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2008年5月24日

◎環境保全の「ご褒美」 科学教育の重要性も忘れずに

 石川県は今年度、環境教育に熱心に取り組み、実践の面でも評価されている県内の小中 高校に、いわば「ご褒美」として環境保全に役立つ足こぎ発電機、廃油再生装置、水浄化装置などを贈る「エコギフト事業(仮称)」制度を創設するという。

 児童生徒らの環境保全意識を高めるためだそうだ。それとともに忘れないでほしいこと がある。

 科学教育の重視である。世界的に進行している地球環境の悪化を科学的に改善していく ことの基礎となるのが科学教育だ。

 地球環境の保全というと、科学技術で解決を目指すことより、不便に耐えて省エネをや り、ごみなどを減らすといった運動の方へ頭がいきやすい。

 日本だけでなく、世界的にそうだといわれる。が、そうした運動は窮屈だとか面倒だと かで広がりにくいのである。

 そうではなくて、文明の質を落とさず、新しい技術をいろいろ開発し、それらを普及さ せることによって温暖化対策を進めようというのが科学技術による問題解決であり、こっちの方がより大事ではないのか。

 温暖化は化石燃料を大量に使用することによって起きるのだから、化石燃料に取って代 わるエネルギーを発見するのである。そうした研究は量子力学を基礎とする原子力発電や、太陽光利用などとなって発展しているのである。

 県によると、温暖化ガス削減に熱心なドイツでは、一九九〇年代から学校における省エ ネ活動で削減した光熱費をすべて自治体の財政に戻さず、半分を学校に還元する省エネプロジェクト「フィフティ・フィフティ制度」を設けており、公立学校の約10%が参加している。エコギフト事業はその石川版のようだ。

 県は国の取り組みに呼応し、自治体の温暖化対策の一つとして私学も含めて独自に「い しかわ学校版環境ISO」制度を進めている。その認定校をエコギフト事業の対象として考えているようだ。

 それも大事だが、科学技術に関心を持たせ、それによる地球環境を守る手段を理解させ る教育にも力を入れてほしい。

◎「定住自立圏」構想 「軽減課税」で魂入れよ

 人口五万人以上の「中心市」と周辺の小規模市町村が協定を結んで圏域をつくり、医療 や商業・娯楽などの都市機能を集積させて、圏域全体で人口流出を食い止める「定住自立圏」構想が、今年の「骨太の方針」に盛り込まれる見通しになった。すべての市町村がフルセットの生活機能を整備するのではなく、圏域を一エリアとして一体整備していくという発想は、限られた予算を有効活用するという点で一定の効果はあるだろうが、それだけで人口減少が止まるとは思えない。

 わたしたちは、これまで法人税、所得税の税率を過疎地域で軽減し、それによって企業 や人を地方に誘導する「軽減課税」の導入を提言してきた。地方には、人口を増やすための税制上の「武器」がなければ、過疎の問題と戦いようがない。今後の税制の抜本改革論議の中で、軽減課税の導入を本気で検討し、定住自立圏構想という器に魂を吹き込んでほしい。

 北陸に限らず、地方から東京、名古屋、大阪の三大都市圏への人口流出が止まらない。 定住自立圏構想は「中心市」に都市機能を集め、周辺地域と連携して魅力ある生活圏をつくり、都会への人口流出を止めようとする狙いである。立案した総務省の有識者研究会は、構想実現のために地方交付税の重点配分や教職員人事権の移譲などを求めているが、都市機能が多少良くなったとしても、働く場がなければ、効果は薄い。地方へ企業移転を促し、働く場所を確保できなければ、問題は解消されないのである。

 むろん、自治体がいくら誘致を叫んでも、企業は企業の論理でしか動かない。そこで軽 減課税を導入し、過疎地に工場を立地させたり、本社を移転させるなどした場合、法人税、所得税を安くすれば、企業側の目の色は変わるはずだ。海外に工場を移転させるより、税の安い過疎地に工場を建てようと考える経営者も出てくるに違いない。ヒト、モノ、カネを地方に呼び込むには、税制を魅力あるものにするのが一番効果的だ。軽減課税は地方の「価値」を一変させるだろう。


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