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偽バイアグラ横行 大半が中国産…健康への被害懸念
男性の性的不全(ED)治療薬「バイアグラ」などの偽造品が多く出回っている。3、4月には神奈川県と愛知県で偽バイアグラを販売していた輸入業者などが相次いで摘発された。ネットや店舗などで非合法に販売される“ニセモノ”に県警や医薬品メーカーは取り締まりに力を入れている。(大渡美咲)
4月11日、神奈川県警生活経済課はバイアグラの偽造薬を販売したとして、薬事法違反、商標法違反などの容疑で横浜市港南区の輸入雑貨販売会社の山地和郎容疑者(57)らを逮捕、偽造薬など計約3000錠を押収した。山地容疑者らは平成11年ごろから販売しており、売り上げは約6億円、約2億円の利益を稼いでいたとみられる。
偽造薬は主にネットやスナック、ラブホテルなどで販売されていることが多いという。バイアグラは、本来、医師の処方箋(せん)がなければ入手することができない。しかし、薬事法で「個人が使用する目的でおおむね1カ月に服用する量」ならば、個人輸入が認められている。この制度を悪用し、個人輸入代行業者を装い、ネットなどで偽物を販売するケースが多い。また、間に業者を介したり、知人などの名前を使って、大量に仕入れるなど手口も複雑化している。
バイアグラを販売する医薬品メーカーのファイザー社(東京都)は「ネット上で販売されている品物は半分以上が偽物」と指摘する。流通量は正規品の約2・5倍に上るというが、「比較する物もないので、本物と偽物を見分けるのは難しい」と話す。
海外で作られるバイアグラのほとんどは中国で作られているという。中国産のバイアグラは有効成分の「クエン酸シルデナフィル」が正規品の数倍以上入っている物や塗料を直接塗って色を付けるような劣悪な製造現場で作られるため、不純物が含まれていることも多く、健康への被害も懸念される。
大手病院の医師は「真性のバイアグラでも慎重に扱わなくてはならないのに、知識や経験のない人が販売するのは非常に危険。死亡例や障害が出ているケースもある」と話しているという。
こうした偽造薬が氾濫(はんらん)する背景を同社は「性的不全に対する恥ずかしさや面倒くささからネットに走るのでは」と分析する。偽バイアグラを購入した男性は「病院で知り合いに会うと困るので買った」と話しているという。また、製造の原価は安いが高値で販売でき、麻薬や覚醒(かくせい)剤などに対して、法律による処罰が軽いため、リスクが少ないことも上げられる。神奈川県警は「暴力団の資金源になっている」とも話す。
一昨年6月には、大阪府警が偽のED治療薬を販売していた韓国籍の男らを摘発した。押収量は10万錠にも上った。事件後に各県警は厚生労働省や税関などと協力し、業者の取り締まりに力を強化。医薬品メーカーも税関に「偽造品の輸入差し止め」を申請した。
財務省によると、平成19年の医薬品の差し止めは9万6591錠と前年の23倍。ファイザー社は本宮ひろ志さん監修の「ニセモノ撲滅キャンペーン漫画」をホームページに掲載するなど、偽造薬を購入しないように呼びかけている。
同社は「中国産の食品が問題となっているが、医薬品も同じ。効き目があるならいいと考えず、正規の方法で治療などをするようにしてほしい」と話している。