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柏崎刈羽原発、揺れ想定5倍に 東電が耐震補強へ

2008年05月22日23時00分

 東京電力は22日、昨年7月に新潟県中越沖地震に直撃された柏崎刈羽原発について、耐震設計の前提となる直下の地震の揺れの想定「基準地震動」を現行の約5倍の最大2280ガル(ガルは加速度の単位)とする報告書を国に提出した。中越沖地震よりも大きな揺れを想定した。国内のほかの原発の約3〜5倍で、突出して高い値となる。

 東電はこの新たな基準地震動をもとに、6月から配管などの耐震補強工事に入る。しかし、新潟県は運転再開に慎重な姿勢を示しており、運転再開のめどはたっていない。

 国内のほかの原発は、06年に改定された国の原発耐震指針にもとづき、3月までに基準地震動の見直しを発表していた。今回、東電が極めて高い値を報告したことで、他原発の見積もりが十分かどうかや、耐震補強のあり方が再び議論になりそうだ。

 東電はこの日、中越沖地震(マグニチュード〈M〉6.8)の後に観測された地震波や周辺の地下構造を調査・分析した結果を、経済産業省原子力安全・保安院の審議会の作業部会に報告した。

 それによると、震源とみられる活断層は将来、M7.0の大地震を起こす可能性があるとし、基準地震動は1〜4号機の直下の岩盤で2280ガル、5〜7号機では1156ガルと見積もった。現行は7基とも450ガルとしていた。震源とされる海底断層を新たに活断層と認めたことや、地盤の再評価などの結果としている。

 ただ、東電は、原発敷地の地表に近い地盤が比較的軟らかく、地震の揺れが弱まるため、原発の基礎部分に届く揺れは最大でも829ガル程度に減衰するとした。

 東電は安全性に余裕をもたせて、1千ガルの揺れに耐えるよう全7基で耐震補強工事に入るとしている。この揺れでは原子炉の強度には問題ないとし、原子炉の冷却水配管の支えなどを増やす。6月に7号機から始める予定だ。

 国内の他原発は3月までの基準地震動の見直しで、すべて値を上方修正した。それでも最大は東海地震の震源域にある中部電力浜岡原発の800ガルだった。他原発の新基準地震動は現在、国の保安院の審議会で審査中。東電の今回の報告が審議会での議論に影響する可能性もある。

 柏崎刈羽原発の総出力は821.2万キロワットで世界最大だが、地震で全7基が止まったままだ。運転停止が長引けば、夏季の電力需要を火力発電で代替することになり、国内の温室効果ガスの排出にも大きな影響が出る。(坪谷英紀、佐々木英輔)

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