大型サイクロンに直撃されたミャンマーでは、食料不足や感染症などが拡大する懸念が深刻化している。本格的な人道支援が急がれる。
ミャンマー軍事政権は、サイクロン被災による死者と行方不明者は計十三万人を超えたと発表した。サイクロン被害としては、一九九一年にバングラデシュで約十四万人が死亡して以来の災禍である。国連は深刻な被災者は百六十万―二百五十万人と推定している。
被災地では遺体の収容が進まず、川などに流れてしまった遺体も多いという。食料や水、医薬品などの支援物資も行き渡らず、被災者は困窮している。衛生状態の極度な悪化が懸念され、住む家もなく逃げ場のない人々には、飢えと疫病の二次災害の危機が迫っている。
国際的な非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン」の調査によると、被災地では推定三万人の乳幼児が深刻な栄養失調状態に陥っており、うち数千人が死と隣り合わせの状況にあるといわれる。悲惨さに胸が締め付けられる。
国際機関や各国による支援申し出に対し、軍政は「物資は受け取るが人的支援は拒否する」との姿勢を示してきた。わずかに受け入れたのは、インド、タイなど友好国の少数の医療関係者ぐらいだ。しかも、被災者救済を後回しにする形で、軍政主導で起草した新憲法案の是非を問う国民投票を強行した。二十四日には被災地でも行うというのだから信じられない。
本格的な人的支援を拒む軍政の対応に、国連の潘基文事務総長は「受け入れ難い対応の遅さに、深い懸念と大いなる欲求不満を表したい」と強く批判した。国民が苦しみにあえぐ非常時に、一国の政権が「人道に対する罪」を犯しているのである。当然の批判だろう。
軍政もようやく、二十五日に東南アジア諸国連合(ASEAN)と国連を中心とした国際支援会議をミャンマーで開くことに合意した。
国際社会からの支援物資や要員の本格的受け入れを目指し、ASEANが調整に当たることになる。ただ、欧米からの支援受け入れにつながるかどうか、実効性は不透明だ。事態打開のため、国連の潘事務総長も二十一日からミャンマーを訪問する。
被災者の救済は一刻を争う。国連は人道支援の先頭に立って、あらゆる手だてを講じる必要があろう。日本政府もミャンマーに強い影響力を持つ中国に働き掛けるなど、積極的に行動すべきである。
子どもが公園の遊具から転落したり自宅で転倒したりして死亡する事故が後を絶たないため、経済産業省は、事故情報を集約したインターネット上のサイト「キッズデザインの輪」を開設した。保護者に注意を喚起する一方、メーカーにも再発防止を促す。
ホームページでは、「寝返りができる」「おすわり・はいはいができる」など五つの発達段階に応じて発生する事故について、コンピューターグラフィックスなどの動画を使って分かりやすく再現している。事故をデータベース化し、性別や年齢、時間帯などで検索も可能だ。
子どもが事故に遭った場合、病院の医師や看護師が保護者から事故の状況を聞き、経産省に報告する協力の枠組みを活用する。同省は収集した事故情報に基づいて原因を究明し、防止に役立つ情報を保護者やメーカーを含め社会へ発信する。
子どもの死亡原因は「不慮の事故」が圧倒的に多いのが特徴だ。人口動態統計(二〇〇六年)では、一―四歳児と五―九歳児の死因の一位、十―十四歳児では二位を占めている。
同省などが国立成育医療センター(東京)で〇六年十一月から今年二月まで治療した子どもの事故二千三百件を分析したところ転倒・転落が54%を占め、衝突、誤飲、やけどと続く。
製品別では自転車、いす、遊具などが多かった。滑り台のはしごで転倒し幼児が頭をコンクリートの台座に強打したケースでは、台座をゴムにすれば重い事故とならなかったという指摘も出ている。
子どもの事故は、同じパターンで繰り返されることが分かってきた。不慮の事故を減らすには事故情報を関係者で共有することが重要だ。安全知識を社会で共有したい。
(2008年5月21日掲載)