日本の台所事情と与謝野馨氏のわかりやすい説明

2008/05/21 10:08

 

日本人は、鷹揚なのか、それとも不感症なのか、あるいは無知なのか、莫大な借金をかかえながら、だれもほとんど悩んでいない。肩をすぼめて悩んでいるフリをしている人たちは、永田町や霞が関にいないわけではないが、近寄ってよくみれば、政治家も、官僚も、その多くは平気の平左という顔つきである。真剣に頭をかかえて対策を練っているのは、ほんの十数人といったところではあるまいか。

 

いったい、日本の台所事情は、どうなっているのか。はたして国民は、どこまで実態を承知しているのであろうか。先日、前官房長官の与謝野馨さんが、日本記者クラブで講演した際、この点について、じつにわかりやすい話をしてくれたので紹介してみたい。

 

与謝野さんによれば、日本の台所事情は、収入が50兆円で、支出は80兆円だという(正確にいえば、国の税収(一般会計)は2007年度で51兆~52兆円になる見込み。ただ、話をわかりやすくするため、以下も与謝野さんがあげた、おおざっぱな数字でいきたい)。

 

「ん? 収入80兆円、支出50兆円のまちがいじゃございませんか」という疑問の声があるかもしれないが、残念ながら毎年、マイナス予算である。一般家庭で、「収入50万円、支出80万円」といった家計が、何年も続くなど想像もできないけれど、日本はずっと、借金の証文(国債)を売ってお金をつくってきた。この国債の利息は、いずれだれかが払わなければいけない。これから生まれてくる子らもまた、その負担を背負い込むことになるのだ。

 

与謝野さんは、支出80兆円の使い道について、明解に説明してくれた。これをきいて、民主党のいう、ムダをはぶいて財源を捻出するという手法のムリをあらためて認識せざるを得なかった。

 

80兆円を4つにわけて、その使い道を考える。まず最初の20兆円は、借金の利息。「借金とりがくるから、どうしても払わなければならない」。いまは、低金利だから、まだこれだけで済むが、金利があがれば、20兆円など軽く突破してしまうのだ。

 

つぎの20兆円は、地方へ渡すお金。地方は、「いまでも、渡す金がすくないと叱られるわけですから、これはへらすわけにはいかない」。これも油断すれば、すぐ20兆円を超えてしまう。

 

そのつぎの20兆円は、社会保障費。これも、あっというまにふえていく。「これは、20兆円にとどめておくこと自体が、相当にたいへんなお金です」。

 

これらの合計60兆円は、いずれも出ていく先が決まっているお金。「あと、残りの20兆円で、公共事業をやり、教育をやり、大学運営をやり、科学技術をやり、自衛隊、公務員の給料も払うわけです。民主党では、ムダがあるのではないか、という。もちろん、ムダはきちんと排除しなければいけない。それは当たり前のことですね。しかしまあ、15兆円も16兆円も出てくる話ではない」と、与謝野さん。自民党内にある、例の埋蔵金の話も、一笑にふした。

 

〔フォトタイム〕

 

数寄屋橋交差点その3

交差点の一角に建つ数寄屋橋交番は、とんがり屋根のなかなかしゃれた建物です。

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コメント(6)

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2008/05/21 13:46

Commented by truth-of-truth さん

自民党の最大の問題点は、景気拡大策をとろうが、財政健全化策をとろうが、官僚依存であるために官僚に逆らえず、官僚の既得権益は温存され、官僚の無駄遣いはなくならないということです。

民主党は、わずか数兆円でも、無駄遣いをなくしてから、まともな増税論議をすべきだと考えているようです。

今、民主党が増税論議に踏み込まないのは、政権交代する前に増税したのでは官僚の無駄遣いはいつまでたっても放任されると考えているからのようです。

つまりは、民主党政権が樹立されるならば、まず第一に官僚の無駄遣いをなくし、すべての制度を官僚依存から政治主導に切り替える、民主主義国であれば当たり前の真の議院内閣制にした上で、本当の税制改革を行うということのようです。

別の言い方をすれば、同じ自由と民主主義を標榜する国家の政党であっても、自民党は、より国家主義的であるがゆえに、国民個人の生活よりも国益を考えるが、民主党は、より個人主義的であるがゆえに、国家財政よりも国民一人ひとりの生活に目を向けるということですね。

どちらが良いかは、一方的には言えませんが、これこそ有権者の判断、一票の重さですね。

一つだけはっきり言えることは、与謝野さんの発言を賞賛する人は、民主党支持者には絶対になれないということですね。

高齢化した政治家、ジャーナリストが、見事に官僚と同じことを言うのが日本政治の歴史ですね。

 
 

2008/05/21 14:10

Commented by milesta さん

こんにちは。
本当にとてもわかりやすい説明ですね。経済・財政音痴の私でもこれならわかります。
政治家は、このように国家の事情を大掴みに把握する能力も非常に大切なのではないかと改めて思いました。一つは国民への説明のため、もう一つは国の将来の全体像を描くため。木を見て森を見ない政策ばかりでは、いずれどこかに無理がでてくるのですね。
しかし、事情はよくわかりましたが、ますます将来が不安になります。

 
 

2008/05/21 14:30

Commented by inkyo さん

こんにちは。

小泉さんの時代から公共事業費3パーセント削減、国債発行30兆円以下に抑えるなどそれなりに政府として努力をしていますが、与党内部からも小泉改革に対する反動が出てきています。

大阪の橋下知事のように、内部からの改革をしないと有権者はついてこないと思います。

独立行政法人改革・天下りや人口減少に伴い国会議員数も今のままで妥当なのか等々行政、立法府がこれだけ財政再建に努力しているから国民もという訴え方でないと、町村さんみたいに暫定税率を廃止し、環境税にしたら税金がもっと高くなるなど、半ば脅しのような言い方では自民党は有権者から見捨てられるでしょう。

 
 

2008/05/21 17:20

Commented by 大島信三 さん

truth-of-truth さん
国民ひとり一人の生活は、とても大事ですね。

 
 

2008/05/21 17:23

Commented by 大島信三 さん

milesta さん
全体像というのは、やはり国民は知りたいと思います。そういう説明が首相周辺からもっとあっていいですね。

 
 

2008/05/21 17:24

Commented by 大島信三 さん

inkyo さん
大阪の橋下知事、がんばってますね。

 
 
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