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ドリオンの薬・・・オランダで提唱された自殺用常備薬

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ドリオンの薬・・・オランダで提唱された自殺用常備薬
【PJ 2008年05月24日】− 1991年、オランダのハイブ・ドリオン元最高裁判事は「高齢者が自殺薬を保持する権利」を求める論文を発表しました。「75歳の人間は20歳の人間より、将来の人生についての予測が可能である。その分、死を自分で決定する権利を持ってもよいではないか」という主張です。「自殺薬常備」は「ドリオンの薬」呼ばれ、やがて「高齢者の自殺権」を指すようになりました。現在も法制化に向けての運動が続いているそうです(三井美奈著「安楽死のできる国」より)。

 いま死刑と無期懲役の間を埋めるものとして終身刑の導入が盛んに議論されています。一般論として、刑罰の種類は多い方がより適した対応が可能ですから、終身刑や長い伝統のある島流し、国外追放(受入れ国があれば、ですが)なども議論されてもよいと思います。

 終身刑の導入は死刑を少なくする効果があるという賛成論がある一方で、終身刑は死刑より残酷であるという反対論があります。そこで有用なのが先ほどのドリオンの薬です。むろんこの場合は先に渡しておく必要はなく、要求があってからでいいわけです。

 ドリオン氏の主張に沿って言うと、終身刑を受けた者は75歳にならなくても将来の人生についての予測が容易なので、死を決定する権利をもってもよい、ということになります。いろいろ問題があるでしょうが、少なくとも選択の自由がないより、ある方が良いと思います。終身刑が死刑より残酷と感じる場合は有用な権利となるでしょう。

 もちろん自発的で、一定期間変わることのない意思に基づいたものであることを保証するシステムなどが必要ですが、それらの問題は本質的なものではありません。

 オランダではドリオンの薬の法制化はまだ実現していませんが、必要な要件を満たせば安楽死が認められおり(服役囚にも認められているかは知りません)、年間死者の2〜3%は積極的な安楽死、つまり医師による致死薬の投与などが選ばれています。それに引換え「命の尊さは何ものにも替え難い」式の建前論、観念論が根強いわが国では、上記のような議論すら自由にできないような空気があります。

 すべての自殺を避けるべきもの、してはならないものと単純に考え、命の決定権を本人が持つことを一律に認めない考え方は、硬直な建前論であり、より適したものへの変革を妨げる要因になります。

 自殺用常備薬の提案がなされ、それを本音で議論できるオランダの社会、それに比べるとわが国の社会はずいぶん硬直的と映ります。いや、硬直的なのはわが国の社会というより、建前論の好きなマスメディアなのかも知れません。本音の議論が自由にできる社会であってほしいものです。【了】

■関連情報
合理主義のオランダと建前の日本
「安楽死のできる国」(参考本)
噛みつき評論(記者のHP)
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※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 岡田 克敏【 京都府 】
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