十五日付朝刊文化面に掲載した「イタリア人女性の観た『こんぴら歌舞伎』」をご覧になりましたか。在ローマ日本大使館に勤めるヴァレンティーナ・ザッピテッリさんに、香川県琴平町の日本最古の芝居小屋・旧金毘羅大芝居(金丸座、国重文)での見聞記を寄稿していただきました。
ローマ大での卒論テーマが「菊池寛とその時代」という彼女、歌舞伎の観劇経験はあるものの、「四国こんぴら歌舞伎大芝居」は初めて。「劇場の造りから役者と観客がとても親密な関係を作り出すことができる」などの指摘を交え、江戸庶民の芝居見物の雰囲気を満喫した感動を素直につづっていました。
地方では、なかなか歌舞伎に触れることはできませんが、ザッピテッリさんの言う「役者と観客の親密な関係」は、演劇などでも十分楽しめそうです。
県天神山文化プラザ(岡山市天神町)の「土曜劇場」は、四十六年続く地元演劇団体の発表の場。今年も六月から来年三月末までほぼ毎月、十の公演が行われます。その舞台に市川海老蔵さんはいませんが、演劇に懸ける役者たちの息遣いなど生のステージの醍醐味(だいごみ)が味わえるでしょう。
この「役者と観客の距離」は、そのまま記者の仕事にも通じるかもしれません。電話やインターネットではなく、現場に足を運び、当事者に直接取材する―。現場の空気はそこに居合わせた人にしか分かりません。ザッピテッリさんのような新鮮な感動が届けられるよう、部員たちとともに感性を磨きたいと思います。
(文化家庭部・金居幹雄)