北海道洞爺湖サミット(7月7~9日)のPR効果で昨年度、大幅に観光客を増やした胆振管内洞爺湖町の洞爺湖温泉が、ここに来て一転、集客に苦労している。宿泊規制や厳戒警備を懸念して一般客の出足が鈍り、洞爺湖地域をツアーコースから外す旅行会社も出ているためで、地元の観光協会やホテルからは「季節がいい今こそ稼ぎ時なのに」と悲鳴が漏れる。【横田愛】
「6月の予約は去年に比べて個人が2割減、団体は半分以下。『サミット関係者で満室』なんて誤解で、部屋は余っている」。洞爺湖温泉の大手ホテル幹部はうめく。中堅ホテルの幹部も「5~7月の修学旅行客(予約含む)が去年より7~8割減った。風評被害だ」とため息をついた。
07年度の洞爺湖町の宿泊客(実数)は、サミット効果もあって有珠山噴火(00年3月)以降初めて70万人台を回復したが、開催が近づくにつれかげりが見え出している。
最大の要因は、交通規制や予約状況の情報が錯綜(さくそう)していることだ。大手旅行会社「日本旅行」(東京都港区)は、昨年まで洞爺湖や昭和新山(胆振管内壮〓町)を回るツアーを企画していたが、今年は春夏期(4~9月)のルートから外した。同社は「いつから規制がかかるのかまったく分からず(洞爺湖地域を)避けざるを得なかった」と言う。
予約の落ち込みは初春から見られ、危機感を募らせた洞爺湖温泉観光協会などは3月、毎年訪れている東京、名古屋、大阪に加え、京都や岡山まで足を延ばして「宿泊できないのは7月6~10日のみ。6月はまだ空室がある」と各旅行会社に説明したが、大半の社は既に春夏のコースを設定し終えていた。
団体客に期待ができない中、洞爺湖温泉は何とか個人を呼び込もうと必死だ。地域のホテルなどでつくる「とうや湖温泉旅館組合」は、連休明けの今月7日から割引セールを実施。サミット開催直前の6月30日まで、加盟する13のホテル・旅館の宿泊代が通常より1000~2000円安くなる。観光協会のホームページでは近く、規制関連の情報提供も始める予定だ。
同協会は「警察からは、要人の移動などで短時間の通行止めはあっても終日封鎖することはないと聞いている。サミット前にもぜひ訪れてほしい」と力を込める。
毎日新聞 2008年5月23日 地方版