「仏壇に線香あげられるのはあなた」　夫嘱託殺人で“温情”執行猶予判決

　「安雄さんの仏壇にお線香をあげたりできるのはあなた。安雄さんの分まで生きて、お子さん、お孫さんを大切にしてほしい」。水戸地裁で２１日、嘱託殺人事件の判決公判があった。小野裕信裁判官は横田チヨ被告（７７）に懲役３年、執行猶予５年（求刑懲役３年）を言い渡した後、静かに言葉をかけた。

　判決で、小野裁判官は「周囲の者に援助や経済的支援を重ねて求めることもできたのに十分にしなかった。思慮を欠いた短絡的な犯行」と指摘。「老老介護の家庭に与えた影響は軽視できない」と断罪した。

　一方で「介護による多大な精神的、肉体的負担と経済的苦境が重なり将来を悲観した突発的犯行」などと、情状酌量した。

　チヨ被告の次男（４７）は「母の体が心配。おかえりなさいと言ってあげたい」と言葉少なに法廷を後にした。

　判決などによると、チヨ被告は、寝たきりだった夫、安雄さん＝当時（７７）＝に「殺してくろ」などと頼まれ、今年２月２４日、茨城県筑西市蓮沼の自宅で、眠っている安雄さんののどを包丁で刺し殺害。自らの首も刺したが一命を取り留めた。