日本医師会は5月21日の記者会見で、財政制度等審議会の財政構造改革部会で配布された財務省の資料「医療制度の現状と課題」などについて、改めて反論した。
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日医の中川俊夫常任理事はまず、大きな問題として、(1)病院と診療所の違い、格差について(2)保険免責制(3)医療費抑制─の3点を挙げた。
(1)について、再診料や特定疾患管理料が病院と診療所で差があることは「病院は入院、診療所は外来という機能分担の下での差であり、単純に個々の点数を比較して病院と診療所の対立に持ち込むべきではない」とした。
(2)に対しては、「保険免責制は医療費が小さいほど患者負担割合が高くなる。その結果、受診抑制や保険料不払いの増加の可能性がある」と批判した。
また、財務省資料に「高齢者世帯は所得面において平均的には他の年齢層と遜色(そんしょく)ない所得を得ている」とあることに反論。世帯人員一人当たりの所得金額の分布を示した上で、「高所得者も確かにいるが、高齢になるにつれ低所得者が急激に増加する。単純に平均で比較することはできない」とした。
(3)では、財務省資料の「公的医療費の対GDP(国内総生産)比はOECD(経済協力開発機構)平均を上回っている」との考え方を批判。「順位は真ん中にすぎず、メディケアとメディケイドしかない米国よりも低い」と指摘した。さらに、「地域医療の崩壊は、医療費抑制政策が原因であることは明らか。社会保障費の自然増に対する年2200億円の国庫負担削減について、撤廃を求める」と強く訴えた。
質疑の中で、財源問題について問われた中川氏は「医療保険財政の再構築をすべきだ」と主張。その上で、特別会計の一般財源化をはじめとした見直しにより、透明性を高めることが必要だとした。さらに、中長期的には消費税の引き上げは避けられないとの認識を示した。
2006年の「骨太の方針」で、プライマリーバランスを11年に黒字化するとしていることについては、「そもそもプライマリーバランス黒字化の目的は長期債務残高の減少のはずだが、プライマリーバランスと長期債務残高は全く関係がない。11年にプライマリーバランスを黒字化することに、日本医師会は賛成ではない」と述べた。
更新:2008/05/22 00:08 キャリアブレイン
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08/01/25配信
高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子
医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。