YOMIURI ONLINE
現在位置は
です

本文です

「息できない」外へ逃げ出す患者、刺激臭に病院パニック

看護師らに付き添われ、ロビーに避難した患者(22日午前2時48分、熊本赤十字病院で)=門岡裕介撮影

 深夜の救命救急センターが、パニックに陥った。熊本赤十字病院(熊本市)で21日、農薬クロルピクリンを飲んで搬送された農業男性(34)の嘔吐(おうと)物から塩素系有毒ガスが発生し、患者や医師ら54人が次々に体調不良を訴えた。

 せき込んで屋外に飛びだす患者、ガスマスクと防護服姿で突入する救助隊……。「嘔吐物には触るな」「一体何が起きたのか」――。患者を救うはずの病院で起きた事故に、悲鳴と怒声が飛び交った。

 病院によると、男性が母親(60)らに付き添われ、救命救急センターに運ばれたのは同日午後10時50分ごろ。約10分後、救急副部長の高村政志医師(48)が処置室で、苦しそうな表情を見せる男性の胃を洗浄するため、口から管を差し込んで吸引を行ったところ、突然、吐いた。約40平方メートルの室内に刺激臭が立ちこめ、患者らがせきこみ出し、「患者を外に避難させろ」などという声が上がり、騒然となったという。

 重症になった72歳の女性は、男性のベッドから約10メートル付近にいて室内に充満した有毒ガスを吸い込んだ。居合わせた医師や患者は外へ逃げ出した。

 高村医師は意識が遠のき倒れそうになりながら一時処置室を出た。すぐに治療に戻ろうしたが、強烈な刺激臭に阻まれたといい、「塩素をきつくしたようなにおいで、息ができず目も開けられなかった」と振り返った。

 男性の母親は処置室で男性のそばから離れようとせず、病院職員の制止を振り切り、「何とか助けて下さい」と泣き叫んだが、引きずり出されるように避難させられた。

2008年5月22日  読売新聞)
現在位置は
です