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E.L.H. Electric Lover Hinagiku このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-05-21 美希「千早さんのブラは資源の無駄遣いなの!」

学校裏サイトのいじめ解決が実はマッチョの成功体験だったという話

ずっと読みながら言及しなかった話題(そんなものはいくらでもあるけど)。今日完結編が掲載されたので。

学校裏サイトで娘が実名で攻撃され、父としてメールを送ってみた : ITmedia オルタナティブ・ブログ

娘を攻撃する学校裏サイトに親としてメッセージを書いた結末 : ITmedia オルタナティブ・ブログ

娘を攻撃した学校裏サイトでの「いじめ」が解決した〜子供のネット規制は禁酒法時代の二の舞か? : ITmedia オルタナティブ・ブログ

はてブでは一貫して、吉田氏のご令嬢の大人びた発言が話題になっていて、完結編でもそれは際立っていた。

「お父さんも会社の帰りの飲み会なんかで偉い人とか会社の悪口を言ってるんでしょ?」(いえいえ言ってません)

「それと同じよ。 お父さんの会社の若い人たちや女性だけで飲んでる時には、お父さんも言われているだからね。

 子供だけで会話しているところを、大人が、大人の価値観で見て、”くだらない”、なんて言えないよ。 子供が大人の飲み会の様子を見るのと、大人が学校裏サイトのコメント見たときの感覚は同じ。」

学校裏サイトなんて、どこにでも出来る。 そして、大人の振りしてアクセスする。 1920年からの禁酒法時代のこと知っている? 今、世界史でやってるんだけど。 カポネなどのギャングが暗躍した時代。 あれと同じ。 若者たちにエッチビデオなんかを売りたい広告屋が、学生に裏サイトを無料で提供してるんだから、そっちを取り締まらなくちゃ。

それとも、お父さん禁酒したい?」 

思わずid:guri_2氏バリに挿絵をつけたくなったが、さすがに自重することにした。ぼくだって自重することくらいできる。

で、最後まで読んでようやくわかったことがある。

「これだけ書かれるってことは、実際、そう思われるようなことやってるんじゃないの? 3人が同じこと言ってるジャン。 だいたい目立ちすぎるんだよ。いろんな委員長とかリーダーシップとってるから叩かれやすいんだよ」

「実際にやっているなんてありえない。委員長だって、やることが悪いとは思わないし、お父さんの血だから、目立つのは、しようがない

さすが受験生、、、。 最近はアメリカの英語の教科書で世界史を勉強するのだそうだ。 まいった。

 この学校裏サイトでの事件と「ガンと戦うことを決意をした先生からの手紙」のような出来事、そして大学受験という時期を乗り越えて4月から女子大生になった。

 国連に入ってボランティアを支援するという小学生からの夢を胸に、勉学にサークルにと学園生活を楽しんでいる。(と書くと優等生に見えるが、家では、驚くほどだらしない生活をしている)

めちゃめちゃ勝ち組ですやん。お嬢さん。

そもそも吉田氏、日本アイ・ビー・エムロータス事業推進部長という肩書きで、相当なエリートである。娘の学校行事に積極的に参加していたというのは、それだけ余裕のある証拠だ。経済的にというか文化的にというか。

いきなり余談だが、実は一昨年亡くなったぼくの父もアイ・ビー・エム社員だった。高卒で入社し、以後30年以上一貫して技術畑を歩んでいたブルーカラーIT土方っていうのか?)ではあったが、バブルのころには月40万くらい貰っていた気がする。まあそれを平然と散財してカード会社から督促の来る大馬鹿野郎だったけどな(お父さん、人生を通じて10年ほどしか付き合いがありませんでしたが、そんなところばっかりあなたに似てしまいました)。もしかしたら吉田氏とも面識があるかもしれないけれど、それはともかく。

一連の記事からプロファイリングするに、ご令嬢はかなりデキるひとであることが読み取れる。アメリカの英語の教科書で世界史を勉強する学校というのはよほどの高偏差値だろうし、国連に入る夢を抱きつつそんなところでリーダーシップを発揮していたというのだから(『国連』『ボランティア』ってなんか学歴アッパークラスのキーワードだよなあ)、スクールカースト的にはもう圧倒的に強者である。

そういうひとに対する「いじめ」というのは、大多数の平凡かそれ以下の連中の妬みから生まれるものだ。他意のないことをお断りしたうえで申し上げると、このいじめ解決話、下々の連中がうるさいから圧倒的火力のマッチョパンチで叩き潰したという光景なのである。や、個人的には実に爽快だが。


ただし。おそらく世に溢れているいじめの被害者の大半は、吉田氏のご令嬢とは対照的な負け組だろう。スクールカースト的にも文化的にも経済的にも。底辺とまではいかないまでも冴えない私立高校に通ったり通わなかったりする、冴えない下流家庭に生まれた、なんだか背中の煤けてるやつら。そういう連中が学校裏サイトなんかで漠然とひどい目に遭っているというのが、現代のいじめだとぼくは認識していたのだけど(ぼくにせよ、実像を正しく捉えていない可能性はかなりある。高校を卒業して10年も経つし、当時は学校裏サイトどころかインターネット自体そんなに普及していなかったのだから)。

吉田氏のご令嬢、自分への陰口にうんざりしつつも、一貫して屈しようとはしていないことが読み取れる。そして、弱者が一方的に抑圧され、往々にしてそれを内面化してしまうことこそがいじめの真の問題である。彼女ほどの賢さ、芯の強さを持ち合わせていない弱っちい少年少女はどうやってサヴァイヴすればいいのか? まさにサヴァイヴいじめを解決するというより、いじめを生き延びることこそが多くの被害者の喫緊の課題である。親だって、吉田氏のようにSBMRSSリーダGoogleアラートまで使いこなして学校裏サイトを監視するほどにはインターネットリテラシー高くないだろうし*1

総じて、負け組が生き延びた話というよりはまるっきり勝ち組の成功体験の一環であり、多くのいじめに苦しむ人々の希望にはおよそなり得ない、隔絶した世界の話なのではないか――という印象を強く持った。そう思うと、以下の結びの言葉もニュアンスが異なってくる。

 イジメは辛いかもしれないが、乗り越えれば、必ず新しい生き甲斐や、楽しいことが沢山待っている。

 いじめは、一生続くわけではない。だから、一人で考えずに、親、先生、そして、SNSなどの力を借りて、「いじめ」を忘れるぐらい、様々なアクションを皆と一緒に考え、行動に移して乗り切ってほしいものだ。


追記:

ただし、上記に続くこの部分は弱者の希望たりうる。

 今回の私の行ってきたことが必ずしも正解ではないだろうが、皆で一生懸命考えて、これらの困難と闘うことが重要だと思っている。

 今回、この体験を公開したことで、「学校裏サイト」での「いじめ」にあっている子供達に少しでも役立てれば幸いだ。

今回、解決のために用いた方法そのものにはまるでお金がかかっていない。メールを出す・はてブを使う・RSSリーダを使う・Googleアラートを使う。すべて無償のサービスで、かかるのはインフラ費としてのプロバイダ料金くらいのものだ。これはネット環境と頭さえあれば、勝ち組だろうが負け組だろうが使い放題である。

そして、こういう知識を共有することこそが、インターネットの普及により可能となったいじめへの強力な対抗手段なのだろう。インターネット学校裏サイトを生み出したが、同時にwebサービスも生んだ。常に割を食わされ続けるようなシステムが、これほど発展するわけがないのである。

*1:これには本当に驚いた。目から鱗と一緒に眼球が落ちた。最初、IBMに勤めるようなひとでも『2チャンネル』と書いたりするんだな、こういうのはスルーってのが鉄則だろうにという揶揄するような声がブックマークで見られたが、こうやってwebサービスを使いこなすことこそが真のネットリテラシーというものだろう。