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社説1 洞爺湖合意へ内向き議論と決別を(5/24)

 7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)に向け主要議題の地球環境対策を詰める主要8カ国(G8)環境相会合が24日から神戸市で開かれる。日本が2013年以降の温暖化防止の次期枠組み交渉を主導するには、サミット議長国として温暖化防止に確かな道筋をつける必要がある。小手先の対応ではなく、日本が自ら温暖化ガス排出削減の明確な決意を示し、意味のある国際合意を目指さなければならない。

 環境相会合を前に、福田康夫首相は国内の排出量取引制度に前向きな姿勢を見せている。私たちは温暖化ガスの排出削減に経済的価値を与え、削減を促す排出量取引の導入を主張してきた。首相が経済産業省、鉄鋼や電力業界の抵抗を押し切り、導入を決断したのなら、率直に評価したい。望ましいのは、この制度の早期導入だ。

 すでに排出量取引制度を導入し、次期枠組みづくりへ向け大幅な削減目標を設定した欧州諸国だけでなく、これまで消極的だった米国も次期政権は積極姿勢に転じるのが確実だ。そんな世界の潮流のなかで国内では内向きの議論が繰り返され、日本の削減目標の明示や制度づくりが遅れてきた。こうした内向き議論からの決別こそ、サミット合意主導の必要条件である。

 昨年のサミットで主要国は2050年までの世界の温暖化ガスの排出半減を真剣に検討すると約束した。大排出国の米国や中国、インドが参加する次期枠組みづくりも確認し合った。洞爺湖サミットでは50年までの排出半減を再確認する程度でお茶を濁すわけにはいかない。

 中国やインドを排出削減に導くためにも、世界全体の排出量を減少に転じさせるピークアウトの時期を明示するとか、次期枠組みで先進国全体の排出削減目標で一定の合意に達するといった前進が必要だ。難題である。それだからこそ、日本の熱意と決意が問われる。

 福田首相は近く、50年に温暖化ガス排出を60―80%削減するという日本の長期目標を表明するとされる。決意を示すには長期目標だけでは不十分だ。日本は次期枠組みで焦点となる中期目標を示していない。産業分野別に削減可能量を積み上げ、低めの目標設定の思惑が見える方式に固執していては、首相の言う「低炭素革命」の志を疑われる。

 国際合意を主導するには国内の抵抗を排し、世界が納得する日本の中期目標を示す必要がある。環境相会合でその意気が見えなければ、洞爺湖サミットの成功は危うい。

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