風邪の症状は治まったのに、いつまでもしつこく続くせき−−。実は「百日ぜき」や「せきぜんそく」など思わぬ病気のサインの場合がある。風邪と片づけず、早めに治療を受けることが大切だ。
◇せきぜんそくに注意−−アレルギー性…ステロイド薬吸入で治療
「会議中、せきが止まらず会話ができなくなったり、ひどい時は胃液が込み上げるほど激しくせき込みました」。東京都杉並区の会社員、我那覇(がなは)芳郎さん(32)は、せきぜんそくに苦しんだ日々をこう振り返る。
4月、起床時などにせきが出るようになった。風邪と思い市販の薬を飲んだが治らず、5月初旬、クリニックで「せきぜんそくの可能性が高い」と診断された。
せきぜんそくはアレルギー性の場合が多い。せきを起こす原因(抗原)を検査した結果、我那覇さんはスギとヒノキ、ハウスダスト、ダニに陽性反応が出た。ステロイド薬吸入などの治療を続ける一方、布団に掃除機をかけるなど生活環境にも気を配ったところ、約1週間で症状がほぼ治まった。
患者が20〜40代の働き盛りに多いのが特徴で、日常生活に支障が出る場合もある。江戸川区の会社員、園部正也さん(42)は「爆発的なせきが10分近く続き仕事が中断したり、電車内で止まらなくなり降車駅の手前で下車したこともあった」と話す。港区の会社員、若林徹也さん(32)は「営業職のため人前でせき込むのがつらかった。激しいせきで吐いたこともあった」と打ち明ける。
中田クリニック(千代田区)の中田紘一郎院長(呼吸器内科)は「風邪の症状が治ったのに、せきが3週間以上続く時は、せきぜんそくの可能性がある」と話す。
■放置は重症化も
症状は春や秋など季節の変わり目に出ることが多く、エアコンの冷・暖気や会話、たばこの煙、雨天などがせきの引き金になるという。気管支ぜんそくと異なり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音や呼吸困難はなく、空ぜきが主な症状。感染性はない。
治療は気道の炎症を抑えるステロイド薬の吸入と、せきを抑える気管支拡張薬などが用いられる。ステロイド薬は吸入の場合、血液にほとんど吸収されないため、副作用は心配ない。
中田院長は「最初は軽いせきでも、放置するとより症状が重い気管支ぜんそくになる可能性もある。せきの出始めからステロイド薬を吸入すれば、症状が治まるので早めの受診を」と勧める。
せきぜんそくの原因ははっきり分かっていないが、ぜんそく呼吸器ケアが専門の田中一正・昭和大教授は「呼吸で吸い込んだ汚染物質を体外に出すせきに対して、ぜんそくはせきでも出せないものの侵入を防ぐため気管支が狭まる状態。せきぜんそくはこうしたアレルギー反応の一つで、環境悪化が患者増加の一因と考えられる」と話す。
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