「“蒸し”できない熱し方」
次は加熱方法について。書店で売っているプリンの本を見ると加熱方法はさまざまです。いったいどうするのがよいのでしょうか?
プロのプリンと加熱しすぎのプリンに圧力をかけて実験。すると、プロのプリンは素人の半分の固さであることが判明しました。加熱の仕方が食感に大きな影響を与えているのです。
上手な加熱法とは何かとプロに聞くと「ゆっくりと加熱して、しっかりと熱を入れる」という答えでした。オーブンの場合は170度で30分、蒸し器の場合は弱火で21分です。こうすると、プリンが理想の温度である80度までゆっくりと加熱されます。
ゆっくり加熱すると柔らかくなる理由
電子顕微鏡でプロと素人のプリンを比較しました。名人のプリンは、水分や脂肪分が細かく均等に散らばっています。これが舌触りに大きな影響を及ぼしています。
加熱すると、卵のタンパク質が熱凝固を起こし、水分や脂肪分を適度に含んだ細い網目構造になります。ゆっくり加熱すると、それがプリン全体に均等に広がります。
ところが急激に加熱すると、タンパク質の結合が進みすぎてしまい、太いタンパク質の網目構造になってしまいます。太い部分はなめらかさを失い、固さを感じるようになってしまうのです。
このアドバイスで主婦もうまく作ることができました。しかし、3日後、主婦が自宅でためしたところ、失敗してしまいました。いったいなぜでしょうか?
器によって異なるプリン液の温度上昇
違いは器にあると考えて再実験。特殊な温度計を、アルミ、耐熱ガラス、陶器の器に取り付けて、そこにプリン液を流し込みます。液の温度が急激に上昇したのはアルミとガラス。およそ15分で80度をこえ、30分後には90度近くになりました。逆にゆっくり温度があがったのは陶器。25分後にプリンが固まる理想の温度、80度になりました。
※「ゆっくり加熱」という意味では陶器がおすすめですが、加熱の温度と時間以外にも、オーブンの温度ムラやプリン液の量などによって条件が変わるため、一慨に「陶器ならなめらかにできる」とは限りません。
|