2008年5月23日 18時33分更新
食品公害「カネミ油症」をめぐり患者ら1800人近くが国などを訴え多くが和解した一連の裁判のあと、患者として認められたうちの26人が公害発生から40年目にして油を製造した北九州市の企業を相手取り、2億8600万円の損害賠償を求める訴えを福岡地方裁判所小倉支部に起こしました。
訴えを起こしたのは、昭和62年以降に国から認定されたカネミ油症の患者のうち、長崎県や福岡県、首都圏などの40代から80代までのあわせて26人で、午前中、原告や弁護士らが福岡地方裁判所小倉支部を訪れ、訴状を提出しました。
カネミ油症は、昭和43年に北九州市のカネミ倉庫が製造した食用油を口にした人たちに激しい皮膚の異常などが現れた食品公害です。1800人近くが国やカネミ倉庫などの関係企業を訴え、多くは昭和62年に和解して和解金も部分的に支払われています。
23日訴えを起こした26人は、一連の和解のあとに患者として認定されましたが、カネミ倉庫からは見舞金の23万円と認定後の治療費しか支援が得られず不十分だと主張しています。
そして、会社側に1人あたり1100万円、総額2億8600万円の損害賠償を求めています。
提訴のあと、原告らが記者会見を行い、原告団長となった長崎県五島市の古木武次さんは「これまでさまざまな症状にさいなまれ、多額の治療費を払ってきました。提訴は望んでいませんが、私たち高齢者にとっては時間が少ないこともあり、早期解決を図るため提訴に踏み切りました」と述べました。また、弁護団の保田行雄弁護士は「カネミ油症の発生から40年がたち提訴に至ったが、被害は今なお 深刻な状況にあり、十分な医療的支援もとられていないのが現状だ。今回の提訴がきちっとした救済システムを確立するきっかけになればと考えている」と述べました。
一方、カネミ倉庫は「訴状を見ていないので、コメントは控える」としています。