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【社説】

景気減速 逆風に強さと独自性を

2008年5月23日

 景気の減速傾向が鮮明になってきた。五月の政府月例経済報告は基調判断を据え置いたが、先行きは一段と厳しさが増している。企業は自社の「強み」を見極めて、逆風に立ち向かう必要がある。

 少しは明るい材料がないか、と指標を見渡しても、残念ながら、あまりない。月例経済報告は「景気回復は、このところ足踏み状態」としたうえで、輸出は「伸びが鈍化している」、住宅建設も「持ち直してきたが、このところ横ばい」と前月に比べて判断を下方修正した。

 日銀の白川方明総裁は会見で「企業収益の伸び悩みや設備投資の増勢鈍化、生産の横ばい傾向など、景気減速の動きが明確になってきた」と率直に述べている。

 先に発表された一−三月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で3・3%増と三・四半期連続のプラス成長を記録したものの、実感からはほど遠い。物価下落がなお続いて、名目成長率が1・5%と低迷しているからだ。

 銀行決算も低調だった。サブプライムと呼ばれる米国の信用力の低い人向け住宅ローン関連の損失は、大手銀行六グループ合計で九千四百五十五億円と一兆円に迫った。昨年十一月段階の予想に比べて三倍以上である。

 先行きも暗い。米国では住宅価格の下落が続いて、サブプライム問題は峠を越したとはいえない。原油価格も高騰している。二十一日のニューヨーク原油先物市場は米国産標準油種(WTI)が一時、一バレル=一三五ドル台の史上最高値をつけた。

 加えて、為替も円高水準のままで、輸出の足を引っ張る展開になっている。月例経済報告は「景気の下振れリスクが高まっている」と警告を発している。

 こうなると、企業はこれまで以上に無駄や非効率を省いて、自社が強さを発揮できる分野に経営資源を特化させていく必要がある。たとえば、日本ビクターは家庭用液晶テレビからの撤退が伝えられた。三菱電機も携帯電話から撤退するという。

 採算を冷静に見極めて、弱い部門からいさぎよく撤退するのは、合理的な経営判断と評価できる。

 銀行も同じではないか。横並び経営を続けていても仕方がない。経営環境が厳しいときこそ、他行がまねできない強い分野の育成に全力を挙げるべきだ。

 収益環境は厳しいが、給与やボーナスが増えなければ消費は増えない点も強調しておきたい。

 

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