台湾  2008年5月21日（水曜日）
馬総統が就任、経済は規制緩和・開放へ［政治］

先の総統選挙で当選した馬英九氏が20日午前、第12代総統に就任した。馬総統は就任演説で、経済・貿易は規制緩和、開放を進め、国際競争力を高めていく方針を示した。新政権は棚上げされてきたガソリンや公共料金の見直し、公約では7月となっている中国との直航便運航に向けた交渉などで早速手腕が試される。

馬氏は20日朝、黒のスーツに身を包み、青のドレスをまとった周美青夫人とともに総統府へ到着。午前9時から総統府大礼堂で頼英照司法院長の指揮の下で宣誓、副総統となる蕭万長氏とともに王金平立法院長から総統章を受け取り、総統に就任した。

就任式典は馬総統が総統府で陳水扁前総統、呂秀蓮前副総統を見送り終了した。その後、総統就任後初の公式政務として、行政院長に劉兆玄氏を任命。続いて劉行政院長が閣僚名簿を提出、馬総統がこれを任命し、全閣僚が一同に宣誓して劉内閣が発足した。

■「規制緩和、開放進める」

馬総統は台北小巨蛋（台北アリーナ）に場を移し、午前11時から就任演説を行った。

演説は「人民奮起、台湾新生」と題され、約20分行われた。馬総統は冒頭で「今日は政党や個人の勝利を祝賀するものではなく、台湾の民主が歴史的なマイルストーンを迎えたことをともに見定める時だ」と挨拶。住民が経済の安心感を失い、台湾が国際的支持を損なっている今、政治の清廉、経済の開放、エスニックグループの調和、両岸和平が求められていると指摘した。

経済・貿易については、規制緩和、開放をもってして初めて国際競争力を向上できると説明。民間の活力を解放し、企業のアジアや世界への展開を促すと語った。

対中関係では、中台がそれぞれ「一つの中国」について解釈する1992年の共通認識を基礎に、早期に対話を再開したいと発言。中台双方がメリットを享受することを起点に、経済・貿易の往来、文化交流の正常化を目指すとした。

胡錦濤・中国国家主席が先月下旬に国民党の連戦・栄誉主席と会談した際、「お互いが信じ、双方どちらもメリットを得られる関係構築を」と呼びかけたことについても触れ、「その観点はわれわれの理念と一致する」と中国の姿勢に歩み寄る態度を見せた。ただ従来からの「統一しない、独立しない、武力行使を認めない」との方針も強調している。

■晩さん会は高雄

馬総統や日本を含めた各国・地域からの外賓は20日午後から高速鉄道（高鉄）で高雄へ移動した。一行は左営（高雄）駅から開通間もない高雄MRT（新交通システム）で中央公園駅まで行き、そこから漢来飯店へ移り、晩さん会に参加した。

■物価抑制、中台直航

馬政権、劉内閣は選挙での公約や前政権が残した課題に早速直面することになる。

中台直航チャーター便については7月4日の運航開始を目指している。劉行政院長は20日の国民党主催の昼食会で同日の運航開始はおおむね問題ないとの見解を示した。ただ中国側との交渉によりスケジュールが左右されるため、一部では難しいとの見方も出ている。

前政権が棚上げしてきた電力価格や公営企業の台湾中油によるガソリン価格の引き上げも難題だ。劉内閣はあす22日の最初の行政院会でこれらの問題を協議する。ガソリンは来月1日から、電気は7月1日から値上げする見通しだ。

原油価格の上昇などを受け、電力やガソリンの値上げは避けて通ることはできない。劉行政院長も値上げ幅は原材料購入コスト分程度に抑え、かつ低所得世帯などには補助を行うと説明している。しかし急激な引き上げや、値上げが物価全体へ波及するようなことになれば、いきなり批判にさらされることにもなりかねず、新政権は難しい選択を迫られる。