「九州は1つ」の理念の下、官民一体となった九州独自の発展戦略の研究や施策推進などを目的に、九州地方知事会と九州経済連合会、九州商工会議所連合会などの地元経済界が2003年10月に設立。社会資本整備の推進や地方制度改革と行政効率化、九州とアジアの交流などに取り組んでいる。05年10月に設置した道州制検討委員会は、06年10月に答申を出した。昨年5月に第2次道州制検討委員会がスタートし、九州モデルづくりに取り組んでいる。
(2008年5月21日掲載)
九州地方知事会と主要経済団体でつくる「九州地域戦略会議」(議長・鎌田迪貞九州経済連合会会長)による道州制九州モデルの中間取りまとめ案が20日、明らかになった。同会議の第2次道州制検討委員会(委員長・矢田俊文北九州市立大学長)が作成し、暮らしに密着した医療や子育てなど12のテーマで、道州制が導入された場合の制度や利点を提示。道州制後の具体像を地域側から描くのは、九州が初めて。
案は、テーマごとに現状や道州制導入後の将来ビジョンと施策を列記する。「医療制度」は、小児科などの医師不足が深刻化する中、道州に大学医学部の定数設定権限を移し、計画的に医師を養成。将来は道州立大学を新設し、卒業医師のへき地派遣など、充実した医療体制の整備を図る。
「学校教育」は、早い段階から第二外国語として中国語や韓国語を学び、アジアで活躍できる人材を育成。対東アジア外交の一部も道州政府が担い、アジア諸国とローカル版経済連携協定を結んで、通関・検疫手続きを迅速化、航路の充実、知的財産権のルールづくりも推進する。
「食」の分野は、のりやトマトなど九州ブランドの食品を確立させ、東アジアなどへの輸出を促進。各県の森林環境税も「九州環境税」に一本化し、九州全体の自然や環境保全事業を進める。
「交通基盤整備」は、幹線道路整備の優先順位決定権限と財源を道州に移譲し、九州自ら広域的整備を推進。河川事業はダムごとに設定されている取水権を撤廃し、道州が一元管理。高貯水率のダムから優先的に水を供給するなど弾力運用で渇水の影響を軽減する。
行政組織は、都道府県を廃止し、国と道州、市町村が並立。現状は国が企画立案し、都道府県や市町村に執行させる中央集権型だが、道州制では国、道州、市町村のそれぞれが企画立案から執行までを自己完結する。
中間取りまとめ案は23日に鹿児島市である戦略会議に報告。検討委は、道州制実現のための税財政制度などの検討を加え、10月に最終報告書をまとめる予定。