石破茂防衛相は21日、首相官邸で開かれた政府の「防衛省改革会議」(座長・南直哉東京電力顧問)の第9回会合に、省内でまとめた組織改革案を提出した。現在は別々の内局官僚(背広組)と、陸海空、統合の各幕僚監部自衛官(制服組)を三つの分野に再編し、混合組織とするのが柱だ。石破氏は一連の不祥事を受けて「縦割りの弊害排除」に踏み込む意向だが、混合の度合いや幕僚監部の存廃などで集約が難航。示された組織像は6パターンに分かれ、改革会議のメンバーからも「分かりにくい」などの異論が相次いだ。
防衛省案は、前事務次官・守屋武昌被告の贈収賄事件やイージス艦衝突事故などを踏まえ、内局と各幕の権限の分担が不明確▽業務が重複しており、緊急時に混乱が生じやすい--など、組織上の問題を指摘した。
内局に、防衛政策と国民への説明を行う「政策・発信」、自衛隊の部隊を動かす「運用」、主な装備の調達などを担う「整備」の3部門を設置し、それぞれに各幕を組み込み、重複する部署の削減を打ち出した。
「運用」部門トップは統合幕僚長を想定。ただ現在、統合幕僚監部が担当している「運用」と、陸海空自の専門性が欠かせない「整備」は、内局の外に置く案も併記された。
石破氏は当初、防衛政策を官邸が決定し、防衛省は執行にとどめる「用兵省」構想を提唱したが、官邸側の反対で政策機能は双方に残した。内局幹部が兼務し形骸(けいがい)化している防衛参事官ポストは廃止し、政治任用の大臣補佐官制度に変える。
陸海空の各幕が担当している自衛隊の人事、教育など日常業務は(1)内局にすべて編入(2)内局と各幕が業務を分け合う(3)現状維持--の三つを列挙した。
しかし、この日の改革会議では、有識者から「不祥事と組織改革がどうつながるか分かりにくい」「変えてはいけない部分を変えないよう慎重にやるべきだ」などの異論が続出。同会議は6月中旬に報告書をまとめるが、今回の案がどこまで反映されるかは不透明な情勢だ。【松尾良】
毎日新聞 2008年5月21日 22時54分(最終更新 5月21日 23時18分)