政治家のネット人気、その先輩格はやはり麻生さんだ。昨年の自民党総裁選では追っかけもいたらしい。非正規雇用問題に詳しい作家、雨宮処凜(あまみやかりん)さん(33)は言う。「麻生さん人気はただのネタで、若者が面白がっているだけ。一方、志位さんは若者の生活実感を代弁し、感動を呼んだ。人気の質はまったく異なります」
では、志位さんの人気は、次の衆院選にどう影響するだろう。「今の若者は共産党アレルギーはないし、支持につながる可能性は十分あります。ただ、貧困を政治に利用している、と感じさせたらダメ」
最近は非正規雇用にあえぐ若者が、既存労組に頼らない独自のメーデーを各地で開いている。しかし、志位さんが足を運んだ話は聞かない。今シーズン、札幌、福岡など4カ所を回った雨宮さんは「来て当然なのに、との雰囲気があった」と証言する。ひょっとして志位さん、共産党色の薄い、緩やかな集まりは苦手なのか。
すると、こんな反論が。「私から門戸を閉ざすつもりは一切ない。声をかけてもらえばどこへでも行きますよ」。でも、他党のセンセイ方は、さして歓迎されずとも、いろんな集まりに首を突っ込んでいますが……。
雨宮さんはこうも言った。「若者が一番嫌うのは、ごりごりした組織に縛られること」。かつては青年運動でならした志位さん、こうした若者とどう接しますか。
「若い人たちの悩みをとっくりと聞く、これがすべての出発点」。でも、こうも漏らした。「『頑張れ型』ではうまくいかない。『我々の世代はこう戦ったから、あなた方もこう戦いなさい』とのお説教は一番嫌われる」
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実は国内の「蟹工船」ブームだけではない。米国や英国では「共産党宣言」「資本論」のマルクスがはやっているらしい。そんな中で、共産党が次の衆院選をどう戦うのか。
「貧困や投機マネー、環境破壊で、資本主義は立ち行かなくなりつつある。大企業と米国から国民に軸足を置く政治にしよう、そして資本主義そのものでよいか、と大いに問いかけたい」。昔ながらの主張がどこか新鮮なのは、世の中が変わったからか。
もしかして、「ウルトラC(志位)」の大躍進も? ネットの書き込みさながらのだじゃれをぶつけると、笑った。「うーん、そういう期待もね……。ただ、新しいプロセスが始まったとは思います。(過去に躍進した)1970年代、90年代にはなかった、資本主義批判の問題が正面の主題になってきた」
社会主義の展望を語る志位さん、どこかうれしそうだ。共産党への風向きは、そして日本の社会は変わるのか。ちなみに、ネットには「名前を変えたら支持する」との感想が相次いだが、「共産党」の看板を引っ込めるつもりはないらしい。
2008年5月22日