「当事者や親の知る権利の要望書」について



 これまでの経緯

 2007年5月25日(金)、いじめ自殺を含めた学校事故・事件の被害者や遺族とともに、国をはじめ、文部科学省、各政党あてに、「当事者と親の知る権利」を認めてほしいという内容の要望書を提出しに行きました。

 その回答が、文部科学省初等中等教育局児童生徒課長と、法務省人権擁護局から返ってきました。
残念ながら、中身をきちんと検討したうえでの回答とも、学校事故・事件の被害者や遺族の心情に寄り添ったものとも思えません。

 そこで、2007年10月16日(金)、前回の文部科学省の回答に対して、一問一答形式の質問書を、小森美登里さんと森美加さんが代表して提出してきました。
当初は、質問書を郵送するつもりでしたが、前回同様、民主党の千葉景子議員のお骨折で、急遽、池坊保子文部科学省副大臣に再びお会いして、直接、手渡すことができました。また、その席で、この質問書に対する回答を下さる旨のお約束もいただくことができました。

 
当初、10月末までにお返事をいただけるということでしたが、文部科学省のほうから、もう1週間回答を待って欲しい旨の連絡がありました。少なくとも、11月18日のNPO法人ジェントルハートプロジェクト主催の「親の知る権利を求める緊急シンポジウム 〜学校のいじめ・事件・事故の根絶を願って〜」には内容をお知らせすることができると思っていましたが、結局、その日までに回答をいただくことはできませんでした。

 民主党の楠田大蔵議員が国会質問してくださったこともあって、ようやく2007年12月12日付けで、文科省から質問書の回答をいただくことができました。
しかし、内容的には学校事故・事件、いじめ被害にあった子どもたち、親たちに何も知らされていない現実、事件・事故の教訓がその後に全く生かされていない現実に対して、あまりに現状認識に欠け、この国の教育行政のトップとしての責任を回避する内容であると感じています。

 今後とも、継続してこの問題を扱っていきたいと思います。
 なお便宜上、個人サイト「日本の子どもたち」(http://www.jca.apc.org/praca/takeda/)で、内容や経緯についての報告をさせていただいています。ご了承ください。

                                                                                           S.Takeda



目 次
 質問(2007/10/16)に対する文科省の回答 2007/12/18
 文部科学省回答(2007/6/8)に対する質問 2007/10/16
 当事者や親の知る権利の要望書 2007/5/25
 解説・ほか 2007/5/25
 法務省人権擁護局の回答 2007/5/31
 文部科学省初等中等教育局児童生徒課長の回答 2007/6/8
 解説・ほか 2007/6/22




質問(2007/10/16)に対する文科省の回答(青字部分)
(回答のみで返ってきたものをわかりやすくするために質問項目と並べて表記)
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特定非営利活動法人ジェントルハートプロジェクト 様

 

   平成19年10月16日付けでご質問のあった件につきまして、下記のとおり回答致しますので何卒宜しくお願いいたします。

 

平成19年12月12日

文部科学省初等中等教育局児童生徒課

 

                      

 

1 事故報告書について

 学校が提出する事故報告書の報告事項と、被害者やその遺族の主張とが大きく食い違っている、または、報告内容そのものが捏造を疑わせるほど内容がまるで違うという事態が多く起きています

 

質問【1】 貴職は、この現実を認知していますか。

回答【1】 いじめや自殺などの問題に対しては、問題を隠さず、学校・教育委員会と家庭・地域が連携して対処していく必要があります。子どもをめぐる事件・事故が発生した場合、学校は、子どもを心配する保護者の気持ちに応え、学校における子どもの状況を十分に把握し、保護者に情報提供を行うことが重要であると考えます。
このような観点に立ち、学校は自らが把握した状況を報告しているものと考えますが、その内容について保護者のお考えと一致しない場合もあることは承知しております。

 

質問【2】 事故報告書の実施根拠に係わる、要綱・要領・様式等をお示しください。

回答【2】 教育委員会等から国への事件・事故に係る報告について、文部科学省において定めた様式等はありません。

 

質問【3】 平成18年度以前の5年度間に提出された事故報告書件数を、年度別、都道府県・政令市別、及び案件別にお示しください。

質問【4】 提出された事故報告に対して、貴職が教育委員会等に対して指導等を行った事例及び処理顛末を、質問【3】の区分に準じてお示しください。

質問【5】 提出された事故報告に対して、教育委員会等が学校等に対して指導等を行った事例及び処理顛末を、質問【3】の区分に準じてお示しください。

回答【3】〜【5】  
教育委員会等より文部科学省に対し報告がなされる場合には、口頭での伝達など様々な形がとられるため、そのすべてについてお示しすることは困難です。
事案について情報を得たならば、文部科学省より教育委員会等に対し適時指導等を行っており、教育委員会等からも所管の学校に対し適切な対応を求めているものと考えます。

 

 

2 情報の共有と公開について

 学校等において発生した事件・事故等の情報公開の現状は、学校と教育委員会のみが把握し、我が子を亡くした親だけが、その情報を全く得られず・知らされず、一番情報が必要な保護者等が、一番遠いところに置き去りにされているのが現実となっています。

 

質問【6】 貴職は、この現実を認知していますか。

回答【6】 回答【1】で申し上げたとおり、保護者と情報共有を図ることは大切なことであり、各教育委員会や学校において適切な情報共有が行われているものと考えます。

 

質問【7】 貴職は、「いじめの問題について、真の解決に結びつけるためには、保護者の方々と必要な情報共有を図ることが大切だと考える。」との認識を示されましたが、ここでいう「情報共有を図る」に「必要な」とは、何が「必要」なのか具体な事例をお示しください。

質問【8】 私どもは、「情報共有」に関して、「必要な情報共有」と限定する必要性を感じておりませんが、貴職の考える「必要ではない情報共有」とはどのような事柄なのかを、具体な事例でお示しください。

回答【7】・【8】
「必要な情報共有を図ること」とは、「情報共有を図ることが必要である」との趣旨を示した文であり、「『必要ではない情報共有』があること」を意味するものではありません。

 

質問【9】 現在、事故報告書には家族・家庭からの情報記載欄がありませんが、私どもは、真の解決に結びつけていくためには、学校・教育委員会とその家族・地域の情報共有が不可欠であると考えており、家庭情報の記載の必要性を非常に強く感じています。事故報告書に家族・家庭からの情報記載欄が設けられていない理由・根拠等をお示しください。

質問【10】 既に、事故報告書に家庭情報の記載欄を追加し、学校の認識や情報と併記する改善要望を伝えていますが、この要望に対する貴職の考えをお示しください。

回答【9】・【10
実態調査をどのように行い、事故報告書を作成する場合にどのような内容をどのように盛り込むか等については、一義的には各教育委員会や学校で判断すべき事項であると考えております。一般論としては、問題の解決に向けて、保護者の方々の声に謙虚に耳を傾け、事実関係の把握を正確かつ迅速に行う必要があるところであり、保護者のご意見を聞くなどして報告等がなされるべきものと考えます。

 

質問【11】 事件直後の調査の実施は、事実・真実を正確に把握し情報を共有する上で非常に重要な作業です。
私どもは、調査の必要性は子どもたちにも十分に理解出来る範囲の物であると考えています。
また、「二度とこういうことが起きてはならない。そのために大切な調査です。」との、調査主旨とその重要性を真剣に子どもたちに伝え、事実と真実を把握することが、子どもたちの安全に繋がると考えていますが、貴職の考えをお示しください。

回答【11】 子どもたちに対し聞き取り調査やアンケート調査等をどのように行うかについては、一義的には各教育委員会や学校で判断すべき事項であると考えております。一般論としては、いじめの問題については、保護者や友人関係等からの情報収集等を通じて、事実関係の把握を正確かつ迅速に行う必要があると考えております。

 

 

3 親の知る権利について

 親の知る権利がないがしろされ、我が子の身に起きたことを知るために、やむなく裁判を起こしその中で事実の究明をしています。
お互いが最初から情報をきちんと・しっかりと共有出来ていれば殆どの被害者は提訴していません。

 

質問【12】 貴職は、この現実を認知していますか。

回答【12】 回答【1】【6】で申し上げたとおり、保護者と情報共有を図ることは大切なことであり、各教育委員会や学校において適切な情報共有が行われるべきものと考えます。しかし、情報共有が十分でないとして教育委員会等と保護者との間で争われているケースがあることは承知しております。

 

質問【13】 我が子が死んだ時に、学校等での子どもの状況を正確に知るための手続きをお示しください。

質問【14】 「学校・教育委員会とその家族・地域の情報共有」と「親の知る権利」との関連について、貴職の考えをお示しください。

質問【15】 個人情報保護法の目的は「個人情報を大切にし、目的外使用を厳しく制限すること」となっていますので、目的がはっきりしている場合、ましてや親が我が子の身に起こったことを知ることは、個人情報保護の目的からは外れるものではありません。私どもは、「学校で起きた事件事故に関する親の知る権利」を法制化する必要があると考えますが、貴職の考えをお示しください。

質問【16】 教育基本法に新設された「学校、家庭及び地域住民等との連携協力(第13条)」では、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚し、相互に連携協力に努めることを規定していますが、私どもは、親の知る権利の担保されない「連携協力」あり得ないと考えています。貴職はこの規定の実現をどのように図っていくのか、施策・取組み等をお示しください。

回答【13】〜【16
子どもをめぐる事件・事故が発生した場合、学校は、子どもを心配する保護者の気持ちに応え、学校における子どもの状況を十分に把握し、保護者に情報提供を行うことが重要であると考えます。
現在、行政手続法体系や個人情報保護法体系が整備されており、情報開示できる内容については個々の事案ごとに判断されることとなっています。このような中にあって、「学校で起きた事件事故に関する親の知る権利」という包括的・抽象的な権利を法制化することについては難しいと考えます。大切なことは、学校と家庭が、緊密な協力関係の下で、子どもを守り育てる立場からそれぞれの役割を適切に果たすことだと考えます。
文部科学省では、今後とも、教育委員会等への指導に努めるとともに、先般改正された教育基本法の趣旨も十分踏まえ、学校と家庭・地域の連携の推進等にいっそう努めていきたいと思います。

 

質問【17】 教育職員に対して定められている服務に関する規定等について、当事者責任に係わる情報の隠蔽・捏造・改ざん等違反行為の懲戒・分限処分等の基準をお示しください。

質問【18】 貴職は、通知・通達等によって教育職員による「隠蔽」について指導等を行なっていますが、教育職員が行った情報の虚偽報告、隠蔽・捏造・改ざん等違反行為の懲戒・分限処分等について、貴職が調査した平成18年度以前の5年度間件数を、年度別、都道府県・政令市別にお示しください。

回答【17】・【18
問題の隠蔽や虚偽報告等があった際に、当該教育職員にどのような処分を課すかは、任命権を有する教育委員会の権限と責任において、適切に判断すべき事柄であり、文部科学省においてその基準や考え方等について定めているものではありません。

問題の隠蔽や虚偽報告に係る懲戒処分等については、教育委員会の判断により、例えば信用失墜行為や服務義務違反等として処分されているものと考えられます。ご指摘のような区分での報告が文部科学省に対してなされていないことから、お尋ねの件数についてはお示しできません。

 

 

4 青少年の自殺について

 毎年約600人もの青少年が自殺していますが、その中でいじめ自殺は年間1〜2件しかないという事はあり得ません。

 

質問【19】 現在の調査方法と結果について、貴職の評価をお示しください。

質問【20】 現在の調査方法が実態を正しく反映する方法である根拠を、お示しください。

回答【19】・【20
自殺に係るこれまでの問題行動の調査方法については、警察庁の調査結果と乖離していること、「いじめによる自殺」が過去数年にわたり計上されていなかったこと等の問題が指摘されており、より適切な実態把握に向けて、先般、調査方法を見直し、新たな調査方法に基づく調査を実施したところです。

 

質問【21】 「平成18年中における自殺の概要資料(警察庁)」表3の職業別自殺者数に掲載されている、小学生14人、中学生81人、高校生220人について、自殺原因別件数を、都道府県・政令市別にお示しください。

回答【21】 ご指摘の警察庁の調査結果について、文部科学省はお答えする立場にありませんが、児童生徒の自殺事案の状況については、文部科学省において、新しい調査方法により調査を行ったところです。個々の状況については、個人情報に関わる部分があるため、公表は差し控えさせていただきたいと思います。

 

 

5 学校基本調査について

 86年鹿川君自殺の時、94年大河内君自殺の時、そして今回出した文部科学省の通知の内容がほぼ同じでした。
 今回新たに、いじめの定義を変え、今まで調査理由を一つしか選択できなかったアンケートについて複数選択が出来ることになりました。
 しかし、それらを変更して数字に変化があったとしても、残念ながらいじめを減らすこととは直結していません。


質問【22】 小手先の見直しなどでは子どもたちの命や心は救えない現状であると考えますが、複数選択の評価と今後の具体的な対応策について併せてお示しください。

回答【22】 自殺に関する調査については、本来自殺の要因には様々なものが考えられるにもかかわらず、自殺の「主たる理由」を一つだけ選択させるという方法になっていました。このため、より適切な実態把握に向けて、平成18年度分の調査より複数選択を可能としたところであり、生徒指導関連施策を今後進める上で参考となる、より適切な資料が得られるのではと考えております。

 

 

6 教育再生会議の提案内容について

提案された加害者の厳罰化に対して、現場の先生方が脅威を感じています。糾弾や罰則強化の施策推進は、加害行為をしている子どもたちを追い詰め、さらなる加害行為へと発展してしまうため、その子どもたちが学校へ戻ってくる恐怖を先生方は感じており、多くの先生方がこの施策に反対の意向を示しています。

 

質問【23】 貴職は、この事実を認知していますか。

質問【24】 貴職の考える、罰則等の強化のメリット及びデメリットをお示しください。

回答【23】・【24
教育再生会議の第一次報告で示された提案については、加害者に対する厳罰を一律に求めるものではなく、まずは子どもたちに対する深い児童生徒理解に基づくきめ細かな対応を行った上で、問題行動に対して毅然とした姿勢で臨まなければならない、としたものであると考えます。

児童生徒に対する罰則等の強化による一般的なメリット・デメリットについては一概に申し上げられませんが、事案によっては、出席停止や懲戒等の措置を含め、毅然とした対応をとり、教育現場を安心できるものにすることは必要であると考えます。

 

 

7 いじめの件数について

 学校でのアンケートの数値に反し、いじめは減っているどころか増えつづけています。

 

質問【25】 貴職は、いじめ件数が増加していることを認知していますか。

質問【26】 学校等でのいじめ件数の増減推移について、貴職の考えをお示しください。

質問【27】 学校等でのいじめ件数の増減推移について、貴職が実施してきた諸施策との評価をお示しください。

回答【25】〜【27
いじめの件数の増減に対し、これまで文部科学省の施策は一定の成果を挙げてきたものと考えますが、文部科学省では、いじめの数の多寡よりも、いじめの兆候をいち早く把握して、迅速に対応することが重要であると考えており、これまでも教育委員会等にその旨指導してきたところです。
いじめの件数については、平成18年度分の調査よりいじめの定義を見直すなどして調査方法を変更したところであり、今後もより適切な実態把握に努めていきたいと考えております。

 

 

8 チェックリスト等の効果について

新たに導入された「いじめ問題への取り組みについてのチェックポイント」の導入によって、その拘束時間の増加は先生方の大きな負担となっています。また、「すべてを検証して正しく書き入れる事は出来ない」との先生方の証言も新聞にも報道されているように、各項目の記載の正確性にも大きな疑問が生じています。
私どもは、先生方に時間的にも精神的にも負担がかかり、さらに正確な回答が得られないチェックリストの必要性を感じていません。それどころか、先生方が煩雑な事務作業に追われて、生徒と向き合う時間が削られることは本末転倒なことであると考えています。

質問【28】 チェックリスト導入の必要性をお示しください。

質問【29】 チェックリストの導入効果をお示しください。

質問【30】 チェックリスト導入の評価をお示しください。

回答【28】〜【30
平成18年10月19日付け初等中等教育局長通知「いじめの問題に対する取組の徹底について」における「チェックポイント」は、いじめの問題に関する学校と教育委員会の取組が充実されるよう、具体的に点検すべき項目の参考例として示したものです。チェックポイントで示された内容や通知本文を踏まえた対応が、教育現場において徹底されることが重要であると考えています。

 

 

9 いじめ自殺の調査について

貴職は、いじめ自殺に係わる調査について、99年度からの7年度間のみしか再調査をしていませんが、98年度に中学生が一人いじめ自殺と認められており、それ以前にも0人や1人という報告が多数あります。また、98年度に起きた自殺にも人権擁護委員会から警告を受けた事例やいじめの存在を認めた和解も存在します。

 

質問【31】 再調査の期間を99年度以降の7年度間とした根拠をお示しください。

質問【32】 私どもは再調査の期間については、少なくとも86年の鹿川君自殺事件以降の再調査が必要であると考えていますが、貴職の考えをお示しください。

回答【31】・【32
昨年11月に実施し本年1月に公表したいじめ自殺の調査は、国会審議等で指摘された、「いじめによる自殺がゼロ」とされていた平成11年度から17年度の期間における幾つかの事例について、教育委員会等における当時の把握状況や現在の認識等について検証したものであり、今後、更に遡って調査を実施することは考えておりません。個々の自殺事案の再調査については、事案の状況に応じ、各教育委員会や学校において判断すべきことであると考えます。

 

 

10 いじめや不登校に対する、目標数値の設定について

先生方は数値内で収めないと学校や自身の評価に響くことを心配するあまり、事実や正確な数値を報告できず、事実を把握することすら困難な現状となっています。

 

質問【33】 私どもは、事実・真実の把握可能なシステム構築を切望していますが、目標数値設定の意義をお示しください。

質問【34】 目標数値の導入効果をお示しください。

質問【35】 目標数値の導入に対する評価をお示しください。

質問【36】 私どもは目標数値の設定は不要であると考えていますが、貴職の考えをお示しください。

回答【33】〜【36
いじめや問題行動への対応に当たって、教育委員会等が実情に応じ、取組上の目標を設けることは、域内の教育委員会や学校の取組を促す上での一つの工夫と考えています。
ただし、数値目標を掲げた場合であっても、目標数字を追うあまり、いじめの実態の把握が機械的・形式的なものとならないよう配慮することが大事です。いじめは「どの学校でも、どの子にも起こり得る」問題であり、いじめの数の多寡よりも、問題を隠すことなく、いかに迅速に対応するかが重要であり、そのような取組がいじめを減らすことにつながると考えます。

 

 

11 いじめに関するアンケート調査について

 貴職が発表している調査結果が現実と大きく乖離し、実態をまったく反映していない事実があります。調査の結果として、平成16年度一校あたりのいじめ発生件数は、小学校0.2件、中学校1.3件、高校0.5件と発表しています。
NPO法人ジェントルハートプロジェクトは全国約13、000名の子どもたちにいじめの有無についてアンケート調査を実施したところ、いじめがあると答えた小学生は41.4%、中学生33.8%、高校生19.6%「どちらとも言えない」と回答した数を合わせると、小学生65%、中学生63%、高校生46.3%となっています。

 

質問【37】 いじめに関するアンケート調査の有効性について、根拠をお示しください。

質問【38】 いじめに関するアンケート調査に対する評価をお示しください。

質問【39】 私どもは実態からあまりに乖離したアンケート調査の実施は不要であると考えていますが、貴職の考えをお示しください。

回答【37】〜【39
文部科学省では、いじめの実態把握に当たり、アンケート調査など児童生徒から直接状況を聞く機会を設けた上で状況把握に当たるよう、平成18年度分の問題行動調査より調査方法を変更した上で、教育委員会等に依頼しているところです。このような様々な情報収集等を通じて、事実関係の把握を正確かつ迅速に行うよう、今後も促していきたいと考えております。

 

 

12 要望書・回答について

 

質問【40】 井上哲士議員から要望書をどう受け止めるのかとの質問(07年7月29日)があり、大臣は「これはシステムの問題ではない」と答えられましたが、システムの問題でなければ、何が問題だと思われますか。問題内容とその理由をお示しください。

回答【40】 本年5月29日の参議院文教科学委員会において、井上哲士議員よりご質問があった件については、伊吹文明文部科学大臣(当時)より「一般論として言えば、・・子どもとの間に相談を受けるだけの親子関係を確立して、そしてその子どものつらさを学校へ・・情報提供するという、双方の・・流れの中で子どもというものの命をやっぱり守っていかなければならない」と答弁していますこのように、まずは、学校と家庭が、緊密な協力関係の下で、子どもを守り育てる立場からそれぞれの役割を適切に果たすことが大切だと考えております。

 

質問【41】 「隠蔽してはいけない」と大臣がいくらマスコミを通じて声明を出しても、何度、通達を出しても、相変わらず全国各地の学校で隠蔽が繰り返されていますが、貴職はこの実態についてどのように考えているかお示しください。

回答【41】 いじめや自殺などの問題に対しては、問題を隠さず、学校・教育委員会と家庭・地域が連携して対処していく必要があります。このような観点から、学校と保護者の協力関係の下で適切な情報共有がなされるよう、引き続き、指導等に努めていきます。

 


 文部科学省回答(2007/6/8)に対する質問 →目次へ戻る

平成19(2007)年10月16日

文部科学大臣 渡海紀三朗 様

「学校のいじめ・事件・事故について

親の知る権利を求める会」

世話人              

NPO法人ジェントルハートプロジェクト

  理 事    小 森 美 登 里

 文部科学省回答(平成19(2007)年6月8日)に対する質問

 

初秋の候、貴職におかれましては益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。

 さて、標記の件について本年5月25日に提出しました要望に対して、文部科学省初等中等教育局児童生徒課長から回答をいただきましたが、内容を精査したところ、具体性に欠ける回答であったため、改めて質問書を提出することとしました。

 つきましては、ご多忙のところ恐縮ですが、より真摯な回答についてよろしくお取り計らいお願いいたします。

 

 なお、回答にあたっては、既に私どもの要望主旨と要望内容について、貴職がしっかりと受け止めていただいていることを踏まえ、かつ、真の解決には、学校・教育委員会とその家族・地域が連携して迅速に対応することが重要であるとの、貴職の認識を前提に、子どもたち等を取り巻く危機的事態の速やかな改善を図るべく、一問一答の形式を求めますので、ご理解の程を重ねてお願い申し上げます。


質  問

1 事故報告書について

 学校が提出する事故報告書の報告事項と、被害者やその遺族の主張とが大きく食い違っている、または、報告内容そのものが捏造を疑わせるほど内容がまるで違うという事態が多く起きています


質問【1】 貴職は、この現実を認知していますか。

質問【2】 事故報告書の実施根拠に係わる、要綱・要領・様式等をお示しください。

質問【3】 平成18年度以前の5年度間に提出された事故報告書件数を、年度別、都道府県・政令市別、及び案件別にお示しください。

質問【4】 提出された事故報告に対して、貴職が教育委員会等に対して指導等を行った事例及び処理顛末を、質問【3】の区分に準じてお示しください。

質問【5】 提出された事故報告に対して、教育委員会等が学校等に対して指導等を行った事例及び処理顛末を、質問【3】の区分に準じてお示しください。



2 情報の共有と公開について

 学校等において発生した事件・事故等の情報公開の現状は、学校と教育委員会のみが把握し、我が子を亡くした親だけが、その情報を全く得られず・知らされず、一番情報が必要な保護者等が、一番遠いところに置き去りにされているのが現実となっています。


質問【6】 貴職は、この現実を認知していますか。

質問【7】 貴職は、「いじめの問題について、真の解決に結びつけためには、保護者の方々と必要な情報共有を図ることが大切だと考える。」との認識を示されましたが、ここでいう「情報共有を図る」に「必要な」とは、何が「必要」なのか具体な事例をお示しください。

質問【8】 私どもは、「情報共有」に関して、「必要な情報共有」と限定する必要性を感じておりませんが、貴職の考える「必要ではない情報共有」とはどのような事柄なのかを、具体な事例でお示しください。

質問【9】 現在、事故報告書には家族・家庭からの情報記載欄がありませんが、私どもは、真の解決に結びつけていくためには、学校・教育委員会とその家族・地域の情報共有が不可欠であると考えており、家庭情報の記載の必要性を非常に強く感じています。

事故報告書に家族・家庭からの情報記載欄が設けられていない理由・根拠等をお示しください。

質問【10】 既に、事故報告書に家庭情報の記載欄を追加し、学校の認識や情報と併記する改善要望を伝えていますが、この要望に対する貴職の考えをお示しください。

質問【11】 事件直後の調査の実施は、事実・真実を正確に把握し情報を共有する上で非常に重要な作業です。

 私どもは、調査の必要性は子どもたちにも十分に理解出来る範囲の物であると考えています。
 また、「二度とこういうことが起きてはならない。そのために大切な調査です。」との、調査主旨とその重要性を真剣に子どもたちに伝え、事実と真実を把握することが、子どもたちの安全に繋がると考えていますが、貴職の考えをお示しください。



3 親の知る権利について

 親の知る権利がないがしろされ、我が子の身に起きたことを知るために、やむなく裁判を起こしその中で事実の究明をしています。
お互いが最初から情報をきちんと・しっかりと共有出来ていれば殆どの被害者は提訴していません。


質問【12】 貴職は、この現実を認知していますか。

質問【13】 我が子が死んだ時に、学校等での子どもの状況を正確に知るための手続きをお示しください。

質問【14】 「学校・教育委員会とその家族・地域の情報共有」と「親の知る権利」との関連について、貴職の考えをお示しください。

質問【15】 個人情報保護法の目的は「個人情報を大切にし、目的外使用を厳しく制限すること」となっていますので、目的がはっきりしている場合、ましてや親が我が子の身に起こったことを知ることは、個人情報保護の目的からは外れるものではありません。
 私どもは、「学校で起きた事件事故に関する親の知る権利」を法制化する必要があると考えますが、貴職の考えをお示しください。

質問【16】 教育基本法に新設された「学校、家庭及び地域住民等との連携協力(第13条)」では、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚し、相互に連携協力に努めることを規定していますが、私どもは、親の知る権利の担保されない「連携協力」あり得ないと考えています。貴職はこの規定の実現をどのように図っていくのか、施策・取組み等をお示しください。

質問【17】 教育職員に対して定められている服務に関する規定等について、当事者責任に係わる情報の隠蔽・捏造・改ざん等違反行為の懲戒・分限処分等の基準をお示しください。

質問【18】 貴職は、通知・通達等によって教育職員による「隠蔽」について指導等を行なっていますが、教育職員が行った情報の虚偽報告、隠蔽・捏造・改ざん等違反行為の懲戒・分限処分等について、貴職が調査した平成18年度以前の5年度間件数を、年度別、都道府県・政令市別にお示しください。



4 青少年の自殺について

 毎年約600人もの青少年が自殺していますが、その中でいじめ自殺は年間1〜2件しかないという事はあり得ません。


質問【19】 現在の調査方法と結果について、貴職の評価をお示しください。

質問【20】 現在の調査方法が実態を正しく反映する方法である根拠を、お示しください。

質問【21】 「平成18年中における自殺の概要資料(警察庁)」表3の職業別自殺者数に掲載されている、小学生14人、中学生81人、高校生220人について、自殺原因別件数を、都道府県・政令市別にお示しください。



5 学校基本調査について

 86年鹿川君の自殺の時、94年大河内清輝君自殺の時、そして今回出した文部科学省の通知ま内容はほぼ同じでした。
 今回新たに、いじめの定義を変え、今まで調査理由を一つしか選択できなかったアンケートについて複数選択が出来ることになりました。
しかし、それらを変更して数字に変化があったとしても、残念ながらいじめを減らすこととは直結していません。


質問【22】 小手先の見直しなどでは子どもたちの命や心は救えない現状であると考えますが、複数選択の評価と今後の具体的な対応策について併せてお示しください。



6 教育再生会議の提案内容について

 提案された加害者の厳罰化に対して、現場の先生方が脅威を感じています。糾弾や罰則強化の施策推進は、加害行為をしている子どもたちを追い詰め、さらなる加害行為へと発展してしまうため、その子どもたちが学校へ戻ってくる恐怖を先生方は感じており、多くの先生方がこの施策に反対の意向を示しています。


質問【23】 貴職は、この事実を認知していますか。

質問【24】 貴職の考える、罰則等の強化のメリット及びデメリットをお示しください。



7 いじめの件数について

 学校でのアンケートの数値に反し、いじめは減っているどころか増えつづけています。


質問【25】 貴職は、いじめ件数が増加していることを認知していますか。

質問【26】 学校等でのいじめ件数の増減推移について、貴職の考えをお示しください。

質問【27】 学校等でのいじめ件数の増減推移について、貴職が実施してきた諸施策との評価をお示しください。



8 チェックリスト等の効果について

 新たに導入された「いじめ問題への取り組みについてのチェックポイント」の導入によって、その拘束時間の増加は先生方の大きな負担となっています。また、「すべてを検証して正しく書き入れる事は出来ない」との先生方の証言も新聞にも報道されているように、各項目の記載の正確性にも大きな疑問が生じています。
 私どもは、先生方に時間的にも精神的にも負担がかかり、さらに正確な回答が得られないチェックリストの必要性を感じていません。それどころか、先生方が煩雑な事務作業に追われて、生徒と向き合う時間が削られることは本末転倒なことであると考えています。


質問【28】 チェックリスト導入の必要性をお示しください。

質問【29】 チェックリストの導入効果をお示しください。

質問【30】 チェックリスト導入の評価をお示しください。



9 いじめ自殺の調査について

 貴職は、いじめ自殺に係わる調査について、99年度からの7年度間のみしか再調査をしていませんが、98年度に中学生が一人いじめ自殺と認められており、それ以前にも0人や1人という報告が多数あります。
 また、98年度に起きた自殺にも人権擁護委員会から学校が警告を受けた事例やいじめの存在を認めた和解も存在しています。


質問【31】 再調査の期間を99年度以降の7年度間とした根拠をお示しください。

質問【32】 私どもは再調査の期間については、少なくとも86年の鹿川君自殺事件以降の再調査が必要であると考えていますが、貴職の考えをお示しください。



10 いじめや不登校に対する、目標数値の設定について

 先生方は数値内で収めないと学校や自身の評価に響くことを心配するあまり、事実や正確な数値を報告できず、事実を把握することすら困難な現状となっています。


質問【33】 私どもは、事実・真実の把握可能なシステム構築を切望していますが、目標数値設定の意義をお示しください。

質問【34】 目標数値の導入効果をお示しください。

質問【35】 目標数値の導入に対する評価をお示しください。

質問【36】 私どもは目標数値の設定は不要であると考えていますが、貴職の考えをお示しください。



11 いじめに関するアンケート調査について

 貴職が発表している調査結果が現実と大きく乖離し、実態をまったく反映していない事実があります
 調査の結果として、平成16年度一校あたりのいじめ発生件数は、小学校0.2件、中学校1.3件、高校0.5件と発表しています。
 NPO法人ジェントルハートプロジェクトは全国約13、000名の子どもたちにいじめの有無についてアンケート調査を実施したところ、いじめがあると答えた小学生は41.4%、中学生33.8%、高校生19.6%
  「どちらとも言えない」と回答した数を合わせると、小学生65%、中学生63%、高校生46.3%となっています。


質問【37】 いじめに関するアンケート調査の有効性について、根拠をお示しください。

質問【38】 いじめに関するアンケート調査に対する評価をお示しください。

質問【39】 私どもは実態からあまりに乖離したアンケート調査の実施は不要であると考えていますが、貴職の考えをお示しください。



12 要望書・回答について

質問【40】 井上哲士議員から要望書をどう受け止めるのかとの質問(06年7月29日)があり、大臣は「これはシステムの問題ではない」と答えられましたが、システムの問題でなければ、何が問題だと思われますか。

問題内容とその理由をお示しください。

質問【41】 「隠蔽してはいけない」と大臣がいくらマスコミを通じて声明を出しても、何度、通達を出しても、相変わらず全国各地の学校で隠蔽が繰り返されていますが、貴職はこの実態についてどのように考えているかお示しください。

                                                                                                   以 上


賛同者名(省略)
 解 説 【※この部分はあくまで、武田個人の書き込みです】 →目次へ戻る

 文部科学省と法務省人権擁護局から、回答をいただきました。
 しかし、カルタとりをしたとき、私達が提出した要望書をどのように受けとるのかの答えを探せといわれて、この二つの回答を選びとることができるでしょうか。結びつけることができるでしょうか。

 私たちは、実現不可能なことは要望書に入れていないつもりです。できるだけ具体的に、可能なことだけを提言しました。教育三法が通ってしまうことを前提に、それでもその中でできることをと考えました。
 もちろん、全部が全部、通るとは思いません。しかし、これはできる、これはできないという回答が来ることを期待していました。ひとつでも通れば現状を変える第一歩になるのではないかと、様々な提案をしてきました。

 文部科学省は言葉でだけは「今回のご提案の内容と主旨をしっかり受け止め」「教育委員会等への指導に努め、出来る限り善処してまいりたい」と書いているものの、具体的なことは何ひとつ書いていません。本気で受け止めてもらったという実感はわきません。

 そして法務省は、「私達の出した要望書に対して、今後どう取り組んでくれるのか」ではなく、「法務省は現在どのような取組をしているのか」のアピールになっています。

 学校事件・事故が起きたときに、当事者や親が学校や教育委員会に出した要望書なり、質問書が、まともに取り上げられることもなく、紋切り型の文書ひとつで拒絶されるのと似ています。

 しかし、私たちはこれくらいのことではあきらめません。すでに被害にあった子どもたち、親たちのためだけでなく、これからの被害を最小限に食い止めるための要望書だと思うからです。正しい情報の共有は、事件・事故を防ぐためにも、とても大切な要素であると思うからです。


 
 文部科学省初等中等教育局児童生徒課長の回答 →目次へ戻る

            特定非営利活動法人ジェントルハートプロジェクト 様

 ご要望の件について、ご回答申し上げます。
 いじめを苦にした自殺など、子どもをめぐる様々な事件・事故が依然として起きていることについて、私どもとしても非常に心を痛めているところです。
 いじめの問題については、その件数が多いか・少ないかの問題以上に、これが生じた際に、問題を隠さず、学校・教育委員会と家庭・地域が連携して迅速に対応し、真の解決に結びつけることができたかが重要となるものです。その際、保護者の方々と必要な情報共有を図ることが大切だと考えています。
 学校と家庭、地域の連携の下で、保護者の方々の信頼が得られるような適切な対応が、教育現場においてなされるよう、今回のご提案の内容と主旨をしっかり受け止め、文部科学省としても今後も教育委員会等への指導に努め、出来る限り善処してまいりたいと考えています。
 何卒ご理解の程宜しくお願い申し上げます。


平成19年6月8日

                        文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
                                     木 岡 保 雅
 
 法務省人権擁護局の回答 →目次へ戻る
平成19年5月31日
法務省人権擁護局

            「いじめ」問題に対する法務省人権擁護機関の取組について


 法務省の人権擁護機関では、従来から、「いじめ」の問題は心身とも健全に育成されるべき子どもの人権を著しく踏みにじる行為であり、見過ごすことのできない問題であるとの観点から、様々な啓発活動や、個人の人権侵犯事件への救済手続において、「いじめ」問題に積極的に取り組んでいる。
 具体的には、人権擁護委員の中から指名した「子どもの人権専門委員」を中心に、全国の小中学校を対象として、「人権教室」、「人権の花運動」等を実施している。また、人権問題についての作文を書くことにより、豊かな人権感覚を見につけてもらうことを目的に「全国中学生人権作文コンテスト」を実施している。
 さらに、子どもたちがより一層相談しやすい環境を整備するため、本年2月22日より次のとおり、「『いじめ』問題対策事業」を実施している。

 @「子どもの人権SOSミニレター」の配布
 身近な人にも相談できずにいる子どもたちの「いじめ」などに関する悩みごとを把握し、子どもの人権問題の解決に当たることを目的として、悩みごとを書いて投函できる「子どもの人SOSミニレター」(便せん兼封筒。送料不要。返信のあて先指定可。手紙又は電話の選択可。)を、全国人権擁護委員会連合会と共催で配布。

 A「子どもの人権110番」のフリーダイヤル化
 「いじめ」問題を始めとする子どもの人権問題について、子どもが安心して、気軽に相談できるよう、専用相談電話「子どもの人権110番」についてフリーダイヤル(0120−007−110)を導入。

 Bインターネットによる人権相談受付システムの導入
 インターネットが国民生活に普及している現状を踏まえて、人権問題に関する相談を24時間365日受け付けるシステムを導入。

 今後とも、これらの活動を通じて、文部科学省等の関係行政機関と連携し、「いじめ」問題の解消のために努力していきたいと考えている。



(参考)

○過去B年間に、法務省の人権機関が新たに救済手続を開始した、学校におけて「いじめ」に関する人権侵犯事件の件数。

 平成16年 584件
 平成17年 716件
 平成18年 973件


○「いじめ」問題対策事業における相談件数の内訳(本年2月22日〜3月30日)

 1 「子どもの人権SOSミニレター」による相談件数
    8,764通(うち「いじめ」に関するものは2,709通)

 2 フリーダイヤル化された「子どもの人権110番」による相談件数
    3,165件(うち「いじめ」に関するものは879件)

 3 インターネットによる人権相談受付システムによる相談件数
    235件(うち「いじめ」に関するものは39件)

○「いじめ」問題対策事業における人権侵犯事件への切替件数(本年2月22日〜3月30日)

 1 「子どもの人権SOSミニレター」を端緒とするもの
    223件(うち「いじめ」に関するものは179件)

 2 フリーダイヤル化された「子どもの人権110番」を端緒とするもの
    150件(うち「いじめ」に関するものは93件)

 3 インターネットによる人権相談を端緒とするもの
    4件(うち「いじめ」に関するものは1件)


 
 解 説 【※この部分はあくまで、武田個人の書き込みです】 →目次へ戻る

 2007年5月25日(金)、いじめ自殺を含めた学校事故・事件の被害者や遺族とともに、国をはじめ、文部科学省、各政党あてに、「当事者や親の知る権利」を認めてほしいという内容の要望書を提出しに行きました。

 短期間のお願いにもかかわらず、賛同者は最終的に80人になりました(サイトに載せる許可を頂いていませんでしたので、割愛させていただいています)。
 当日は、雨のなかを北は北海道から、南は福岡県からも遺族の参加があり、総勢11人(途中合流を含む)で各党を回って、要望書を提出してきました(もっと参加したい旨のお申し出をいただいていましたが、訪問する先で人数が多いと困るので10人程度にしてほしいと要望があり、絞らせていただきました)。

 今回の要望書は、とくに民主党の千葉景子議員のお力添えで、大臣クラスにも直接お会いして、手渡すことができました。また、文部科学省や法務省に文書をもって回答をいただけるよう、口添えをしていただくこともできました。

 なお、当初、この要望書には代表者をもうけない予定でいましたが、議員さんより、この要望書の問い合せ先はと聞かれ、急遽、当日の参加者の合意のもとに、NPO法人ジェントルハートプロジェクト並びに学校事故・事件当事者と遺族有志が提出という形をとらせていただくことにし、ジェントルハートプロジェクトを連絡先にさせていただきました。

 なお、昨年来、いじめ自殺が非常に注目を浴びていることで、私たちは文書でも、口頭でも、これは子どもをいじめ自殺で亡くした親だけでなく、あらゆる学校事故・事件で子どもを亡くした親にも共通すること、生きている当事者でさえ、情報がもたらされなかったり、うその情報があげられて傷ついていること、事件事故の前に情報があれば、防げたものもあることを繰り返し話しましたが、残念ながら、各議員さんも、マスコミ関係者もすべて、「いじめ自殺の遺族」の要望と一括りにされてしまいました。



 その後の動きとしては、5月29日に、共産党の井上哲士議員が要望書をどう受け止めるのかと、かなりつっこんだ質問を文部科学大臣にしてくださいました。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0106/166/16605290061015a.html
 しかし、文部科学大臣の回答はまったくかみ合わず、「システムの問題ではない」と何度も言い切っています。

 この辺りは、全く学校の対応と同じです。亡くなった子どもの気持ち、遺族の気持ちにまるで寄り添うことなく、原因を被害者の家庭にもっていってしまう。どれだけ子どもたちの命が失われようと自分たちは変わろうとはしません。むしろ、子どもの死さえ、自分たちのやりたいこと(教育基本法や教育三法の改訂など)に利用してしまいます。


 
 2007年5月25日提出した要望書 →目次へ戻る

                                              平成十九年五月二十五日

内閣総理大臣 安倍晋三 殿

 

要 望 書

 

[主旨]

子どもの心と命にかかわる事件・事故が多発しています。とくに昨年は、いじめ自殺でたくさんの大切な命が失われました。子どもたちを守るために実効性のある対策を立てることが大人としての急務です。

再発防止策を立てるために、まずしなければならないことは、何があったか事実を知ることです。事実を調査したうえで、どこに問題があったか原因を分析し、その問題を解決するために具体的な対策を立てることが必要です。

しかし、現状では、その事実認定があまりにもあいまいで、学校側の認識と被害者や遺族の認識には大きな隔たりがあります。にもかかわらず、双方の情報や意見を摺り合わせるという基本的な作業さえなされていません。

事件・事故の教訓が生かされることなく、同じことが繰り返し起きています。

被害者や遺族がたいへん辛い思いをしたり、加害者が反省する機会が奪われたり、憶測が飛び交うなかでたくさんの子どもたちが傷つくなどの二次被害も起きています。

国連は、1985年に「犯罪およびパワー濫用の被害者のための司法の基本原則宣言」(国連被害者人権宣言)を採択しました。常磐大学の犯罪被害者学第一任者である諸澤英道教授は、岩波ブックレット「被害者支援を創る」のなかで、数ある被害者の権利のなかでいちばん大切なのは「知る権利」だと書いています。

 被害者や遺族の立ち直りのプロセスにおいて、事実を正確に知るということは、必要不可欠な要件です。とくに学校や学校のなかの人間関係で子どもを亡くした親にとっては、安全だと信じてわが子を預けていた学校で、自分の目の届かないところで、子どもが亡くなっているのです。なぜ、わが子が被害にあわなければならなかったのか、どのような経緯で、どうような思いを抱き、最後はどのような状況下で亡くなったか、せめて事実を知りたいと思うのは、当たり前の感情ではないでしょうか。

学校、もしくは家庭だけの偏った情報では事実の究明はできません。事件直後に広く情報を収集し、統合していく作業が必要です。とくに、当事者である子どもが亡くなった場合、周囲の子どもたちの調査協力は不可欠です。

人権への配慮は当然、必要です。しかし、たとえば個人情報保護法の目的は「個人情報を大切にし目的外使用を厳しく制限すること」です。「事件・事故の再発防止」の目的に使われることは、個人情報をおろそかにすることにはなりません。生命を守ることは何ものにも優先されるべきことです。

そして、被害者の親にとって、周囲にいた子どもたち、教師たちが持つ情報は、他人の情報ではなく、わが子の情報です。親が知りたいのは他人のことではなく、「わが子」につながる情報です。それなしには「わが子」のことを知り得ないのです。

被害者や遺族は、事件・事故によって大きな権利侵害を受けています。なかでも、生命が奪われるということは最大の人権侵害です。個人情報やプライバシーが侵されることよりずっと上位にある人権の侵害です。バランス感覚からいっても、大きなマイナスを背負わされた被害者や遺族の要望こそが優先されるべきではないでしょうか。もっと、当事者たちが何を望んでいるのかに耳を傾けてください。

 

 

[要望]

 

事件・事故が発生する前に

いじめや事件・事故は児童生徒の教育を受ける権利を侵害し、生命の安全を脅かします。文部科学省は、通知・通達文でことあるごとに、学校・家庭・地域の連携をうたっていますが、子どもを守るために情報の共有は欠かせません。

事件でも事故でも、子どもの心や体を傷つけるできごとが発生した場合、あるいは、予兆となるできごとが発生した場合、即刻、教師間や保護者と情報を共有し、連携して対応してください

子どもに関する情報を学校と親とで共有することの重要性について再認識し、学校・教師はどのようなときに保護者と情報を共有するべきかのガイドライン作成して、周知徹底をお願いします。

 

事件・事故が発生した時は

学校に係わる場所や人間関係のなかで、不幸にして、自殺や事件・事故が発生したときは、徹底した事実調査をお願いします。子どもたちは「命の大切さ」を大人の言葉で判断するのではなく、どれくらい大人たちが真剣に動くのかをみて感じ取ります。

 

事実調査の方法については、学校の調査だけでなく、被害者や遺族の意見を重視してください。

被害者に何があったのかの主な情報は、家庭と児童・生徒、教職員がもっています。時間がたつと記憶があいまいになったり、周囲に同調する動きが出てきます。子どもたちへの調査は、心の傷に配慮するなど、慎重さが必要ですが、学校・教師の素人判断で勝手に子どもたちの思いの吐き出しを封じるようなことはしないでください。

 

また、生徒からあがってきた情報は学校・教師や教育委員会が独占してよいものではありません。最初から、遺族に公開することを前提として、子どもたちに事実調査をしてください。これによって、児童生徒に書かせた作文やアンケートをめぐって、学校と遺族が対立することがなくなります。

被害者・遺族と学校はけっして対立するものではなく、協力して事実を調査し、事件・事故防止にむけて真摯に取り組んでいることを児童生徒に示すことができれば、子どもたちの協力は得られやすくなります。そして、それこそが、本来の姿であるべきではないでしょうか。

 

事実調査の経過や結果を第一に被害者や遺族、加害者として名前のあがった本人や保護者など、当事者に報告してください。

第三者機関や専門家との連携がうたわれていますが、第一に尊重され、情報提供を受けるべきは当事者だと思います。それが機能しないときや、原因分析や再発防止に向けての意見を募る段階で、当事者や遺族の許可を得て、第三者に情報提供してください。

 

被害を被った当事者が自ら動かなくてもすむように、学校・教育委員会は率先して情報を提供してください。今もっている情報について開示し、どのような方法で調査・報告を行うのか、いつ、どこにあげるのか、流れを説明してください。事件・事故の直後は被害者や遺族は混乱しています。口頭だけではなく文書でも行うなど、被害者・遺族の要望に沿った形の説明や報告をお願いします。

 

どうしても、当事者と学校との認識に違いが生じる場合、事故報告書には必ず、遺族を含めた当事者の意見を併記するよう、新たな事故報告書のフォーマットを作成してください。

発生した問題に対する家庭の認識や情報の記載欄を新設し、学校の認識や情報と併記すれば、情報の偏りを防ぎ、連携を確保する事ができます。

また、後日、事実と思われることが出てきた場合には、期限を設けることなく、訂正したり、追記したりすることが、学校・当事者双方においてできるようしてください。いじめが疑われる自殺は再調査した7年間だけではありません。それ以前の再調査を行い、より正確な情報収集に常に心がけるようしてください。

 

得られた情報の公開にあたっては、どこまでを公開するのかを学校と被害者や遺族が協議して決めてください。情報の公開によって、被害者・遺族が追いつめられるような二次被害の出ないように十分配慮してください。

 

国、文部科学省、教育委員会、学校は二度と同じ事件・事故が起こらないように、プライバシーに配慮したうえで情報の周知徹底をはかってください。

 

原因分析をもとに、責任の所在を明らかにし、適切な処分を行ってください。

文部科学省は通知・通達などで、「隠ぺい」を強くいさめる文書を出していますが、事件・事故を起こしてしまったこと以上に、事実を隠ぺいしたり、虚偽の報告をしたことに高いペナルティを科すようにすれば、より真実が出てきやすくなると思われます。

関係者の処分については、被害者や遺族の要望を入れるようにしてください。そうすれば、事件直後から当事者の存在を無視した対応はとりにくくなります。処分結果の報告なども当事者に積極的に情報提供するようにしてください。

また、正しい情報が収集されるよう、目標数値の設定をやめてください現場の先生は、目標数値内に収めなければ様々な評価に響くので、本当の数字が書けず、今のシステムでは正しい調査結果は望めません。

 

 

 [要望実現後の利点]

    被害者・遺族の多くは、真実を知るために仕方なく民事裁判を起こしています。裁判を起こさなくとも事実が明らかになり、責任の所在がはっきりして適切な処分や補償が行われ、再発防止策がきちんととられるのであれば、裁判を減らすことができます。

    加害行為をした人間に対し、反省を促し正しく生き直す指導ができます。

    子どもたちは大人たちの真剣な対応から、不正義が許されない事、命の大切さを実感することができ、「命の教育」「生きた道徳教育」ができます。

    事件・事故の教訓をもとに、二度と同じ過ちを繰り返さないための対策を立てることが出来ます。教訓が共有されれば、防止策が全国に広がります。

    早期解決が被害の深刻化を防ぎ、事件・事故に係わった人の心の回復が早まります。

 

以上の理由により、直ちに、学校、教育委員会、家庭、地域が共に情報を共有し、痛ましい事件・事故がこれ以上起きない社会になる事を強く望みます。

 

遺族の思い

耳をおおいたい事実があるかもしれませんので、今後生きていく上では知らない方が楽かもしれません。しかし、遺族となった親にとりましては、せめて我が子の身に起きた真実を知ってやりたいのです。

命が戻ってこないのなら、せめて真実を知り心から慰め、その死が無駄にならないよう、二度と同じ事を繰り返して欲しくないのです。

残念ながら、亡くなった我が子に一番近い所に居るはずの親が、個人情報の名の下で行われている偏った情報管理の為に、真実から一番遠くに追いやられているのが現実です。

学校と教育委員会が持っている情報を、当の両親が知る事が出来ないのです。

我が子の死に関わる事実が、個人情報保護の傘下に入ってしまうという矛盾が起きています。せめて、死ぬほど辛かった事とは何だったのかを学校と一緒に探したいだけです。

 わが子の死の理由を親にも教えてください。


 80人が連名(省略)

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