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【社説】

防衛省改革 軍事利権は不問なのか

2008年5月23日

 政官業が群がる軍事利権の闇を放置し続けるのか。一連の不祥事を受け、石破茂防衛相が示した改革案には、不信を招いた根幹への切り込みが足りない。組織論を前面に出すのは議論のすり替えだ。

 会社が傾きかけているのは、総務と営業部門のいがみ合いが原因で、社長に正確な情報が迅速に伝わらないことにある。問題解決には本社組織を大胆に変えるしかない−。石破氏が政府の「防衛省改革に関する有識者会議」で提言した改革案は、会社にたとえれば、こんな発想によるものだろう。

 昨年、念願の省昇格を果たした防衛省は不祥事にまみれてきた。守屋武昌前事務次官の汚職、米補給艦への「給油量ミス」の隠ぺいなど国民への裏切りは続き、今年はイージス艦衝突事故も起きた。

 その原因は、縄張り意識の強い内局(背広組)と自衛隊各幕僚監部(制服組)がけん制し合いながら、別々に防衛相を支える二重構造にある、というのが石破氏の見解だ。

 改革案の特徴は、背広組と制服組を統合し、混合組織にするとした点だ。内局幹部が兼任する防衛参事官制度は形骸(けいがい)化しているとして廃止、政治任用の防衛相補佐官の新設なども盛り込んだ。だれが何をやっているかさっぱり分からない組織を改め、防衛相が指揮しやすい態勢を整えたいとする石破氏の持論に沿った内容となった。

 問題なのは、混合組織がなぜ不祥事の根絶につながるのか、肝心なところがぼやけていることだ。出直しに必要なのは、守屋前次官逮捕で一端の見えた政官業癒着構図との決別だったはずだ。その本質部分はどうしたのだろうか。「装備品の取得手続きが不透明で、チェックシステムも十分でない」との表記だけでは納得できない。何のための改革案なのか。

 参院委員会で二十二日、贈賄罪などで公判中の防衛商社山田洋行元専務の証人喚問が行われたが、真相解明にはほど遠い。億単位の金銭が動く装備品調達は、防衛機密もからみ、ブラックボックス化している。そこで生じる不正に国民の不信の目が向いていることを忘れてはなるまい。

 それにしても、どこかで見た光景である。防衛省は問題が発生するたびに組織改編で対処してきた。同じ轍(てつ)を踏むことになりはしないか。けじめをあいまいにして組織をいじる印象が先に立っては共感は得られない。かえって不信を強めることになりかねない。

 

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