
手術に不可欠な麻酔科医。金大附属病院でも不足が顕著になっている。
|
金大附属病院で今春、麻酔科医の不足が深刻化し、外科医が手術中の麻酔を管理したり
、麻酔科医が手術を掛け持ちするなどの対応を取らざるを得なくなっている。麻酔専門医
の退職や産休が重なったためで、病院側は「手術には万全を期しており、件数も減ってい
ない」と強調する一方、「多忙で責任が重い」として麻酔科を敬遠する医師が増えている
ことに危機感を募らせている。
金大附属病院の麻酔科では三月末までに専門医二人が退職し、二人が産休に入った。現
在は大学院生を含め十八人が麻酔科医として働いているが、今年は専門医コースの研修医
が入らず、手術を担当できる専門医は十人のみ。他病院での勤務もあり、一日十二―十五
件ある手術に対して人数は不足している。
同病院では通常、一人の専門医が一件の手術で麻酔の導入から容体管理、覚醒(せい)
までを受け持つが、麻酔科医不足で順番待ちの手術に手が回らない状況となった。
このため麻酔科と外科が連携し、先月から比較的安全な手術中の容体管理は麻酔科の研
修を受けた外科医が付きっきりで担当することにした。麻酔科医は導入と覚醒を確認し、
他の手術も巡回する「掛け持ち制」だ。
掛け持ちは麻酔前の全身診察で安全性が高いと認められた患者の手術に限っての措置で
、一日二―四件程度だという。麻酔による医療事故は起きておらず、麻酔科の山本健教授
は「来春まではこの体制が続くだろうが、協力して乗り切る」と安全性を強調する。
麻酔科医は昼夜を問わない勤務を強いられ、患者の命を預かる重責を負う。このため近
年は担い手が減り能登では数年前から問題となり、石川県内の他の病院でも人出不足が進
んでいる。
県も今年度、医学生などへの修学資金貸与制度の対象に麻酔科を新たに加え、小児科、
産科と合わせて募集し、麻酔科医の確保に本腰を入れている。