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【主張】新福田ドクトリン 現実直視してほしかった

2008.5.24 03:02
このニュースのトピックス主張

 福田康夫首相が今後30年間にわたる対アジア外交の基本的な考え方を講演した。地域諸国にとって太平洋が「内海」となるような開放的なネットワーク構築をにらんだものだという。

 国政の責任者が折にふれて外交の長期ビジョンを語ることは必要だ。太平洋を人やモノが行き交うことで発展した地中海に見立てる発想も興味深い。

 首相はASEAN(東南アジア諸国連合)共同体実現を断固支持し、多国間協力に傾斜する姿勢を示したが、外交の基軸である日米同盟強化という課題との両立はこれでどう可能なのか。逆に日米同盟関係は弱体化せざるを得ないのが現実だろう。その意味で安全保障上の観点が欠落していると指摘せざるを得ない。

 「アジアの未来」と題するスピーチは、昭和52年に父の福田赳夫首相が発表した「福田ドクトリン」を念頭に置き、時代の変化や地域の拡大など新たな可能性を加味したものといえる。

 首相はアジアに不安定・不確実要素が残っていることを認め、日米同盟を「アジア・太平洋の安全装置」と位置付けた。しかし、地域内の主要メンバーとなる中国は、軍事拡大路線をとり続けるなど不安定要因なのに、その対処には言及していない。

 日本が得意な分野である防災・防疫のネットワーク構築に尽力するのはよいが、中国の四川大地震やミャンマーのサイクロン災害では、社会体制の違いにより国民の生命が軽んじられていないかという懸念が浮き彫りになっている。国際社会の支援を拒み、躊躇(ちゅうちょ)する両国の姿勢が、犠牲者の拡大を招いた可能性も否定できない。

 アジアの中の多様性を尊重するとしても、国民の生命や人権という基本的な価値観を重視する姿勢をもっと鮮明にすべきだった。その点、安倍晋三前首相や麻生太郎元外相は、自由と民主など基本的価値観を共有する国々との連携強化を重視する「価値の外交」を重視した。

 福田首相は自分の流儀として、価値観を押し付けるような言い方は避けたようだ。

 だが、キーワードを「開放」とするなら、チベット問題には言及してほしかった。さらには拉致、核という日本にとって死活的な懸案を抱える北朝鮮を「北朝鮮問題のような不安定要素」のひと言で片づけてもらっては困る。

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