福岡市内で唯一の公立女子高、市立福岡女子高校(同市西区、本多常忠校長)の志願者が減り続けている。市教委は「家庭科系の教育内容が世間のニーズと合っていない」などとして、男女共学化も視野に入れた学校改革を突きつけた。女子高の殻に閉じこもりがちだった同校でいま、「共学化」をカンフル剤にした試行錯誤が続いている。【高橋咲子】
◇誇り持ち、生き残りへ一丸
同校は1925(大正14)年創立。「女性としての人間力を培う」(同校学校要覧)ことを目指し、服飾デザイン▽食物調理▽保育福祉▽生活情報▽国際教養▽普通--の6学科で約900人が学んでいる。
福岡市は少子化の影響が比較的少なく、中学校卒業者数は横ばい状態。にもかかわらず、02年度1・46倍だった同校の志願倍率は07年度は1・04倍に低下した。04年度から1~2学科で定員割れも生じている。
06年5月、当時の市教育長は「存廃も含め、男女共学化について検証する必要がある」と、同校を含む市立4高校の活性化を検討するよう諮問委員会に要請した。
諮問委が今年3月にまとめた報告書は、人気が低くなった理由に(1)家庭科系の学科が時代のニーズに合わず、社会の変化から教育内容も就職に直接生かしにくくなった(2)服装や生活態度の乱れが中学校や地域からの信頼低下を招いている--ことを挙げた。
学校側は「女子高でなければ特色を打ち出せない。昔は『良妻賢母』になるための教育が求められたが、今は家庭人、職業人として両立できる基礎作りを学んでいる」と、共学への反対意見を表明。太刀川春美同窓会長(68)も「女子校としての母校に誇りを持っている。女性教育を大切にしてほしい。共学化はあり得ない」と反論した。
と同時に、「存廃」の言葉は強い危機感も抱かせた。学校は06年秋、「改革プロジェクト委員会」を発足させ、校内からアイデアを募って生き残りに乗り出した。
茶髪の生徒はすぐに帰宅させ、元の色に戻すよう指導を始めた。腰回りを折り込んで短くしたスカートの丈をその場で戻すようにも指導。周辺の公民館で、小学生対象に生徒がクッションなどの作り方を教える住民向け教室を開くようにした。
「『生活態度が悪い』というイメージを取り払おう」と、全教員が福岡市近郊の中学校90校や学習塾を回って取り組みを説明し、月に1度、企業経営者を招いて講演会も開く。こうした活動内容を知らせるニュースレターを配り、活気のある学校だと訴えている。
近所に住む団体職員の女性(53)は「学校が地域に溶け込んできたと感じる。化粧をした生徒や自転車のマナーが悪い生徒もいるが、そういう子ばかりではないことが分かった」と好意的だ。
本多校長は「いずれ男子生徒を受け入れるにしても、学ぶ意欲が高まってからでないと意味がない。“見られている意識”をより高めたい」と話している。
〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2007年8月5日