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歌舞伎:五月大歌舞伎(新橋演舞場) 伊右衛門の不気味な変化に見応え

 吉右衛門を中心とした公演。

 夜が「東海道四谷怪談」の通しである。吉右衛門初役の伊右衛門は「浪宅」で岩への冷たさを示し、「隠亡堀」で殺人にためらいがなくなり、「蛇山庵室」では幽霊に追い詰められての心身の衰弱を見せる。よりどころがなく、どこまでも流される不気味なまでの変化に見応えがある。

 福助の岩も初役。伊藤家からの品に、繰り返し礼を言う純粋で愛らしい女が、毒を飲まされ、夫の裏切りを知り、生きながら悪鬼のようになる。心の揺れが明らかで、哀れさも出た。歌六の宅悦がうまく場面を展開していく。段四郎の直助、芝雀のお袖、染五郎の与茂七ら周囲もそろう。

 昼の最初が「毛谷村」。染五郎の六助が、心栄えのよい武芸者を気持ちよく見せた。亀治郎のお園は、六助が婚約者と知って柔らかみを出すくだりなどに情感が出た。吉之丞のお幸に品位がある。錦之助の微塵弾正(みじんだんじょう)。

 続いて舞踊3曲。福助のあでやかな「藤娘」、染五郎の悪玉、亀治郎の善玉による気迫ある「三社祭」、歌昇と錦之助の鳶頭(とびがしら)が威勢のいい「勢獅子(きおいじし)」。

 最後が長谷川伸作「一本刀土俵入」。吉右衛門の茂兵衛は冒頭で、空腹による情けなさを印象付け、旅人になった後半のさっそうとした姿との差異を際立たせる。芝雀のお蔦(つた)は、わが子に対する情味がよく出た。歌六の儀十、歌昇の弥八、錦之助の辰三郎、染五郎の根吉が脇を固める。26日まで。【小玉祥子】

毎日新聞 2008年5月21日 東京夕刊

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