県立病院赤字300億円に/検討スタッフが10年後推計
県立病院の再編作業を進める「県立病院あり方検討スタッフ」は二十三日、「県立病院の機能・役割等に関する調査分析」の中間報告を発表した。経営に掛かった医業費用は一九九八年度から二〇〇七年度までの十年間で約四十三億円増加しており、病院の売り上げに当たる医業収益の増加約十二億円の三・六倍に上る。現状の経営が続けば〇八年度以降十年間で、約三百億円の損失が出るとの将来推計も明らかにした。
医業費用が増えた主な要因は医師、看護師、事務職員などの給与費(退職金を含む)と、レセプト請求事務などの外部委託費を合わせた「人件費」で約二十億円増。十年間で外来・入院とも患者数は減少したが、医師と看護師は計六十二人増え、外部委託も増加している。同スタッフは「高度医療を担う南部医療センター・こども医療センターをはじめ政策医療部門で手厚く配置されている」と分析している。
病院別の医業収益に対する給与費比率(〇七年度)は、精神科の精和病院が最も高く114%。次いで宮古76%、八重山70%で離島が高かった。最も低い中部病院で59%と、すべての県立病院で病院経営で適正といわれる50%を上回った。
ただ、過去八年間の一人当たり給与費(退職金、手当なども含む)は看護師が3%上昇したほかは、医師は増減なし、事務・労務職員、医療技術者は11―20%減少した。
同スタッフは県外の公立病院の視察などから、「経営改善の成否は経営形態によるものではなく、改善策を遂行する経営者を据えることにある」と説明。
同調査の詳細な分析後、今夏に予定される外部有識者会議で経営形態の移行などについて検討する。
圏域別 役割分析
中・南部 高度医療を提供
北・宮古・八重山 救急需要高く
県内五医療圏域ごとの県立病院の役割分析では、北部・宮古・八重山で、民間病院にない診療科を県立病院が担っていることが分かった。民間病院の多い中・南部では高度医療を提供。特に小児科や産科など医師不足の診療科では、各県立病院が重要な役割を果たしている。
中部で県立中部病院の病床数は二割程度。しかし、がん、急性心筋梗塞、分娩などの手術件数は全体の五割以上を占めた。南部では、県立南部医療センター・こども医療センターが小児科で三割の入院患者シェアを持ち、専門性の高い医療を受け持っている。
北部・宮古・八重山は、各県立病院が救急医療七―八割、小児科や脳神経外科のシェアは半数以上。一方で、がんなど特定の疾患は、圏域外の病院に患者が流出していた。
県立精和病院は、入院患者の九割が南部居住者で占められ、限られた地域の精神医療を担っている側面が顕著になった。
報告をまとめた県立病院あり方検討スタッフは、中南部では民間病院が提供する医療を担っていることに注目。「これらの地域に民間病院の参入が進まない理由について、県内病院へのヒアリングで明らかにしていきたい」と話した。