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社説:元専務喚問 今度こそ久間氏が答える番だ

 「先生方に金を出せばどうにでもなる」。こんな発言を聞いたという証言が飛び出した。防衛専門商社「山田洋行」の元専務、宮崎元伸被告=贈賄罪などで公判中=に対し、参院外交防衛委員会が22日に行った証人喚問での一幕だ。

 元専務が同社関係者から聞いた話で、先生とは久間章生元防衛相らのことだというから、そのまま聞き流すわけにはいかない。元専務は、防衛関連企業と防衛族議員とのパイプ役とされる日米平和・文化交流協会の秋山直紀専務理事を通じて山田洋行が久間氏のパーティー券を購入したと証言し、政治献金をしていたことも示唆した。

 前防衛事務次官の守屋武昌被告=収賄罪などで公判中=による防衛省汚職が発覚した昨年以降、久間氏は山田洋行や秋山氏との関係をめぐって疑惑が取りざたされてきたが、これまで明確な説明をしていない。今こそ、国会の場などで疑問にきちんと答えるべきだ。

 元専務の証言によると、元専務が山田洋行のオーナーと対立して別の防衛商社を設立した後の06年12月、久間氏、秋山氏と元専務がそろった宴席で、久間氏は「オーナー親子は非常にいい親子じゃないか」と語った。元専務は、山田洋行の商売に「手を出すな」という圧力だと感じたという。

 また、防衛相在任中には航空自衛隊の次期輸送機(CX)エンジン納入で山田洋行側が有利になるよう担当課長に指示していたと聞いた、とも証言したが、この点は守屋前次官が喚問された際の証言とも符合する。現職防衛相が特定の企業側に付いて営業を後押ししていたとしたら重大な問題だ。久間氏は説明責任を果たしてもらいたい。

 元専務は、額賀福志郎財務相とも会食などで2回同席し、そのうち1回はカラオケバーで守屋前次官も一緒だったと証言した。この点については額賀氏に答えてもらう必要がある。

 一方、元専務は、防衛庁(当時)が発注した福岡県苅田(かんだ)町の毒ガス処理事業に絡み、下請け受注を目指した山田洋行が秋山氏からの要請で暴力団などの地元対策費として1億円を秋山氏側に出したと証言した。秋山氏は参考人招致された同じ委員会で1億円受領を全面否定しており、2人の証言は真っ向から食い違う。秋山氏をめぐっては東京地検特捜部が資金の流れなどを捜査しているとされ、この点の疑惑も晴らしたい。

 それにしても、自民、公明の与党議員がこの日の委員会を欠席したのはどうしたことか。宮崎元専務がカメラ撮影を拒否したのに野党側が認めなかったことを不服としたためだが、これでは国民の理解は得られない。防衛利権をめぐる疑惑は守屋前次官の問題にとどまらず、政界を加えた癒着の全容解明が求められている。与党は疑惑解明に及び腰と受け取られてもやむを得まい。

毎日新聞 2008年5月23日 東京朝刊

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