中国製ギョーザの中毒事件をきっかけにクローズアップされたのが、いかに日本の「食」が輸入に頼っているかという実態だった。農林水産省がまとめた二〇〇七年度版農業白書(食料・農業・農村の動向)は、世界の食料需給が中長期的に逼迫(ひっぱく)する可能性を指摘したうえで、40%以下という食料自給率(カロリーベース)の低さにあらためて強い危機感を示した。
食料をめぐる世界情勢について、白書は「かつてない変化が起こっている」と分析した。途上国の人口増加や石油代替燃料としてのバイオ燃料の増大、天候不順による生産減少などで、世界の穀物在庫は低水準となり、穀物・大豆の国際価格は過去最高の水準にまで高騰した。
ロシアや中国など一部の食料輸出国では、自国への供給を優先するため、農産物の輸出規制を始めた。一方で、食料輸出国が遺伝子組み換え作物の栽培を増やしていることから、「日本は非組み換え作物の安定的な確保が困難になる可能性がある」とした。地球温暖化の進展や水資源の不足なども農業生産に影響してくるという。
日本の食料自給率は一九九八年度に40%まで低下して以来、横ばいを続け、二〇〇六年度に39%にダウンした。安全性だけでなく、供給に対しても一段と目を向けねばなるまい。
白書は「限られた国内の農地を有効に活用して、国内農産物の生産を増やしていくことが重要」と指摘する。具体的には昨年四月にスタートした新たな経営所得安定対策の普及・定着を図ることを前面に出しており、意欲のある担い手に絞って、生産を支援する。また、消費の面からは米粉利用などによる米の消費拡大や食育の推進などを挙げた。
生産の効率化を進めるうえで、農地の問題は避けて通れない。白書は経営規模拡大のために、貸したい人は貸しやすく、借りたい人は借りやすいよう環境を整えるとしている。
作物を植える予定のない耕作放棄地は二〇〇五年には全国で三十八万六千ヘクタールと十年前の一・六倍に増えた。農水省は農地の集積促進策や企業が農業に参入しやすくなる制度の整備などを進め、耕作放棄地の解消を目指すとしている。具体策を早く打ち出さなければならない。
食に対する消費者の信頼を揺るがす事件が相次いでいる中、白書では安全性の確保に対する新たな施策は示されていない。農地流動化へ向けた規制緩和など、食料自給率の向上へ国を挙げた取り組みが求められている。
道路整備に使途が限られている道路特定財源が一般財源化されたら何に使うべきか。都道府県知事の間では、見解が広い分野に及んでいることが共同通信のアンケートで分かった。
政府は二〇〇九年度からの一般財源化を閣議決定した。アンケートでは、一般財源化後の望ましい使い道(複数回答)として最も多かったのは「道路整備」(三十一人)だった。以下、「交通事故対策」(十一人)「環境対策」(九人)と続き、「地域交通対策」「社会保障」「地域振興」などもあった。
やはり地方圏を中心に道路整備のニーズは高かったものの、交通事故対策から社会保障まで多岐にわたった。地域の実情によって望むものが異なるのは当然といえよう。
例えば高速道路の建設状況は地域によって大きな差がある。国の高速道路整備構想(約一万四千キロ)の開通率は〇七年度末で全国平均は66%だが、岡山、香川、滋賀など六県は90%を超える。これに対し宮崎、鳥取など九道県は50%を切る。
開通率の低い地域は「企業誘致や観光振興などに不利」として、道路特定財源を投入する方式での高速道路整備を進めたいだろう。逆の地域では別の用途に使いたいはずだ。
使い道の具体策は政府が今秋にまとめるが、地方の裁量を認めるべきである。そうすれば岡山、香川などは割高で利用のネックになっている本州四国連絡道の通行料金引き下げに活用することもできる。
各地域の施策を実効性のあるものにするには、地方独自の財源拡大が欠かせない。今回のアンケートでも、国から地方への配分拡充を求める声が目立った。地方分権にふさわしい妥当な要求といえ、結束して声を高めていく必要がある。
(2008年5月23日掲載)