学校裏サイトなどをめぐる痛ましい事件が続く。1日中、メール交換に没頭しているのも目に余る。いっそ、子どもから携帯電話そのものを取り上げてしまったらどうか。
こう考える保護者は少なくないだろう。だからといって、政府の会議が「所持禁止」まで唱えるとはあまりにも安易で短絡的ではないか。
首相官邸に置かれた教育再生懇談会が、近くまとめる報告で「小中学生には携帯電話を持たせない」と提言するという。どうしても持たせる場合は通話と居場所確認機能のみの端末に限定することや、有害情報を遮断するフィルタリングを法的に義務付けることも盛り込む方向だ。
「子どもと携帯」はじつに悩ましい問題だ。携帯電話が防犯に有効な面もあるし、うまく使えば子ども同士や親と子どもがコミュニケーションを図るのにも役立つだろう。
一方で、携帯電話からつながるネット空間にはおぞましい情報があふれている。メール依存も深刻だ。日本PTA全国協議会の調査では、中学2年生の半数が深夜でもメールのやり取りをすると答えている。
こうした功罪を踏まえ、何歳からどんな機種を持たせるか、持たせたらどう使わせるか、様々なルールを家庭や学校が探るのが現実的対応だろう。成長すれば携帯電話は社会生活に欠かせなくなる。それに備え、携帯とのつき合い方を徐々に身に付けさせていくのも大人の務めだ。
そこを抜きにして、政府の会議が「小中学生は所持禁止」と決めつけるのには違和感を禁じ得ない。あくまで呼びかけだとしても、影響は無視できないだろう。携帯=悪という発想が独り歩きする恐れもある。
もちろん、子どもをネット被害から守る手立ては真剣に考えなければならない。それには家庭や学校の努力だけではなく、携帯電話事業者の積極的な取り組みが不可欠だ。
自民党などはフィルタリングを事業者に義務付ける法案づくりを進めているが、法規制だけをよりどころとはせず、事業者が実効性のある有害情報遮断策を徹底すべきだろう。成長段階に応じた安全な機種の推奨と普及を急ぐ必要もある。
子どもの世界に携帯をどう位置づけていくか、社会全体で考えたい。