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現在位置:asahi.com>社説 社説2008年05月23日(金曜日)付 柏崎刈羽原発―「想定」は覆されたこれまで考えていたよりも最大約5倍の揺れに備えなくてはならない。 去年7月、新潟県中越沖地震で激しい揺れに直撃された東京電力柏崎刈羽原発のことである。 06年に改められた原発の耐震設計指針をもとに、東電が中越沖地震の観測でわかった新事実も盛り込んで想定すべき揺れをはじき直したところ、そんな結果が出た。 1〜4号機の下の岩盤では、これまでの5.1倍、5〜7号機の下では2.6倍の揺れを想定しなくてはならないという。 東電は安全を見込んで、今回想定し直した以上の揺れにも耐える強さをもたせる考えだ。6月から補強工事を始める。柏崎刈羽原発では、いますべての炉が止まり、点検作業などが進んでいるが、運転再開の見通しはますます立たなくなった。 どうしてこんなに、想定の値がはね上がったのか。 ひとつは、新しい指針に沿って、原発周辺の活断層が詳しく調べられたことだ。それらの活断層が起こす地震の大きさも厳しく見積もられ、断層の動きによってもたらされる揺れの計算方法も精密になった。 さらに、中越沖地震などの観測データによって、この原発一帯の地下の地層には、地震の揺れを増幅する特徴があることも突きとめられた。 全国のほかの原発では今春までに、新しい耐震設計指針に沿って揺れを想定し直した。その結果、どの原発でも上方修正しなければならなかった。このなかで最も大きかったのは1.6倍である。柏崎刈羽の「5倍」は際立っている。大地震を経験して地中の様子が一層わかったことが、大きな修正につながったともいえよう。 一連の見直し作業では、福井県にある関西電力美浜原発と日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」の真下に、長い活断層が通っていることもはっきりした。 原発を建てたころは、地震の揺れの見立てが甘かったのである。 裏を返せば、地震科学には日々新しい発見があり、断層調査などの技術も日進月歩で進んでいる。これからも想定は塗りかえられていくことを前提にしなくてはならない。 電力会社などには「原発は設計にゆとりをもたせてあるので大丈夫」という見方がある。だが、柏崎刈羽原発を最後に揺れの想定が出そろってみると、全国のすべての原発が、多かれ少なかれゆとりを食いつぶしていることが明らかになった。 耐震を考えるときには、研究の進展で新しい懸念材料が出てくることを念頭に置いておかなければならない。 地震国ニッポンの原発は、ゆとりを取り戻すため補強を急ぐべきだ。 宇宙開発―無駄を省いて透明に日本の宇宙開発を「非軍事」から転換させ、名実ともに軍事利用に道を開いた宇宙基本法について、昨日の社説で、軍事利用の原則を関連法制などの中で明確にするよう求めた。 だが、この法律はさらに幅広く、官民の宇宙開発の進め方全体にかかわるものでもある。 基本法は、首相を本部長とする宇宙開発戦略本部を置いて宇宙開発を総合的、計画的に進めるなど、政府の責任や態勢づくりを定めている。宇宙開発の組織の面でも大きな変化になる。 これまで宇宙行政にも、各省の縦割りがつきものだった。宇宙開発が体系的、効率的に進められるようになるのなら、歓迎すべきことだ。 しかし、そうなるかどうかは、基本法に基づいてこれから始める具体的な組織や態勢作りにかかっている。 宇宙技術がいよいよ重要性を増していることは間違いない。衛星を使った天気予報からカーナビまで、生活になくてはならないものだ。 一方、インドや中国をはじめ、韓国なども宇宙開発に力を入れ始め、世界の宇宙地図は様変わりしようとしている。日本はこの10年ほど、ロケットの打ち上げ失敗や衛星の故障が続き、相対的な地盤沈下は否めない。 日本の宇宙技術を鍛え直し、国民生活に役立てるだけでなく、国際的にも貢献したい。 宇宙機関のお手本である米航空宇宙局の最大の目的の一つは、宇宙科学の研究だ。日本も、小惑星探査機「はやぶさ」に代表される科学研究で世界をリードしよう。 だからといって、財政難の時代に、あれもこれもやるわけにいかない。 基本法を後押しした中心は産業界だった。宇宙産業を育てることは必要だが、産業界の都合に引きずられて、道路やダムのような無駄の多い公共事業にしてはいけない。 日本独自の技術をどこまで持つべきか、政府は費用対効果を冷静に見極めなければならない。 自民党の一部が後押しする中型ロケットGXは、開発の遅れと予算の大幅な超過が問題になっている。これをどうするか。新しい態勢にとって最初の試金石になるかもしれない。 もっと気がかりなのは、軍事の分野が広がることで、透明性がますます失われるのではないかということだ。現在の情報収集衛星は多目的とうたわれているのに、利用の実態は一切明らかにされていない。納税者に対する説明責任が果たされていないのだ。 無駄をなくし、身の丈にあった計画を立て、柔軟に見直し、情報はそのつど可能な限り公開していく。 巨費を要する宇宙開発だからこそ、そうした厳しい姿勢が政府にいっそう求められる。 PR情報 |
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