千石正一 十二支動物を食べる 世界の生態文化誌

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2007年10月31日 千石正一(動物学者/財団法人自然環境研究センター 研究主幹)

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~「亥」を食べる~
亥年はブタ年が正しい?

 ところが、ブタと原種からつきあっている中国では、品種改良の進んでいない、本来のブタである「黒いブタ」が基本である。中国では、ブタは黒いものというイメージさえある。『西遊記』の猪八戒はブタの化け物だが、当然、「黒ブタ」である。猪八戒は黒衣を着ていることになっており、彼が人間の姿をしているときに、黒衣によって既に正体が暗示されている。

ブタとイノシシの違い

 イメージからすると、野生的なイノシシとのうのうと肥えるブタとはかなり違うものだが、動物学的にはどう違い、どう同じなのか。

イボイノシシ
世界で最も醜い動物といわれる「イボイノシシ」

 イノシシはイノシシ科の偶蹄獣で、ユーラシアとアフリカ、つまり動物地理区でいう「旧世界」に原産する。「新世界」にペッカリーという動物がおり、これはよくイノシシと混同されるが、そもそも科が違う。イノシシとペッカリーを同じと思うのは、ウシとシカを同じと思う程度の誤りである。

 イノシシ科にはバビルサ属とか、最も醜い獣とされる(本人?は気にしないだろうが、大きなお世話である)イボイノシシ属などと並んでイノシシ属が含まれる。イノシシ属にはヒゲイノシシなどの種と共に、狭い意味でのイノシシが入る。

 イノシシはヨーロッパ、アジアの中部と南部、北アフリカに分布し、地域によって少しずつ違い、ヨーロッパイノシシ、インドイノシシ、アジアイノシシなどに細分される。ニホンイノシシやリュウキュウイノシシなども、この類の名称だ。これらは、同じ種内の地域変異、もし出会えば交配してしまう関係である“亜種”とみなされ、全てが同じ種のイノシシとされるが、学説によっては、近縁の独立種の集合、つまり“上種”とみなされることもある。

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執筆者プロフィル

写真:千石正一

千石正一
(動物学者/財団法人自然環境研究センター 研究主幹)

1949年生まれ。動物の世界を研究・紹介することに尽力し、自然環境保全の大切さを訴える。TBS系の人気番組『どうぶつ奇想天外!』の千石先生としておなじみ。同番組の総合監修を務める。また、図鑑や学術論文などの幅広い執筆活動のかたわら、講演会やイベントの講師なども多数務めている。著書多数。

この連載について

動物学者・千石正一が、食を通じた人類と動物の歴史について、自身の世界各地での実体験を交えながら生態学的・動物学的観点で分析。干支に絡めた12の動物を紹介する。