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社説2 馬総統は中国に民主化促せ(5/21)

 台湾の新総統に国民党の馬英九氏(57)が就任した。馬総統は1999年に中断した中国との対話再開の「歴史的機運」をつかみたいとの強い意欲を示し、対米関係強化も打ち出した。中台関係の安定につながる呼び掛けとして評価したい。

 1週間ほど前、中国大陸を四川大地震が襲った。陳水扁前政権は政権末期だったが、台湾当局は直ちに8億台湾ドル(約27億円)の緊急援助を決めた。日本政府の5億円などに比べても、けた違いだった。

 大地震で中国政府は日本に続き、台湾からも直行チャーター便で援助隊を受け入れた。異例の中台連携といえる。馬総統は就任演説で「台湾人民は党派を問わず、哀悼の意を表している」などと見舞いの言葉も述べ、援助の継続を約束した。

 馬総統は演説で対中関係の大枠として「統一せず、独立せず、武力を用いず」という「3つのノー」を提示した。台湾海峡の現状を維持し、独立を宣言しないことを明確にすることで、中国側に配慮した形だ。

 中台対話を巡っては99年7月に李登輝総統(当時)が提起した「二国論」に中国側が反発。翌年発足した陳水扁政権は「一つの中国」の受け入れを拒み、対話は途絶えた。

 再開に当たっては、台湾側が「お互いに1つの中国を認めるが、具体的な内容はそれぞれが表現する」ことで合意したとしている「92年合意」の扱いが焦点になる。中台双方がテーブルに着くまで乗り越えなければならない障害も少なくない。

 大地震という不幸が介在したとはいえ、敵対関係が続いてきた中台間で信頼醸成も徐々に進みつつあるのではないか。99年9月の台湾中部大地震の際にも江沢民国家主席(当時)が援助の提供を申し出た。

 国民党の呉伯雄主席が26日から訪中するなど共産党との交流は続いている。8月の北京五輪を控え、中国の胡錦濤政権は今こそ、台湾との政治対話を復活させるべきだ。

 馬総統は就任演説で「中国大陸が自由、民主、富の均等化を進める道を歩むことを切に願う」と訴えた。台湾は96年から総統の直接選挙が始まり、民主化が定着しつつある。人権重視の立場から、中国との対話では民主化もぜひ促してほしい。

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