戦略的」貿易赤字でした。

と言うわけで、アメリカは西側の商品を国内で大量消費することが戦略として必要だったわけです。日本もその恩恵を思いっきり受けてきました。トヨタやホンダ、ソニーや松下改めPanasonicなどは、北米(アメリカ)事業が業績を大きく左右するほどの重要性を持っています。いくら欧州や新興国(中国・インドなど)が伸びても補いきれないのが実情なんですね。

ところで、「もったいない」に相当する言葉は英語にはありません。ここからも「使っては捨て」「使っては捨て」という大量消費が歴史的文化として一般化していることがうかがえます。その後押しをしているのが現金感覚が無いクレジットカード。アメリカでのクレジットカードによる借金は一世帯当たり平均9000ドル(約100万円)で、金利だけで年間1300ドル(約15万円)支払っているという統計があります。

とにかく欲しいものはすぐ手に入れる。これがアメリカ人の消費欲です。

そのアメリカが、サブプライムローンに端を発した金融不安・信用収縮・景気後退で、その消費欲にブレーキを掛けざるを得ない状況に陥っています。アメリカでは何が無くともクリスマスには買い物をする習慣があります。しかし、そのクリスマス商戦もバーゲン品を除けば不発で、消費に陰りが出てきている厳しい状況です。消費大好きのアメリカ人には試練でしょう。

余談ですが、ジェームス・スカーロック監督のドキュメンタリー映画『Maxed Out(マックス・アウト)』は、クレジットカード漬けになっているアメリカ人の借金の実態と金融業界の真の姿に迫った作品です。『Maxed Out』とは限度額いっぱいまで使う人たち、という意味。この作品の中で、ハーバード法律大学院のウォーレン教授は「カード会社の理想のお客は、借金が雪だるま式に増えて経済的な困難に直面している人たちだ」と警鐘を鳴らしています。消費天国アメリカの影の一面と言えそうです。

「テレビショッピング」

先日、衛星放送で見たアメリカのコントは秀逸でした。アメリカではテレビショッピングが盛んで、僕がカミさんとアメリカに旅行に行った時にも「この掃除機を買うと…なぁ〜んともう一台プレゼントしちゃうぜぇ〜い!」というジャンボリーな通販番組をやっていました。だったら最初から半額で売れっちゅうの!

閑話休題…そのコントはこんな感じでした。

BobとKateの夫婦がTVを見ていると…。※B:Bob K:Kate T:TV
T『皆さ〜ん、買わなくてもいい物まで買っていませんか?』
K「そうなのよ。要らない物までつい買っちゃうのよね〜」
T『そ〜んなあなたにこちら!買わなくていい物を買わないレッスンプログラム!』
B「わぉ!こいつはいいな」
T『毎月送られてくる買わなくていい物を買わないレッスンを一年続けるだけで…あ〜ら不思議!買わなくていい物を買わない様になれるんです!意志の弱いあなたにオススメです!』
K「あらぁ、これって私にピッタリ」
B「ハニーは意志が弱いからなぁ」
K「何言ってるのよ。あなたも車を買い換えたばかりじゃないの」
B「そうだな。ハッハッハ〜!」
T『さぁ、あなたもきょうから買わなくていい物を買わないレッスンを始めて、買わなくていい物を買わない生活を始めましょう!もちろん分割払いでもO.Kです!お問い合わせはこちら!』

ご賢察の通り「買わなくていい物を買わないレッスン」こそが買わなくていい物なワケで…。まぁ、アメリカの皆さんも自分たちがいかに浪費好きか自覚しているということがせめてもの救いでしょうか。ともあれ、こういった方々の旺盛な消費によって日本企業の業績が支えられ、日本が豊かになったのもこれまた事実です。

だからこのコントを、私たちはただ笑っていられないんですね。彼らの消費欲がいつ回復してくるか。世界の景気回復、日本の景気回復はここにかかっていることもこれまた事実。ただ、今回の傷付きぶりを見る限り、消費意欲の回復には年単位の相当な時間が必要なように感じます。

2008.01.26 | コメント[0]トラックバック[0]

笑うに笑えない

前に勤めていた会社の異業種交流会で知り合った友人同士で、気になるニュースを回し読みしています。きょうは某シンクタンクに勤める友人から「笑うに笑えない」ニュースが回ってきました。出元は1月23日付Daily Telegraph(イギリス)です。海外から日本はこう見られているんだなぁと感じます。

「Daily Telegraph -Julian Ryall in Tokyo 22/01/08」

The Nikkei closed below 13000 for the first time in two years, dragged down by credit problems linked to the subprime mortgage crisis in the US."It's largely a sense of panic in Tokyo, despite the hopes, because it has finally come home that the Bush administration is incompetent," said Kenneth Courtis, former chairman of Goldman Sachs Asia. "They have been incompetent handling Hurricane Katrina, Iraq and now they can't handle the economy."

「(22日に)アメリカのサブプライム危機に関連する信用問題に引きずられる形で、日経平均は2年ぶりに13,000円以下で取引を終了した。『東京は殆どパニックだったが、希望はあった。ようやく遂にブッシュ政権が無能だと分かったのだから』とゴールドマン・サックス・アジアの元会長、ケネス・カーティス氏。『彼らはハリケーン・カトリーナの対応でもイラクでも無能だったし、経済の舵取りも出来ないことがハッキリした』」。

The Japanese government is as paralysed, he said, but that is more a domestic political issue as Prime Minister Yasuo Fukuda is unable to get legislation past an upper house dominated by the opposition but, more important, is desperate to hang on to power ahead of the Group of Seven summit scheduled for July in northern Japan.In response to the crisis, the Bank of Japan announced that it would keep its interest rate on hold and suggested that the Japanese economy was "slowing". Later, economics ministers told a press conference that they would closely watch plunges on the stock market, but take no immediate action.

「『日本の株価の下落は日本政府の麻痺状態が原因。つまり、福田総理が野党に占領された参議院で法案を通過させられないという国内の政治問題が大きい。もっと重要なのは、福田総理が7月に日本の北部で予定されているG7サミット(洞爺湖サミット)まで、何としても権力の座に留まろうと必死になっている点だ』とカーティス氏は指摘する。この金融危機に対して、日銀は金利を据え置くと発表。でも日本経済は『(景気拡大が)鈍化中』だという。その後、経済担当相は記者会見で、『株式市場の大暴落をよく観察するが対策は一切とらない』と話した」

「笑うに笑えない」

つまり、政府も日銀も海外から見ると世界的金融危機に対し「危機感ゼロ」だということ。おまけに日銀の福井総裁は「今年の後半は消費が拡大し去年よりも景気が良くなる」と会見で話しています。サラリーマンの給料は8年連続で下落し、その一方で小刻みに実質増税されて(定率減税廃止+配偶者控除廃止+年金掛け金率上昇)、さらに消費税増税をちらつかされています。でも庶民はどんどんモノを買って景気が良くなる…ってどこの国の話でしたっけ?あぁ日本ですか。

上記のニュースに付されていた友人のコメントが秀逸でした。「たぶん福田総理はサミットの議長という歴史的名誉が欲しいんだと思う。それまではあらゆる問題を右から左に受け流して(古っ!)講じ得る全ての延命措置を施すだろう。そしてサミットが終わったら『さよなら』じゃないかな」

「日本は昔から問題を先送りするのがお家芸。太平洋戦争のときも大本営発表で散々戦果を国民に誇大報告しておいて、無条件降伏。バブル崩壊のときも銀行の損失や住専の処理を先送りしておいて、無条件降伏(血税投入)。要は『名誉は欲しいが、責任は取りたくない』って体質なんだろう」

福田総理はサミットまで日本のトップでありたい。日銀の福井総裁は残り少ない任期中に「景気後退」宣言はしなくない。だから二人揃って「日本の景気は拡大中」と言い続けているのだとすれば…笑うに笑えないですねぇ。

2008.01.23 | コメント[0]トラックバック[0]

ダボス会議

「Nosedive」

世界の株価が急落しています。まさにNosedive(鼻から落下=まっさかさま)。各国の株価は、あの世界同時多発テロ以来の下げ幅で、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)も30日の会合を待たずに緊急利下げをしないと済まされない状況に追い込まれています。場合によっては緊急の米欧協調利下げすらあり得ます。さらに事が進めば、Credit Crunch(クレジットクランチ=金融危機)に陥る恐れがあるからです。

もちろんその引き金は「サブプライム」です。このサブプライム問題は、銀行のほかに金融保証を手がけるMonoline Insurer(モノライン保険会社)にまで飛び火していて、日本の保険会社まで延焼しています。「モノライン」とは、簡単に言えば、サブプライムの元利金の支払いを元金の数%程度の保証金を貰うことで保証するもので、アメリカの大手2社のほか日本も損保ジャパンなどが関わっていました。

まさに世界的なクレジットクランチの瀬戸際まで来ている、といってもいい状況です。

「ダボス会議」

ところで、23日からダボス(スイス)で恒例の世界経済フォーラムが開かれます。この通称ダボス会議は、世界約1000社の企業の首脳陣や政治指導者(首相や大統領)・ジャーナリストなどが集まって、教育・環境・マクロ経済など様々な項目について話し合いを行います。そのダボス会議について、今週号のTIME誌(アメリカ)に次のような記述があります。

This year's meeting, which starts on Jan. 23, might be a little different. A year ago, subprime had not entered the lexicon of the nightly news, and most Americans probably thought that "credit crunch" was a breakfast cereal. We all know better now. In the wake of the report that December's U.S. unemployment rate had jumped to 5%, the highest level in two years, the Bush Administration and Congress, Republicans and Democrats, started falling over themselves trying to find a politically acceptable stimulus package. With a recession in the American economy looking to be imminent, the tireless locomotive of the global economy seems finally to have run out of puff.

「23日から開かれる今年の会議は、いつもとはちょっと違ったものになるだろう。1年前には『サブプライム』なんて言葉は夜のニュースには流れなかったし、アメリカ人の殆どは『クレジット・クランチ』というのは朝食のシリアル(コーンフレーク)だと思っていた。政府の発表によれば、12月の米国失業率は実に2年ぶりの水準である5%に跳ね上がり、ブッシュ政権と議会と共和党・民主党は、政治的に許容可能な刺激策を探し始めている。米国経済が景気後退に向かうと、グローバル経済のエンジンがガス欠になる可能性すらある」

ダボス会議に、日本からは福田総理が出席します。議題はTIME誌にあるようにサブプライム発の金融危機に絞られることは明らかです。各国共に株価急落に端を発した金融の混乱に手を焼いているのですから。そして世界的クレジットクランチを回避しようと、各国のリーダーがそれぞれ経済対策を持ち寄るでしょう。そして各国が期待しているのは…。

土地バブルの崩壊を経験し、サブプライムの影響が少ない「日本の経済対策」。これに尽きると思います。

「環境とアフリカ…」

22日の会見で、大田経済財政担当相が「企業の生産・輸出はしっかりしており、一部に弱さはあるものの景気の回復基調は続いている」と発言。「景気対策は考えていない」としました。しかし、生産・輸出のデータは12月までのもの。しかも、12月までの資本財は、輸入国の経済混乱が始まる前に先行して発注されたもので、今後は急速に落ち込むことが目に見えています。つまり、政府全体として景気の「先行き」を読み誤っている可能性があるということです。バブル崩壊・IT危機の愚の二の舞は避けて欲しいのですが…。

そしてダボス会議。福田総理は7月の洞爺湖サミットに向けて「環境とアフリカ」をテーマに講演する可能性があります。しかし、日本は輸出で食べている国=世界経済と密接な関係がある国です。平時であれば「環境とアフリカ」も大事な議題ですが、今は緊急時です。クレジットクランチ回避に向けた具体的な日本の対策は、ペルシャ湾の給油よりも大きな国際貢献との評価を受ける可能性もあると思います。

事前に外務省と環境省と話がついているのかもしれませんが、ここ数日の混乱を踏まえた福田総理の機転に期待したいところです。世界の一翼を担う一国のリーダーとして。

2008.01.22 | コメント[0]トラックバック[0]

国富

塩川正十郎(塩爺)氏が講演でこんなことを言っていました。
「改革なくして成長なし
 成長なくして国富なし
 国富なくして国民の幸せなし」
国家政策に関してこれほど明快なメッセージもないと思います。

「汚いこと」「忌むこと」

日本人はお金儲けを「汚いこと」「忌むこと」と教えられてきました。ですが、考えてみると、生活に困るほどの年金しか受け取れなかったり、不景気で給料の手取りが減ったりすることが果たして幸せといえるのでしょうか?

世界の中には、政府が率先してお金儲けをしている国もあります。シンガポールや中国・韓国のほか、中東諸国は政府系投資機関(SWF=Sovereign Wealth Fund)を作り、国富(National Wealth)を達成するという目的のもとで資産運用を行っています。

意外と知られていませんが、日本テレビ本社のある汐留地区の再開発にあたったのは、シンガポール系のGICというSWFです。バブルで傷付いた日本の不動産業者が大規模開発に尻込みしていた時期でした。その後の地価上昇でGICが得た利益は膨大な額にのぼります。そのお金は日本からシンガポールへ流れていきましたが。

最近ではサブプライムで傷ついた米系銀行にアブダビ・韓国・中国・シンガポールのSWFが資金を投入しており、国際経済の安定化にも一役買っています。そして還流した資金は益金として、最終的には国に還元される仕組みです。こういったお金の流れは外交的にも「貸し」としてその後の国際関係にも戦略的に使えるはずです。

これって「汚いこと」「忌むこと」でしょうか。

「現代は経済競争の時代」

ロシアの新しい大統領に指名されたメドベージェフ氏はロシア最大企業ガスプロムの元会長。韓国の新しい大統領イ・ミョンバク氏は36歳で韓国最大企業現代(ヒュンダイ)グループの現代建設社長になったという伝説のスーパービジネスマン。台湾の与野党逆転も、野党が主張する「経済活性化・不況打開」の政策が支持を集めたため。アメリカ大統領の予備選挙も争点は経済対策に絞られつつあり、今後は不況対策が最大の争点となることは明らかです。

いずれの国のリーダーも経済通であることが選ばれた決定打となっています。現代の国家間の競争は、軍事競争から経済競争へと変化してきており、国家には経済に明るいリーダーが求められていることが、ここからも分かろうというものです。

翻って日本のリーダーは…。

「国際競争に正面からぶつかる」

弱者救済・格差是正が叫ばれる中で、2007年夏以降に放棄された財政規律が、10年以内に弱者をいま以上に押しつぶす恐れがあります。大手企業がかつてない好況に沸く中で、ようやく経営者が給与水準の向上や雇用拡大に腰を上げ始めた所に財政不況・政策不況の波が押し寄せる。抜本的な行財政改革をしないままでバラ撒き財政をすることは、根本的な弱者救済・格差是正にはつながらないのです。

決して世界に背を向けて、内に閉じこもってはいけません。世界中で頑張っている国や人に伍して、日本も頑張るのは当然必要なことです。頑張って成功する人や組織が評価され、国民全体の生活レベルを底上げするためにも国際競争に正面からぶつかる必要があります。僕の友人を含めて、外資系金融機関など厳しい環境で鍛え抜かれた優秀な民間人が多くいます。彼らを組織化すれば、海外に伍した素晴らしいSWFがだって出来ると思います。

「民度」

また、長期的な視野に立って冷静な判断ができるレベルの民度が、私たち国民一人一人に備わっているかどうかも大きな問題です。目先の人気や面白そうというだけで政治家を選ぶというのはいかがなものでしょうか?結果的に経験不足の政治家が急増しています。経験年数で衆議院の議員経験10年未満の割合は自民党75%・民主党82%。その経験不足を官僚が支える=官僚の思うがまま、というのが現在の政治構図です。

民主主義が機能するか否かは民度にかかっているのであり、政治家だけに責任を押し付けるべき問題とも言えません。次の総選挙に向けて、私たち有権者一人一人が日本のあるべき進む方向に向けてのビジョンをきちんと描けるかが大きなカギを握っています。もう政治家と官僚に「お任せ」では済まされない状態と言えそうです。

2008.01.19 | コメント[0]トラックバック[0]