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SOS総務
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もう大丈夫、あなたを救う「うつ対策119番」:

原因は上司のパワハラ? 部下の能力不足? 職場の人間関係とうつ

職場の人間関係の中でも、上司と部下間のトラブルには、うつにつながるパワーハラスメントなどのケースが増えているようだ。部下のうつが一見、上司のパワーハラスメントが原因に見える場合でも、実は部下の能力が起因していることもある。その際の対応について見ていこう。
2008年05月22日 10時00分 更新

 2002年の労働者健康状況調査では、仕事や職業生活に「強い不安、悩み、ストレスがある」とする労働者は61.5%。その要因は「職場の人間関係の問題」が最も高く、35.1%であった。中でも上司と部下のトラブルは、メンタルヘルスにつながるハラスメントなどのケースが増えているようだ。しかし、すべてのうつが職場の人間関係などに起因するわけではない。

うつ病になったCさん(事例)

 技術職のCさん(男性37歳)は、やり手の先輩が多い技術開発部門で、上司の指示の下、まじめに働いていた。半年前に管理職になり、部長の指示の下に技術マニュアルをまとめる責任者となった。しかし、管理職といっても部下はなく、関係部署と調整しながら過去のマニュアルを修正する作業が続いた。

 その結果、マニュアルが期限までにできない上、ようやくできたマニュアルも現場からはクレームが出るなどのトラブルが発生。Cさんは、その頃から気分が沈み、夜中に目が覚めるようになった。

 心配した妻が産業医への相談をすすめ、Cさんは産業医に相談。元気がない様子で、「上司から厳しく指導を受けたり、会議で叱責されることが続き、疲れました」と産業医に訴えた。産業医はCさんに精神科の受診を勧めたところ、「うつ病」の診断で2か月間の自宅療養の指示があった。

本人の問題?

 Cさんのケアをめぐり、上司と総務、産業保健スタッフで話し合ったところ、以下の問題点が指摘された。

  • Cさんの仕事の難易度は低く納期もゆとりがあったが、進捗が遅いため一部上司が担当

した

  • 不明点はいつでも質問できるよう、上司は普段からCさんに声を掛けていた
  • 上司はCさんの業務を客観的に評価し、対応策を冷静に指示はしたけれども、叱責はしていない
  • Cさんは、同期より昇進が遅れているので、前任の上司が温情で昇進させた
  • Cさんの業務遂行能力は低いが、そのことに関して自己理解が乏しい

 このような問題を前にして、関係者は今後の処遇に頭を抱えてしまった。

正しく評価する

 この事例のように、Cさんだけからの話を聞くと、うつになった原因について「上司によるパワハラか?」と考えてしまいがちだが、違う視点から見ると決してそうはいい切れないケースもある。そのため、対象者の過去の評価や、現在の業務遂行の状況、上司や関係者の話なども総合的に考慮して、十分に検討することが必要だ。

 Cさんのように業務遂行能力が高くなくても、グループで仕事を進める場合はそれが表面化しないことが多い上、周囲も能力の問題を指摘することがないため、本人がその事実を認識できていないことがしばしばある。このような場合、当事者が管理職になって初めて自分の能力を含めた厳しい現実と向き合うことになるのだ。そして、人によってはこのような状態に耐えられなくなり、うつ病になることも……。

「己を知る」ことへのサポート

 本人に対して、厳しい現実を受け入れさせる役割は、通常は上司が中心になって行う。Cさんのケースでは、過去の上司が能力不足の指摘を怠ったり、温情主義で管理職に登用したことなどは、現在の上司には直接関係がないといえるだろう。

 しかし、Cさんのように、いつか必ず能力の問題を受け入れることが必要な時期が来るのも事実だ。業務調整や配置転換の際には、上司や人事担当者、産業保健スタッフとチームを組み、対応していくことが望ましい。

セルフケアとしての対処

 通常、うつ病で休職した場合の復職は、「元の職場に戻る」ことが原則であり、業務負荷も元の業務量や業務の質より減らした状態からスタートして、数か月かけて元の業務の量や質に戻していくものだ。

 しかし、Cさんのように能力に問題がある場合は、元の職場や業務負荷に戻せば、再度状態が悪化することが考えられる。したがって、状況によっては業務負荷の軽い別の職場への異動や、グループでの業務に変更することも必要だろう。

 業務の変更などを行う場合は、主治医の意見を聞いたり、本人に納得してもらうことが必要だ。また、自己の状態を認知できるよう、上司が中心となって継続したサポートを行うことも重要なポイントとなる。

リスク管理

 温情主義での昇進は、本人にとっても組織にとっても不幸なことだ。いつか、Cさんのように能力の問題を受容せざるを得ない局面が訪れる危険性が伴う。

 しかし半面、たとえ温情主義での昇進であっても、本人の努力や上司をはじめとした周囲のサポート、または適正配置によって能力アップにつながれば、本人や会社にとって有意義な結果となる。

 このように、さまざまな状況を予測し対応方法を事前に考えておくことは、「組織のリスク管理」の1つといえよう。

『月刊総務』2008年1月号 総務の引き出し「メンタルヘルス」より

執筆・栗岡住子


[SOS総務]


この記事は月刊総務が運営する「SOS総務」提供です。詳細はSOS総務をご覧ください。


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