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ダビング10なぜ補償金 メーカー反発、解禁前に足踏み

2008年05月22日23時51分

 デジタル放送のコピー制限を緩和する新ルール「ダビング10(テン)」が、解禁予定の6月2日の直前になっても実施のめどが立たない異常事態に陥っている。著作権を保護するためデジタル機器に課金する「補償金」をめぐり、著作権団体と電子機器メーカーが対立しているためだ。

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ハードディスク内蔵型のDVDレコーダー

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 メーカー側委員「この案では、補償金制度が際限なく拡大する不安を感じる」

 著作権団体委員「結論を得るのが重要だ。消費者への影響を顧みず、原則論を主張しているのはよくない」

 今月8日の文化審議会(文部科学相の諮問機関)の小委員会。著作権団体の要望をふまえ、課金対象をiPodなどの携帯音楽プレーヤーやハードディスク内蔵型録画機に拡大する文化庁案に、メーカー側は強く反発。ダビング10の導入を検討してきた総務省の情報通信審議会でも両者のにらみ合いが続き、解禁日の延期が避けられない情勢だ。

 現在、デジタル放送のテレビ番組は、デジタル録画機のハードディスクに録画したものを1回だけしかDVDなどの他の媒体に移すことができない。高画質の大量複製による著作権の侵害を避けるための措置だが、「使い勝手が悪い」と利用者からの批判を受けてきた。ダビング10は、データをDVDなどへ9回コピーし1回移動できるようにするもので、昨夏、総務省の審議会で導入が決まった。

 審議会はコピー制限緩和に合わせて「クリエーター(創作者)が適正な対価を得られる環境の実現」を答申に明記。これを根拠に著作権団体は補償金の支払いをメーカー側に要求している。

 補償金制度は93年にスタート。すでにDVDやDVDレコーダーなどに課金され、メーカー側が実質負担したり販売価格に数%上乗せしたりしている。だが、ここ数年、課金対象外のiPodやハードディスク内蔵型録画機などへの機器の世代交代が進んだ結果、00年に42億円だった補償金の徴収は06年には28億円に減少。著作権団体は、課金対象の拡大が認められなければダビング10の拒否も辞さない「人質作戦」で、メーカーに揺さぶりをかけている。

 一方、メーカー側は、課金を容認すれば、今後新しいデジタル機器が登場するたびに課金されるのではないか、と警戒感を強める。「ハードディスク録画機とパソコンの線引きは難しく、課金対象の抑止が利かなくなってしまう」(業界団体幹部)

 6月2日のダビング10の解禁日は、放送局とメーカーでつくるデジタル放送推進協会が決めたもので、著作権団体が拒否しても解禁を強行することはできる。メーカーは放送局に早期解禁を求めているが、在京キー局幹部は「我々は権利者から権利を預かって放送する立場。補償金はあって当然だ。なぜ、今になってメーカーはちゃぶ台をひっくり返すのか」と、著作権団体と歩調を合わせる。

 補償金問題の合意を目指し、29日の文化審議会の小委員会で最終調整する予定だが、メーカーと著作権団体の主張の隔たりは小さくない。委員会の開催を見送る可能性もあり、「ダビング10解禁」は宙に浮き続けることになりそうだ。

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