◎大量採用の教員試験 模擬授業の比重高めては
石川県教委が来春採用する公立学校教員数は今年より五十五人多い二百五十人程度とな
り、今後、教員の大量退職に伴う採用増の時代を迎えることになる。倍率が下がれば質の高い人材確保が厳しくなり、適性を見極める試験の中身も問われることになろう。石川県は全国に先駆け、二〇〇五年度採用から受験者全員に模擬授業を課しているが、配点を工夫するなど合否判断における比重を高めてもよいのではないか。
文部科学省は大学の教職課程に従来の教育実習とは別に、模擬授業を取り入れた「教職
実践演習」を新設する方針を固め、養成段階から「教える力」を重視する流れが強まっている。採用試験の二次選考で模擬授業を取り入れている富山県でも工夫の余地があろう。
石川県の教員採用試験では、従来のグループ討論に代わって模擬授業が導入された。受
験生は教壇に立っていることを想定し、授業を展開する。試験官は授業の組み立てや子どもを引きつける力、声の出し方などを総合評価する。
知識が豊富であることと、それを子どもたちに伝え、理解させる力は必ずしも一致しな
い。理科嫌いを減らすにしても、知識以上に問われるのは学びの意欲や関心を引き出す能力である。教員は新規採用後、即戦力として教壇に立たなくてはならない。模擬授業はペーパーテストや面接では分からない教員としての適性や力量、熱意を見定めるうえで格好の判断材料といえる。
県の教員採用見込み数が二百人を超えるのは一九九一年度以来となり、定年退職者はピ
ークを迎える十二年後には四百人規模と推定され、今後も採用増が続くとみられる。一方、東京都、大阪府などでは公立学校の採用倍率が三倍を切り、地方で採用説明会や試験を実施する動きが出ている。大都市部と地方の教員争奪戦は激しくなることが予想され、採用試験にも一層の工夫が求められる。
むろん「教える力」は教員になってからも伸ばす努力がいる。県教委は「優秀教員」の
表彰制度を設けているが、そうした「スーパー教員」に学ぶなど、教員研修も含めてノウハウを継承できる仕組みを充実させてほしい。
◎G8環境相会合 もっと科学技術に目を
七月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)では、地球温暖化対策の京都議定書に
続く新たな枠組みづくりの推進も大きなテーマとなる。その地ならしとして二十四日から三日間、神戸市で「G8(主要八カ国)環境相会合」が開かれる。
地球上の多様な生物の保護や、資源の有効利用が環境相会合の主要テーマのようだが、
それだけでは不十分だ。主張を異にする各国を協調させる道を見いだすためには温暖化ガスを効果的に減らす科学技術にもっと目を向けてほしい。洞爺湖サミットに向けて来月十五日には沖縄で科学技術相会合が開かれるが、わずか一日だ。環境相会合は三日間もある。科学技術にも時間を割いてもらいたいものである。
地球に優しいエネルギーの開発と利用を追い求めている科学者によると、「太陽電池」
「リチウムイオン電池」「電気自動車」「水素をエネルギー源とする製鉄」などの技術が普及すれば、二酸化炭素の95%が削減できるという。
京都議定書後の新たな枠組みは、来年デンマークで開かれる国連気候変動枠組み条約締
約国会議(COP15)で採択されることになっている。それへの重要な節目となるのが洞爺湖サミットだ。
先に「クールアース構想」と、産業など分野ごとに積み上げて国別の削減目標を定める
参考にするとの「セクター別アプローチ」を発表した福田康夫首相は、六月中にも二〇五〇年までに温暖化ガスを一九九〇年比で60―70%削減するという意欲的なビジョンを打ち出すといわれている。
新たな枠組みには京都議定書から途中で脱退した米国やオーストラリアが参加するほか
、やがて米国を抜いて世界一の温暖化ガス排出国になるといわれる中国やインドなども削減に取り組む意向だ。が、これはいわば総論の次元の話であり、国別の排出枠を決める各論となると、足並みがそろうとは限らない。
各国がそれぞれの国益を超えて協調するためには技術の開発と利用や、技術移転がどう
しても必要である。