頼んでいないカニを高齢者に送りつけたり、電話でしつこくカニの購入を迫ったりする「被害」が急増している。輸入量の減少で価格が高騰するカニだが、なぜ最近になってカニを売りつける業者が暗躍しているのか? 関係者は一様に「理由は分からない」と話しており、謎は深まるばかりだ。
クーリングオフ制度の適用が難しい
国民生活センターによると、カニの売買をめぐるトラブルは2008年に入ってから急増。07年の1年間で172件だったトラブルは、08年1月〜3月のわずか3か月で168件に上った。同センター情報部は、カニの売買をめぐるトラブル相談は「全国的に寄せられている」としており、また年代では50代以上の人が被害に遭うケースが多いというのだ。
熊本県消費生活センターによれば、同県でも07年に5件だったトラブル相談が08年になって23件になった。頼んでいないのに、突然カニが送られてくるケースや、電話での勧誘にあいまいな返答をするとカニが送られ、本人が「購入に同意していない」と主張する例が多いという。
ある80歳代の女性には、身に覚えのないズワイガニのむき身3パックが届き、なぜかそのうち1パックを食べてしまった。後に1万円の請求が届き、業者との話し合いの末、6000円を支払ったという。また、「カニ好きですか?」などと電話があり、あいまいな返事をしているとカニが着払いで届けられるというトラブルや、「身がいっぱい詰まっている。サービスで帆立もつけて、3万円のところを1万円にまで安くする」と勧誘し、送られてきたのは身がやせ細ったカニ。しかもついているはずの帆立がサンマやイクラだった、などといったトラブルがあった。
同センターはJ-CASTニュースに対し、「(トラブルは)60〜80代の高齢の方が多い。なかには自分が頼んだのかどうか覚えていなかったり、あいまいな返事をしてトラブルに巻き込まれる場合がある。また業者に身に覚えがない旨を連絡しても、暴言を吐かれるケースもある」と話す。また、カニなどの生鮮食品は、特定商取引法で指定商品になっていないため、8日以内ならば無条件で返品可能とするクーリングオフ制度の適用が難しく、購入の意志を示してしまった場合は契約が成立してしまう可能性があるという。そのため、同センターでは、購入の意志を示してない場合は代金を支払ったりしないよう呼びかけている。
名簿にもとづいて電話をかけている?
しかし、どうして「カニ商法」がここへ来て急増しているのか? ある水産庁関係者は「トラブルについては知っているが、どうして増えたのかはわからない」と話しており、国民生活センターでも「理由は分からない」としている。
「何らかの名簿にもとづいて電話をかけていると思われる。また、(トラブルにあった人は)カニを通信販売や北海道などで過去に頼んだことがある人が多いという節はある。とても無作為で電話をかけているとは思えない」
熊本県消費生活センターでは、「顧客名簿」が何らかのかたちで出回っている可能性を示唆する。
国内に流通するタラバガニの9割近くがロシアから輸入されたものといわれる。ロシア政府が極東海域での密漁の摘発強化や、タラバガニの一部禁漁措置を取ったことの余波で、08年に入ってからカニの輸入量が減少している。また、08年5月17日の日経新聞(北海道版)では、「カニ不足」の背景にロシア産のカニが日本から規制の緩い韓国に流れる傾向があると報じている。日本では、「カニ不足」の状態に陥っているのに、どうして「カニ商法」なるものが急増したのか、謎は深まるばかりだ。