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【主張】年金税方式試算 医療と介護含めた議論を

2008.5.21 03:04
このニュースのトピックス主張

 政府が、基礎年金の「全額税方式」についての財政シミュレーション結果を公表した。

 税方式に移行すれば、保険料に代わる財源を税金で補わなければならない。これを、すべて消費税で賄ったとすると税率はどうなるのかという4つの試算である。政府が税方式について、本格的な財政試算を行ったのは初めてだ。

 今回のシミュレーションを年金制度改革をめぐる国民的合意に向けた議論につなげていきたい。

 税方式にはメリットがある。保険料未納問題は改善されよう。社会保険庁のようなずさんな運営もなくなり、徴収コストを大幅に削減できる。

 ただ、試算結果を見る限り、税方式導入へのハードルは低くない。まずは、消費税率を大幅に引き上げなければならない。現行制度での保険料未納期間に応じて支給額を減額する方式でも3・5%、現行の支給水準に上乗せしようと思えば8・5〜12%の引き上げが必要だ。現行税率5%や、制度移行前に国庫負担を2分の1に引き上げるための1%分を含めれば、平成21年度の消費税率は9・5〜18%となる。

 年金制度改革だけのために、これほど税率を引き上げては、ほかの社会保障制度に回す財源が確保できなくなる。

 厚生労働省の推計では、社会保障給付費は平成18年度の約90兆円が37年度には141兆円となる。特に医療費と介護費が大きく伸び、優先して財源を振り分ける必要がある。これも消費税に頼るとなると、消費税率はさらに跳ね上がる。欧州を超すような高税率を、日本の経済や国民が耐えられるのだろうか。

 税方式は、保険料を支払い終えた年金受給者が消費税という形で二重負担となるなどの問題もある。試算では、サラリーマン世帯は収入に関係なく実質負担増になる。一方で、保険料の労使折半がなくなる企業は大幅な負担減が見込まれる。これらの解決なくしては、とても国民は納得しまい。

 基礎年金国庫負担2分の1引き上げに必要な2・3兆円の財源すらめどが立っていない。この差し迫った課題を早急に決着させねばならない。

 政府の社会保障国民会議は今後、改革の方向性をまとめるが、医療や介護も含めた社会保障全体の中で議論を詰めるべきだ。

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