現在位置:asahi.com>ビジネス> 経済気象台

日本モデルの今昔

2008年05月22日

 1991年にバブルが崩壊する以前には、日本経済は輝けるサクセスストーリーに包まれ世界のお手本であった。第2次大戦後のあの灰燼(かいじん)に帰した国土から不死鳥のようによみがえり、1960年代末には、当時アメリカに次ぐ資本主義経済第2位の経済規模までに成長した。この間の高度成長は、時には“エコノミック・アニマル”と称され、世界の注目を浴びたものだ。70年代の2度にわたる石油危機もうまく切り抜け、80年代には再度、“ジャパン・アズ・ナンバーワン”として、経済大国の地位を確立した。

 この間の成功が、日本モデルとして経済界でのみならず、学界でも国際的に高く評価されていた。終身雇用、年功序列、会社組合などの労働慣行、メーンバンク制、高い貯蓄率、海外からの技術導入、さらにはトヨタのカンバン方式など、枚挙のいとまもない。私なども国際会議に出席すれば必ず日本のことが話題となり、日本のこのような経験を語り得々としたものだ。日本モデルはまさに、「成功のモデル」であった。

 ところが、時代はかわりバブル崩壊後、いつまでたっても往時の面影を見せない日本経済は、世界からいまや無視されるか見放されている。先日もある国際会議での報告を聞いたとき、国際比較の図から日本のデータが抜け落ちているのを見て愕然(がくぜん)とした。今日、世界の関心は中国に向いていることは間違いない。2月末に出た「エコノミスト」誌で、“Japain”と揶揄(やゆ)されたが、バブル崩壊以降の低迷ぶりから学べるものは何かということである。日本モデルはいまや「失敗のモデル」となってしまったのだ。この苦境から抜け出すのは、容易ではあるまい。(安曇野)

PR情報

このページのトップに戻る