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社説2 「強い邦銀」へ道なお遠し(5/22)

 「強い銀行」への道はなお遠い。出そろった大手銀行6グループの2008年3月期決算を見る限り、そんな印象が否めない。

 大手6グループの連結純利益は合計で2期連続の減益となった。個別に見ると、三井住友を除く五グループが減益決算だ。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)に関連した証券化商品の損失が拡大したことが響いた。

 サブプライムローン関連の損失はある意味では一時的なものであり、欧米の銀行と比べれば傷も浅い。だが、決算からは経営基盤の強化につながる有望な収益源がなかなかみつからない姿も浮き彫りになった。

 各行が力を入れてきた投資信託の窓口販売は株安などを背景に低迷。企業向け業務の柱の1つになりつつあったシンジケートローン(協調融資)も、企業の合併・買収の動きが停滞したのを背景に落ち込んだ。

 先行きも決して明るくない。貸し出し利ざやの拡大につながる利上げは、景気が足踏みする中では難しい。原材料価格の上昇を背景に中小企業の経営は悪化しており、不良債権が再び増加する恐れもある。

 だからといって、守りの経営に戻ればいいわけではない。実際、富裕層向けのプライベートバンキング強化などメガバンクを中心に個人向け業務拡充の動きは続いている。

 だが、その場合に重要なのは、それぞれの銀行の特徴を生かした独自のサービスで競うことだ。昔ながらの横並びで、提供するサービスの内容は似たり寄ったり、となるようでは収益拡大にはつながらない。

 欧米の主要銀行がサブプライムローン関連の損失処理で身動きが取れない状況は、3メガバンクにとっては大きなチャンスだ。

 アジア展開を急ぐ日系企業のニーズに合わせ、アジアに強い金融機関を目指すのは当然だが、企業経営のグローバル化が進む中で、それだけでは限界もある。広い視野に立った海外展開が求められよう。

 大手銀行が企業の資金ニーズや個人の金融資産活用に役立つ質の高い金融サービスを提供することは、日本経済の活性化につながる。そのために、各行には大いなる知恵の競い合いをしてもらいたい。

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