MC協議会の設置根拠を強化へ

 消防庁は今年度、地域の救急搬送体制について検証する役割を担うメディカルコントロール(MC)協議会の法的位置付けの強化に着手する。同庁は5月23日に「救急業務高度化推進検討会」(座長=山本保博・東京臨海病院長)の初会合を開催。「MC協議会作業部会」を設置し、MC協議会の業務拡大や法的整備を検討するとの案を示し、大筋で了承された。

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 同庁は検討会に対し、今年度の検討項目を提示。昨年度に引き続き、▽消防機関と医療機関の連携▽MC▽トリアージ(緊急度・重症度による患者の選別)―の3つの作業部会を設置して、それぞれ課題について検討する。MC作業部会では、懸案だったMC協議会の設置根拠の強化のための議論を開始する。

 MC協議会は2001年の同庁の課長通知が設置の根拠で、救急救命士の再教育に関する医療機関との調整業務や、救急救命士への助言・指導、地域の救急搬送や救急医療の体制の検証を担うとされている。しかし、地域によって構成人数や業務内容などに違いがあり、活動が形骸(けいがい)化している協議会もあると指摘されている。同庁は昨年度、相次ぐ救急医療機関の受け入れ不能の問題などを受け、MC協議会が救急搬送体制の検証を担うとする内容の報告書をまとめたが、「設置根拠が弱く、地域によって活動に差があるMC協議会が担うには荷が重過ぎる」との声が上がっていた。

 こうした状況から、MC協議会の設置根拠を強化して、活動内容を拡充することにより、国内の救急業務全体の質の向上を図ることにした。このほか、救急隊員が患者の症状などに応じて適切な病院を選べるような搬送体制の構築や、救急医療情報システムの改善、今年度から始まった救急患者受け入れコーディネーターの活用などについて検討する。円滑な救急搬送体制を確保するため、医療側の受け入れ体制についての提言も行う。

■救急受け入れ実態調査、項目を細分化

 「消防機関と医療機関の連携に関する作業部会」では、昨年度に引き続き実施する、救急搬送時の医療機関側の受け入れ体制に関する実態調査の内容の詳細を検討する。救急隊員が医療機関に照会して受け入れられなかった理由について、三次救急医療機関で最も回答が多かった「ベッド満床」の項目を細分化し、「救急専用ベッド」「集中治療室」「一般病棟」「病院全体」などに分類。二次救急医療機関で最も多かった「処置困難」も、「設備・資器材の不足(ハード面)」「手術スタッフ等の不足(ソフト面)」「手に負えない」「リスク回避」などに分類する方向だ。また、調査期間は昨年度の1年間から短縮するとした。詳細は今後、作業部会で詰める。

 また、国の三位一体改革などにより救急医療機関に対する国庫補助のほとんどが一般財源化されており、救急医療機関への補助が減額されている自治体があるとする指摘もあるため、医療機関の運営に対する支援の在り方も検討する。

■トリアージ導入のタイミングを検討

 「トリアージ作業部会」は、昨年度に検討した119番受信時のトリアージのプロトコル(運用基準)を現場に導入する際の課題について検討する。昨年度にまとめた報告書では、救急隊の出動数のピーク時に限ってトリアージを導入するよう提案しているが、どのようなタイミングでトリアージの体制に入るかや、地域特性に応じた運用方法などについては、今年度に議論を持ち越していた。このほか、救急隊の配置や編成、プロトコルに従った際に発生した事故などに関する法的整備なども検討する。

 委員からは、東京都で実施している都民に対する救急搬送についての意識調査や、愛知県で効果を上げている通信司令プロトコルなど、既に各自治体で実施している取り組みを今後の議論の参考にしていきたいとの意見が出た。


更新:2008/05/23 23:26     キャリアブレイン

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