米大統領選挙の民主党候補指名争いは、オバマ上院議員が一般代議員数の過半数を獲得し、共和党のマケイン上院議員との間で11月の一般投票に向け選挙戦が展開される構図が固まった。アフリカ系米国人の大統領候補を擁した民主党の戦いは、米政治史上の実験となる。
オバマ氏は20日、アイオワ州で「大統領候補が手の届くところまで来た」と述べた。戦いを続けるヒラリー・クリントン上院議員に配慮した間接的な勝利宣言とされる。
いまだに決着しない民主党の指名候補争いは、11月の一般投票にどう影響するのか。否定的影響が肯定的影響を上回るとする声が現状では強い。
否定的影響とは何か。クリントン陣営がこれまで再三にわたって訴えてきた外交・安全保障をはじめとするオバマ氏の経験不足を指摘する批判を、共和党のマケイン陣営はそのまま使える。
民主党内にできた亀裂が修復できるかどうかも一般投票に影響するだろう。クリントン氏を支持してきた豊かでなく、高学歴でもない白人層がオバマ氏支持に向かうかどうかは注目を要する。
かつてレーガン大統領はレーガン・デモクラットと呼ばれた民主党支持者の票を吸収した。マケイン・デモクラットが現れれば、オバマ氏には不利になる。
激しい予備選が民主党のすそ野を広げたとする肯定的影響を指摘する声もある。党指導部とは異なり、草の根の民主党支持者は接戦を楽しんでいる傾向もあり、6割以上がクリントン氏の戦い継続を望んでいるとする調査結果もある。
11月の結果を予想するのは時期尚早だが、ワシントン・ポストとABCニュースが12日に公表した共同世論調査によると、ブッシュ政権に対する厳しい評価の割には共和党のマケイン氏の健闘が目立つ。
マケイン氏と民主党のオバマ氏のどちらを支持するかとの質問には、44%がマケイン氏、51%がオバマ氏と回答しており、マケイン氏とクリントン氏では46%がマケイン氏、49%がクリントン氏と答えている。ともに民主党側の支持率が高いが、差は小さい。
イラク戦争が争点となった4年前とは違い、有権者の関心事は経済・雇用問題とする結果も出ている。景気の行方が心配されるなかで、激しい予備選挙を経てアフリカ系米国人の候補を初めて擁立する民主党の選択は、結果にかかわらず、歴史を刻むことになる。