オバマ米上院議員が、民主党の大統領候補指名に必要な一般代議員数を獲得し事実上の勝利宣言を行った。分断されたアメリカの再生を訴えるオバマ候補。まずは党内結束の手腕が問われる。
二十日行われた予備選挙で、オバマ候補はケンタッキー州では敗れたもののオレゴン州で勝利し、一般代議員数で党候補指名に必要とされる過半数を達成した。アイオワ州デモインで開いた集会では「指名に手が届く寸前まで来た」と述べ事実上の勝利宣言を行った。
一方のクリントン上院議員は、「すべての州有権者に投票の権利がある」として戦い継続を表明した。予備選は来月三日まであと三つ残しており、なお選挙戦は続くことになる。
低迷するブッシュ現政権を尻目に、今回の米大統領選挙がここまでの盛り上がりと国際的関心を呼び起こしているのは、実現すれば史上初の黒人大統領となるオバマ氏と、史上初の女性大統領となるクリントン候補との一騎打ちに負うところが大きい。
「変革」と「経験」の対決は終盤にかけて政策論争を離れて互いの中傷合戦の様相を深めた。オバマ氏を支持する黒人、高学歴白人、若者層と、クリントン氏を支持する女性、白人労働層、ラティーノ(ヒスパニック)が党内を二分する事態になっている。
民主党には、党内分裂から大統領選挙を取りこぼした苦い歴史的経験がある。
キング牧師暗殺、ロバート・ケネディ上院議員暗殺と重大事件が相次いだ一九六八年。ベトナム戦争を背景に争われた選挙戦では、民主党がマクガバン、マッカーシー、ハンフリーの三候補の間で割れ、党内修復を図れないまま共和党ニクソン氏に敗れた。
七二年のマクガバン対ニクソンの戦いでも同様の党内亀裂が見られニクソン再選を許した。マクガバン元上院議員自身、最近の米紙への寄稿で当時を振り返り党内団結を呼び掛けている。
修復の兆しは見られる。オバマ候補、クリントン候補ともこの日の演説を脳疾患で入院したエドワード・ケネディ上院議員の政治家としての賛辞で始め、党内結束に言及したのはその一例だ。
オバマ候補は二〇〇四年党大会での基調演説以来、分断したアメリカの再生と統一を訴えてきた。身内の党内結束に向けていかなる手腕を発揮できるか。党指名を確定する前の最初の試練と言える。
この記事を印刷する